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バージンと引き換えに得たもの























(6)
 


「ふふっ、佳菜はもう準備万端ヌレヌレってことか。
それじゃあ、遠慮なく処女をいただくとするかなぁ」

男がほとんど姿勢を変えずに宣言する。
汗にまみれたおっぱいに分厚い手のひらを感じながら、わたしはコクコクと頷いた。

さっきから歯が噛み合わなくてカチカチ鳴っている。
怖い。佳菜、とっても怖いよ。
でも決めたんだから。
佳菜のバージンと引き換えに、ノブくんの心を取り戻すって決心したんだから。

わたしは両腕を突き出して、ノブくんの背中を撫でた。
男も柔らかい仕草で乳房をマッサージしてくれた。

それなのに、ゾクリとしたモノが心臓を締め付ける。
佳菜の唇が小さく円を描くように開いた瞬間、ノブくんのお尻がぐっと落ちていく。
割れ目を撫でていた肉の棒が、先端からズブズブと沈んでいく。

チュブッ、チュプゥゥゥッッ!

「あっ! きゃぁぁッッ、んんっ、熱くて太いのがぁっ……痛ッ、い、痛いィィッ!」

「佳菜の膣(なか)は、気持ちいいぞぉ。ぐしょ濡れの肉に締め付けられてぇ、これが処女のおま○こってやつかぁ」

狭い穴がこじ開けられちゃう。
指を入れるのだって怖くて、生理のときもタンポンじゃなくてナプキンだったのに。

痛いよぉ。とっても痛いよぉ。
皮膚を剥がされるみたいでズキズキして。
もっと優しく挿れてほしいのに、ノブくんだったら……きっと、そうしてくれたのに……

ズズッ……ズズズズゥゥッッ!

「あ、ああ……入っちゃうぅっ。佳菜の膣に、痛いッ……キャ、うっくぅっ……ぜんぶ全部ぅっ」

男が深く息を吐きながらお腹を密着させる。
太ももを下腹部をピタリとひっつける。
そうして、プチップチッって何かが破れる音がした。裂ける音もした。
同時に涙腺が決壊したように涙が溢れた。

バイバイ、佳菜のバージン。
こんな形で奪われちゃってごめんね。

密着して、焼けるような痛みしか感じない下半身に、わたしは話しかけていた。
はあーはあーって、いやらしく息を放つ男から顔を背けて、流れ落ちる涙を座席シートに吸わせている。

「どうだ、佳菜ぁ。大好きな信雄のち○ぽで貫かれて気分は……?」

「……くぅっ」

「おっ、嬉しすぎて声も出ないかぁ。ふふっ、だったら悦びの声を上げさせてやろうかなぁ。こんなふうに」

ズズゥッ……ジュブゥッ……ズズズズゥゥッッ!

「うっぐぅっっ、ま、待ってぇっ、まだ……んんくぅぅぅっ……痛いッ!」

青白いシルエットを纏いながら、男が腰を動かした。
無感情なノブくんのお尻が上下に往復する。

「んあっ、あぁぁっ、もっとゆっくりぃっ……中が擦れてぇっ……くぅっ、いたいのぉっ」

「ふぅっ、はあっ、バカだな佳菜は。
こうしてチ○ポを抜き刺ししてやれば、処女のおま○こだって直ぐに気持ちよくなってくるさ」

そう言うと、座席が鳴った。車全体が揺れた。
大きくお尻を持ち上げては、力任せに硬いモノを刺し込んでくる。

繊細な女の子の気持ちなんて、この男はわかってくれない。
それよりも、バージンを失った哀しみの顔がきっと快感なんだ。この男にとって……

ズ二ュッ、ズニュ、ズニュ……ズズズ……

「はぁん……ひぃっ、お、奥に当たってぇっ……はうぅぅぅっ」

ノブくんのおち○○んが膣に入るたびに、身体をビクビク震わせる。
それを見た男が、涎を垂らしながら笑った。
窓の外では、人の顔を浮かばせた炎が追随するようにユラユラと笑った。

何回打ち込んだら終わるの?
何回鳴いたら解放してくれるの?

じゅぶ、じゅちゅ、じゅぶ、じゅちゅぅ……

「どうだぁ佳菜。気持ちよくなってきただろう? 信雄のチ○ポに感じてきただろう?」

「はぁっ、だめ……うっく、そんな……はぁぁぁっ」

挿入するごとに硬いモノが違う壁を擦りあげていく。
火傷しそうな熱い壁を円を描くように順番に刺激される。

「あうぅっ、あぁぁ……ひうぅっ!」

わたしは言葉にならない声を上げていた。
哀しい痛みが快楽に変化していくのが辛くて悔しいよ。
佳菜って淫乱体質なのかな?
ノブくんの身体に抱かれて、ノブくんのおち○○んに貫かれても、やっぱり心はあの男なのに、それなのに……

じゅぶぅ、じゅちゅぅ、じゅぶぅ、じゅちゅぅ……

「んふぅ、ふううんんん。どうしてなのぉ? 熱いよぉっ。切ないよぉっ……んぐぅっ」

「そうだぁ佳菜。その顔だぁ。さあ、思いっきり大きな声で『はるひこさん』って……はあ、はぁぁ、『はるひこさん、愛してる』って」

男が腰をひねりながら囁いてくる。
佳菜の心をエッチにマヒさせて、佳菜の割れ目からエッチなお汁を太ももから座席にまで垂らさせて、恋人の言葉を急かしてくる。

窓の外ではたくさんのこの世でない男たちが、ガラスに顔をひっつけて覗き込んでいる。
頭だけの身体が隣の顔をへこませながら、佳菜の心が淫ら色に染まるのを待ち構えている。

でもホントに気持ちいいの。
熱くて硬いのに奥の扉までノックされて、頭の芯までズキンズキンするの。疼いちゃうの。

「ほらぁ、早くぅ。でないと……!」

「いぃぃっ、ひぃぃっ! 乳首摘まないでぇっ! ひぃあぁぁっ、クリトリスをグニグニしないでぇっ!
言います。言いますからぁっ」

ごめん、ノブくん。佳菜はもう……

顔色まで青白くなった男。
その人の望む言葉を口にしようとした……その時?!



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希望へ……水面に咲く花火























(7)
 


(だめだッ、佳菜! 言っちゃダメだよっ)

「んんっ、あぁぁっ……の、ノブくん……?!」

熔けそうな心に愛する人の声が届いた。
目の前の人ではなかった。窓の外、死人の群れからでもない。

どこから? ノブくん、どこにいるの?

わたしは乳首とクリトリスを刺激されて、子宮まで揺らされながらも目だけを左右に走らせた。

(佳菜に辛い思いをさせてごめん。でも川上先輩、いや、川上の言葉に従ったりしたらいけないよ。
君が彼の愛に従ったその時、僕だけじゃない。佳菜、君までもがその肉体を失うことになるんだ。
あいつはそれを知ってて……)

耳を澄ませても聞こえない。
細くて途切れそうな声で、まるで月の光に掻き消されているお星様みたいで。

(ちょっと待ってよ。ノブくんは今どこにいるの?
身体を乗っ取られて、どこから話しかけているの?
佳菜、会いたい。会って本当のあなたの顔を見たいの。あなたの本当の肌に触れたいの。
そうでないとわたし……)

(佳菜、負けちゃだめだ。気をしっかり持つんだ。
肉体を奪われても僕は君の傍にいる。佳菜が僕を助けようとして身体を差し出したときも、ずっと隣に寄り添って泣いていたんだ。
悔しくて川上が憎くて、不甲斐無い自分も憎くて、でも僕にはどうすることもできなくて……)

(ううん、ノブくんは……あの男に騙されていただけ。だから自分を責めないで)

「おい、佳菜ぁ。どうしたんだい? 早く言いなよ『はるひこさん、愛してる』って。
それともまだ刺激して欲しいわけぇ? だったら気が狂うくらい責めてあげてもいいんだよぉ」

グニュグニュ、グチュウゥッッ……グチュグチュゥゥッ……

「はあっ……ふあぁぁっ、ひっくぅ……わぁ、わたしは負けないぃ、負けないんだからぁぁっ」

右指が佳菜の乳房を鷲掴みにする。
指先が乳首を捻りつぶして真ん中に爪先を押し立てくる。
左指が佳菜のクリトリスを引っ張った。
皮を引き剥かれてビンビン弾かれて、こっちも抓られた。思いっきり。

同時に、腰をバンバン打ち付けてきた。
骨盤が軋むくらいの勢いでぶつけては、子宮の中まで揺らせた。
デリケートな膣の壁が削り取られていく。

「ふふふっ、驚いたねぇ。ここまで来てまだ抵抗するとは。
でも俺は好きだよぉ。そんな勝気な女の子がねぇ」

「ンウゥゥッ……アグ、クゥゥゥゥッ! ならないッ、なら……くはッ……ないんだからぁっ」

全身を感電死するくらいの刺激が駆け廻ってる。
無抵抗な両腕をバタバタさせて、背骨が折れるくらい背中を反らせて……
舌を突き出して酸欠のお魚さんみたいにパクパクさせても、わたしは負けない。
佳菜は絶対に屈したりしないんだから。

「不愉快だねぇ。その表情」

初めて目にする憎悪に満ちた男の顔。余裕を失ったその表情。
わたしの身体を貫きながら、両眼を血走らせて眉毛を吊り上げて、ノブくんの仮面が外れ掛っている。

「んんっ、あぅぅっ……はあっ、はあっ、か、可哀そうな人…ね。あなたって……ひぎぃぃぃぃっっ!」

窓の外では死人たちがざわついている。
互いの顔を潰し合いながら、周辺から青白い炎が燃え尽きていく。

絶望と希望……
相反する心のせめぎ合いが、わたしから力を奪い、男の精神力さえ中和していく。

「あっああっ?! な、なんだぁ? どうなってぇっ?」

そして、腰の動きが止まった。
膣の中で破裂寸前の肉の棒を残して、わたしを感じさせていた10本の指が停止する。

(今だ。佳菜! 逃げてっ、ドアを開いて外へ!)

ノブくんが叫んだ。
わたしも「エイッ」って叫ぶと、残る力を振り絞って男をはねのける。
ドアを開いた。裸のままアスファルトの上に身体を投げ出した。

「うっうぅぅっ。か、佳菜ぁっ……あっあぁぁぁ」

車内から情けない声がして、ダークグレイのシートに白い放物線が描かれていく。
ヌメヌメと光った肉の先端から、いつまでも虚しい射精が続いている。

(走るんだ、佳菜!)

(ノブくんは、ノブくんはどうなるの?)

わたしは振り向いた。わたしと同じ全裸のまま車外へと身を乗り出す男。
その身体に視線を合わせて……

(大丈夫だよ、佳菜。僕は死なない。
だから、信じて。僕を信じて目の前のダムに飛び込むんだ。早く!)

「か、佳菜ぁ……待ってぇ……俺とぉ、俺にその身体を……」

月が山の稜線に姿を消し、青白い光が消えた。
掻き消されていた星々の輝きが力を取り戻し、比例するように男の動きが鈍くなっていく。

わたしは僅かに残った人魂を払いのけながら、水面へと走った。
怖くなんかない。佳菜はノブくんと一緒なんだから。

「ノブくん、佳菜はあなたのことを愛してる! だから一緒に……」

ドボンッ!

宝石箱のように煌く水の中へと落ちていった。
ノブくんを信じて。
もう一度ノブくんと一緒になれることを夢見て……



バーンッ! ヒュルヒュルヒュル……バーン、パァーン!

色鮮やかな光の花が何発も空に浮かんでは消えていく。

わたしはノブくんの手を握り締めて立っていた。
人ごみからちょっと離れた土手の上で、水面に映る花火を見つめながら並んで立っていた。
そして打ち上がる花火の音に紛れさせて囁いた。

「か、佳菜……ノブくんとなら……して……いいよ」

「佳菜……」

お互いギュッと手のひらに力を入れた。
肩と肩をひっつけた。

「ただし、初めてなんだから綺麗なホテルだよ。
間違っても、車の中でカー……カーセックスなんてイヤだからね」

「うん。わかってる。実はホテルの予約も取っているんだ。この日のためにね」

「ホントぉ?! もう、ノブくんったら。エッチなんだから。
でも、うれしい。佳菜、とっても幸せ♪」

ふたりの人生を祝うかのように、いなか町の花火大会はフィナーレを迎える。
その夜空に青白い月の光はなかった。
あるのは満天の星々の輝きだけ。

わたしとノブくんが、会社の先輩『川上春彦』の自殺を知ったのは、高級ホテルでの幸せな一夜を明かした後。その翌日のことだった。


『 水面に咲く花火 完 』



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