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永~く愛して♪♪  登場人物紹介






















【登場人物 紹介】



            綾音(あやね)

        本作品のヒロインで、結婚2年目の主婦。26才
        学生時代には、美人女子大生として雑誌社に声を掛けられるほどで、今
        もその容姿は健在である。
        家事その他、夫である吉貴の妻としてそつなくこなしているが、どこか
        そそっかしいところも。
        客室乗務員をしている美和とは、女子大時代からの付き合い。



          吉貴(よしき)

        綾音の夫である。
        筋肉質な引き締まった体型に、男らしい凛々しい顔立ち。
        妻である綾音を心から愛し、仕事で疲れているにも関わらずに、夫婦の
        スキンシップは積極的に取ろうとする。
        毎夜のように綾音と肌を合わせて、夫婦生活に問題はないように思われ
        るが……



          美和(みわ)

        綾音の親友で、大手航空会社の国際線で客室乗務員をしている。
        27才 独身
        彼女とは女子大時代に同棲していたこともあり、今でも実の姉妹のよう
        な感覚で付き合っている。
        夫婦の秘め事に悩んでいる綾音に、彼女なりのアドバイスを送るのだが
        ……







夜の営み……その後……






















【第1話】


        
        「は、はあ……んん、綾音ぇっ!」

        「ああ……はあぁっ、もっと、もっとぉっ……突いてぇっ、吉貴ぃっ!」

        おぼろげな灯りのなかで行われる夫婦の営み。
        ミシミシとダブルベッドのスプリングを軋ませては、夫の吉貴が妻の綾
        音の上に圧し掛かっていた。

        愛する夫のペニスをなるべく深くで受け取ろうと、仰向けの姿勢で両足
        をM字に開く綾音。
        その股の中心、成熟しきった花弁を貫くように腰を上下に振る吉貴。

        じゅく、じゅく、じゅにゅ、にゅちゃ……

        「ああぁ、ううんっ……吉貴の……オチ○チン、感じるぅ、ふぅぅぅっ」

        「綾音ぇっ、僕も……お前のオマ○コがぁ……んんっ、最高っ!」

        綾音は濡れそぼったヴァギナを突かれるたびに、吉貴の息遣いを耳元で
        聞いた。
        その熱い吐息が汗の滲む胸元に降りかかり、心が切ないもので満たされ
        ていく。

        (綾音は、アナタをもっと感じていたいの。1分でも1秒でも長く愛し
        てもらいたいの)

        恥肉と剛肉がぶつかる衝撃を感じて、潤滑油のように溢れる愛液を股の
        付け根に感じても、綾音は一途にそれだけを想い続けていた。
        膣ヒダを擦り上げる膨張しきった肉棒にも、その願いを託してみる。

        「んはっ! 綾音、そろそろ……」

        「うん、吉貴……いいからぁ、そのまま中へ……あっ、あぁぁ……出し
        てぇっ!」

        (まだお願い、出さないで。もう少しの間、綾音を愛して!)

        矛盾したふたつの声音。妻としてのけじめの声と、胸に秘めた想い。
        けれども、彼女のささやかな願いは、寸分で消え去っていた。

        単調なピストンにも関わらずにひと回り大きくなったペニス。
        それを膣内に感じた綾音は、持ち上げた両手を吉貴の背中に乗せた。
        筋肉質な背中を手のひらで感じ取りながら、夫が気持ちよく射精できる
        ように、括約筋を軽く締め上げてみせる。

        「はあぁ、で、出る」

        どぴゅ、どぴゅ、どぴゅうぅぅっっ!

        「ひゃあぁぁんんっ、中で感じるぅっ! 熱いのが掛けられてぇ……す
        ごいぃ、ふあぁぁっっ!」

        膣奥深くにまで挿入されたペニスが、勢いよく弾けていた。
        20代後半の若々しいペニスは、同じく20代後半の若々しい膣肉を男
        の精で染め上げていく。

        綾音は硬直した吉貴のモノがピクピク反応し、それに絡みつく膣ヒダを
        リアルに感じた。
        噴射された熱い水流が子宮の扉を叩くのも、当然のように受け止めてい
        た。

        その液体の海を渡って、吉貴の精子が無事に卵巣へ到着するのを。
        二人の愛の結晶が子宮に定着することを。

        「はあ、はぁ……」

        妻の中で射精し萎えたペニスを晒したまま、仰向けで寝転ぶ吉貴。
        その隣で、豊満な乳房を上下させながら夫の目線を追う綾音。

        「んはぁ、はあぁぁ……吉貴、赤ちゃん出来るといいね」

        暗い天井を見つめながら、綾音は呟いていた。
        けれども吉貴の返事は聞こえない。
        すやすやと安らいだ寝息を立てて、既に夫は夢の中へと旅立っ
        た後だった。

        「もう、吉貴ったら。アソコくらい処理してからオヤスミでしょ。ホン
        ト仕方ないわね」

        綾音はけだるそうに身体を起こすと、吉貴の顔を見つめた。
        愛のあるセックスをして性欲を解消した寝顔は、まるで小さな子供のよ
        うである。

        彼女はベッド脇にあるサイドテーブルに手を伸ばすと、ティッシュを数
        枚抜き取り、自分の股の間に挟んだ。
        そして、もう数枚ティッシュを抜くと、吉貴のペニスを清めていく。
        起こさないようにそっと、ティッシュの肌面で柔らかく包み込むように
        して、綾音の淫水とスペルマの残液を拭い取っていた。

        いつもの光景。習慣づいたいつもの仕草。
        やがて綾音は、軽く自分の股間も拭うと再びベッドに横たわっていた。
        仰向けでイビキを掻き始めた吉貴に背中を向けると、悶々としたままの
        綾音自身の性欲に語り掛けてみる。

        (吉貴って、私のことをとっても愛してくれて、とっても優しいけど……
        でもね、もう少し肉体でも結ばれたいなぁ、なんて。
        綾音は、やっと感じ始めたところなのに、吉貴ったら、さっと出して寝
        ちゃうんだもん。確かに綾音だって、早く赤ちゃんが欲しいわよ。でも、
        夫婦なんだし二人だけの愛をもっと確かめ合いたいのに……)

        「吉貴の……バカ……」

        綾音はちょっぴり不満な顔を作ると、唇を尖らせた。
        その間にも右手がするすると下腹部へと降りていき、覆うモノがない股
        間に宛がわれた。

        (いやだわ。さっき拭いたばかりなのに、もうびっしょり)

        夫のペニスに愛撫された花弁に、指先を1本、2本、3本と沈める。
        吉貴の怒張したペニスの太さを思い浮かべながら、束にした指を膣腔に
        挿入させる。

        ずにゅ、ずにゅ、ずにゅ、にゅちゅぅ……

        「んはぁぁ……はむぅっ……」

        嫌でも漏れる吐息を、空いた左の手が食い止めていた。
        綾音は、手のひらで口元を覆いながら、オナニーを始めたのだ。
        ヴァギナで抽送する指の束を、愛する夫のペニスに見立てて。







アナタの寝息を耳にしながら、綾音は感じているの






















【第2話】


        
        「むぐうっ……は、はあぁぁっっ……」

        綾音は、差し込んだ右手を太股で挟み込んでいた。
        吉貴の寝息を背中に受けながら、次第に昂ぶる快感を更に高めようと指
        を小刻みに前後させる。
        指先をカギ状に曲げて、膣ヒダを引っ掻くように突き上げていく。

        ミシ……ミシ……と、ダブルベッドか微かに軋んだ。
        清めたはずの女の部分からは淫水のフェロモンが湧き立ち、恥肉を嬲る
        指先が淫らな水音を奏でている。

        (綾音って、いやらしい女。昨日もこっそりオナニーして。その前の日
        も。そのもうひとつ前の日だって。でも、自分でアソコを慰めてあげな
        いと眠れないの。割れ目の中がジンジンして、エッチな刺激を求めてく
        るの)

        吉貴は綾音にとって勿体ないほどの良く出来た夫だった。
        結婚して2年。一家の主としての真面目な仕事ぶりもさることながら、
        家庭生活においても、綾音に優しく接してくれている。
        深夜に行われる夫婦の共同作業も、同じくである。
        夫婦のスキンシップを高めようと、ほとんど毎日のように綾音の身体を
        愛してくれているのだ。
        だが、その愛し方には少々問題があった。

        毎夜、仰向けに寝転んだ綾音に覆い被さると、亀裂に添って2、3分、
        指をくちゅくちゅっとするだけでペニスを挿入させる。
        そして、スタートからラストスパートのように腰を突き動かし、ものの
        3分で射精して終わり。
        余韻を愉しむ間もなく、本人は眠りに付くのだ。
        要するにセックスが淡白なのである。

        綾音自身も、新婚の頃はそんな単調なセックスで満足していた。
        女子高、女子大と、同性だけに囲まれて学生時代を送った彼女は、社会
        人になり職場で知り合った吉貴と結ばれるまで、男を知らなかったのだ
        から。
        けれども今年で26才になる成熟した肢体は、吉貴とのセックスを重ね
        るたびに不満を持ち始めていた。
        知らず知らずに開発されていく綾音の肉体が、更に濃厚なセックスを求
        めるようになっていたのである。

        (だから今夜だって、恥ずかしいのを我慢して話してあげたのに。その
        ……オ、オチ○チンって。口にした時は、顔が火傷するくらい熱くなっ
        て、それで……綾音のアソコもキュンとなって……やだ、思い出しただ
        けで、またお汁が……)

        くちゅ、くちゅ、ぐちゅう、ぐちゅぅ……ずにゅゅぅぅ……

        「んんっ……ふむうぅぅっっ、はん、はむぅっ!」

        指のペニスが動きを速めていく。
        中途半端だった官能の炎が、下腹部全体に燃え広がり、背筋を気持ちい
        い電流が駆け昇っていく。

        綾音は口を覆っていた左手を枕に置き換えると、右手を追うように下ろ
        していた。
        効き手の指を濡れそぼるヴァギナに沈めながら、左手指に亀裂の先端を
        弄らせたのだ。
        感じるためだけの性器クリトリスを、揃えた指の腹でシュルシュルと擦
        り上げていく。

        「あうぅぅぅっっ! ふくうっ、んくぅぅっっ!」

        オナニー独特の快感を愉しむ余裕は、綾音にはなかった。
        夫を起こさないように、声を殺しながら短時間に昇り詰めるのに一生懸
        命だった。

        (膣が感じる! クリトリスも、感じちゃうぅっ! 指を押し付けると、
        お豆が気持ちいいのぉっ! ねぇ、吉貴は知ってた? アナタが割れ目
        をくちゅくちゅしてくれる時に、綾音が腰をモゾモゾさせてたのを。あ
        れって、吉貴にお豆を弄って欲しかったからだよ。綾音はここを触られ
        るだけでイッちゃえるから。ほらぁ、今だって)

        くにゅ、くにゅ、くにゅ……ぐちゅう、ぐにゅぅぅぅっっ……

        「ふっ……くうぅぅっっ! ふうぅぅっっ!」

        枕から洩れる息遣いが、激しく短くなってきた。
        ツマ先までピンと伸ばした脚の間で、10本の指がその速さを更に増し
        た。
        右手指のペニスが膣奥深くに挿入されたまま、絡みつく粘膜を引き伸ば
        していく。
        左手の人差し指がクリトリスの包皮を引き剥き、親指の腹でグリグリと
        押した。

        頭の中が白く染まっている。
        隣で聞こえていた吉貴のいびきも聞こえない。

        両手の指に掻き回される恥肉が擦れる音と、シーツに沁みを残す勢いで
        溢れる愛液の水音。
        それだけが、鼓膜を突き破って脳の中に響き渡っている。

        (イッちゃう! 綾音、オナニーで絶頂しちゃうっ!)

        「ふぁ……あうぅぅ……んん、ぅぅぅぅうーぅぅっ!」

        急に身体が軽くなった。
        頭のてっぺんを目掛けて、気持ちいい電流が突き上げていた。

        膣壁がキュッと縮こまり、指のペニスを膣奥の扉へと引き込んでいく。
        同時に、シュッと音を立てて淫水が湧き出し、花弁を覆う手のひらをし
        っとりと濡らしていた。

        綾音は自分自身の指で絶頂に達した。
        今夜も、昨日も、一昨日も……
        淡白なセックスに耐え切れなくなった肉体を慰めるために、夫に隠れて
        オナニーをしたのだった。

        「はあ、はぁ……んんっ……はあ……」

        エクスタシーを感じた後も、綾音の身体を何度も襲う快感の小波。
        女の快感は一瞬で終わる男のものと違い、ある程度持続する。

        そんな虚しい快感の波が収まるのを、綾音は胸を上下させながら待ち続
        けていた。
        横向きの身体を仰向けにして、ほの暗い天井をぼぉっと見続けている。

        「綾音って、最低……」

        ようやく整った呼吸を待って飛び出したのは、自分を傷つける言葉。
        今夜も……昨夜も……その前の夜も……

        同じ言葉を吐いて、同じ深い溜息を吐いて、そして、ティッシュを同じ
        枚数だけ引き抜いていた。
        同じ動作で濡れた花弁を拭い、ぷんと女の匂いがする指を拭った。
        10本の指すべてを……

        「おやすみなさい……吉貴……」







先輩に言われなくてもセックスしています!






















【第3話】


        
        翌朝、出勤する吉貴を見送った綾音は、リビングの掃除を始めた。
        そして、その電話は、彼女が掃除機をかけている最中に掛ってきた。

        相手は、彼女の女子大時代の1年先輩で名前を美和という。
        その当時、所属していたテニスサークルで知り合ったのだが、郷里が同
        じということもあって直ぐに打ち解け合い、美和が卒業するまでの間は
        ワンルームマンションをシェアして同棲していたこともある。
        といっても、彼女達の間に特別な感情が芽生えたわけではない。
        あくまでも生活費を節約する目的が主であったのだが。



        「お久しぶり~♪ 元気してたぁ、綾音」

        2時間後。勢いよくドアを開けて顔を覗かせたのは、半年ぶりに再開す
        る懐かしい笑顔だった。
        女子大を卒業後、難関といわれる大手航空会社の客室乗務員になった美
        和は、海外を飛び回る日が続き、親しかった綾音とも昔のように会えな
        くなっていたのだ。
        それだけに、半日とはいえ時間を確保して訪ねてくれた彼女を、綾音は
        顔を綻ばせて迎え入れていた。

        「うんうん。ちゃんとお部屋も片付いているし、ごうか~く♪」

        「合格って……? もう、先輩ったら。これでも綾音は一応主婦ですか
        らね。お掃除くらいしてますよ、ふふふ♪」

        美和はリビングに入るなり、首をぐるりと回して大げさに頷いてみせる。
        そんな学生時代と変わらない彼女の茶目っ気ぶりに、綾音はクスクスと
        笑いながら応えた。

        「そっかぁ、綾音は主婦なんだよね。良かったわね、優しい旦那様に巡
        り合えて……」

        「ま、まあ……あ、でも……先輩もいらっしゃるんでしょ? 素敵なパ
        ートナーさんとか」

        「う~ん、いないわけじゃないけど……ルックスがちょっとね。やっぱ
        り、吉貴さんみたいにダンディーじゃないと……って、綾音、何を言わ
        せるのよ!」

        「ごめんなさ~い、先輩♪」

        美和は軽く目尻を上げると、綾音に向かって握りこぶしを振り上げるマ
        ネをした。
        もちろん怒ってなどいない。
        手のひらを顔の前で合わせる可愛い後輩に片目でウインクしてみせると、
        その目をキープしたままキャビネットに顔を向ける。
        ガラス製の扉の奥で、肩を組み眩しい笑顔を覗かせる吉貴と綾音の写真
        立てを見つめた。

        「綾音が結婚して、もう2年になるのね。ところで、吉貴さんとはうま
        くいってる?」

        美和は感慨深げにほっと息を吐くと、ちょっと真顔になって聞いた。

        「え、ええ、お陰さまで……うまくやってますよ」

        綾音が返事をするのに、数秒の間が空いた。
        当たり前の答えを返すのに、なぜだか唇を重たそうに動かしている。

        「ホントに? ホントかなぁ? な~んか怪しいぞぉ」

        「べ、別に……わたし、嘘なんか……ホントに吉貴とは仲良くやってる
        し……」

        「ふ~ん、夜の営みもかな?」

        「な?! よ、夜の営みって……せんぱい、変な言い方やめてください。
        いやらしいです……」

        美和の露骨な問い掛けに、綾音の眉がびくりと波打った。
        続けて消え入りそうな声と共に顔を赤く染める。

        彼女は同棲していた頃からそうだった。
        綾音も美和も学生時代の頃から、美人女子大生として雑誌社に声を掛け
        られるほどの美形だったが、異性に対する付き合い方はまるで違った。
        他校の男子生徒との交流にも消極的だった綾音に対して、美和は気に行
        った男子生徒には積極的にアタックを掛けていく。
        性に関しても、学生時代バージンを守り通した綾音に比べて、出会った
        頃には既に初体験を済ませていた美和は、セックスフレンドと呼ばれる
        男性も数人はいたようである。
        要するに、性に対して奔放なのである。

        「うふふ、綾音ったら顔を赤くしちゃって……可愛いんだから。でもア
        ナタだって、愛する人の赤ちゃんなら身籠りたいって思っているでし
        ょ? 吉貴さんとセックスするのも、妻の務めなのよ」

        「そんなこと、先輩に言われなくても……わ、わかってます。ちゃんと
        毎晩、夜になったら、その……吉貴と……」

        「旦那様とセックスしてるのね。偉い、偉い」

        ちょっと悔しかったのか。唇を尖らせながら、それでも恥じらいを浮か
        べて告白する綾音。
        そんな後輩の初々しい戸惑いに、美和は目を細めて何度も頷き返してい
        た。



        「このケーキ、おいし~い♪ ほっぺたが落ちちゃいます」

        「あらあら、綾音ったらホント大げさね。でも、ほっぺたのお肉ならち
        ゃんと付いているわよ。おたふく風邪をしたみたいにね」

        「先輩の意地悪……」

        美和が手土産に持ってきたショートケーキを挟んで、彼女達の会話も弾
        んでいる。
        何かにつけて子供っぽい仕草をする綾音を、実の姉のように美和が優し
        い眼差しで見守る様子は、まるで同棲していた頃を彷彿させた。

        (変わってないな、先輩。あの頃と一緒でスタイルは完璧だし。ううん、
        女子大生してた頃よりも、もっともっと磨かれた大人の女性に進化して
        るよね。同性のわたしが言うのも変だけど、とっても色っぽくて艶やか
        で……やだ、綾音はどんな目で先輩を見てるのよ、エッチ)

        ケーキを食べ終え、優雅な仕草でティーカップに口を付ける美和を、綾
        音の目が追った。
        密かに劣等感を覚えていた女らしさの秘密を探ろうと、彼女の指使いを
        マネしながらティーカップを口に運ぶ。

        「ちょっと、綾音。急にダンマリしてどうしちゃったの? 私の顔に何
        か付いてる?」

        美和が顔を突き出して、綾音を見つめた。

        「あ、あははは……なんでもないんです先輩。ごめんなさい」

        「あははは、ごめんなさいって……う~ん、その目にその表情? なん
        か怪しいね。やっぱり有るんじゃないの、悩み事?」

        奥歯にモノが挟まったような綾音の態度をいぶかしんで、美和が本気の
        真顔で聞いた。
        客室乗務員というプロのメイクに彩られた瞳が、綾音の心を透かすよう
        に覗き込み、そのまま目線をスライドさせた。
        写真立ての中で笑顔を見せる綾音へ、そして夫の吉貴へ注がれる。

        「さっきもアナタに聞いたけど、吉貴さんとは本当にうまくやってる
        の?」







女はどんな時だって下着で勝負なの!






















【第4話】


        
        予想もしなかった会話のすれ違いから、美和の直感が鋭く反応した。

        (もうだめ。先輩のあの目を見てたら、隠し事なんて絶対に無理だよね)

        彼女とは女子大に入学して以来の付き合いである。
        3年間も同じ部屋で暮らし、先輩後輩の垣根を越えて本音で語り合って
        きた無二の親友なのである。
        心の中のわだかまりを突かれて隠し通せる図太さなど、綾音は持ち合わ
        せていない。

        「実は……先輩、わたし……」

        「何? ちゃんと聞いてあげるから、綾音」

        「わたし、先輩に相談したいことがあるんです。吉貴……ううん、その
        夜の営みのことで……」

        綾音は、声を上ずらせながらも美和にすべてを打ち明けていた。
        顔が火照り、額に汗の粒を浮かせたまま、夫との性行為の詳細を。
        毎晩抱いてくれる吉貴の優しさに触れながらも、淡白なセックスのせい
        で、疼く身体を毎夜ひとりで慰めていることも。
        寝息を掻く夫に背中を向けてオナニーする罪悪感を。

        時々口ごもりながも話し続ける綾音の告白を、美和は口を挟まずに耳を
        傾けていた。
        羞恥に顔を染めながら相談する後輩を相手に、完全な聞き役に徹してい
        る。
        そして話し終えて俯いてしまった綾音の肩に、美和は自分の手を乗せた。
        顔を持ち上げようとする綾音に柔らかい眼差しで頷くと、しっとりした
        大人の女の声で話しかけていた。

        「綾音、よく話してくれたわね。辛かったでしょう」

        「……はい。でも先輩に話したら、すっきりしました。こんなこと誰に
        も打ち明けられなくて……わたし、わたしっ……うぅっ、ぐすっ、ぐす
        ん」

        「ほら、泣かないの。綾音の泣き虫は相変わらずなんだから。でも良か
        った。私を信じてくれたんだね」

        指の背中で目を擦る綾音の姿は、26才の家庭を預かる若妻から、あど
        けなさを残す女子大生の頃にタイムスリップしていた。
        美和はそんな彼女の胸前に両腕を回すと、頬を寄せながら思いっきり抱
        き締める。

        自分には欠片も残されていない初々しい女性らしさ。
        それを全身から溢れさせている綾音に、ちょっぴり羨ましさを滲ませて。
        反面、その初心な心に弄ばれ悩み続けていた後輩を、自分の手で何とか
        してあげたくて。

        「綾音、大丈夫だから。私がなんとかしてあげる」

        美和は、ポンと自分の胸を叩いて見せた。



        「綾音、そこに立ってくれるかしら?」

        美和はリビングの奥まった所に綾音を立たせると、自分は数歩離れた先
        からアゴの下を手の甲で支えて、考えるポーズを作った。
        そしてツマ先から頭のてっぺんまで、綾音の全身に向けて目線を往復さ
        せる。

        「先輩……なにを?」

        その舐めるような視線に不安なものを覚え、綾音は声を掛けた。
        服を身に着ているのに、美和の妖しい瞳が彼女の身体を透視しているよ
        うに感じたのだ。

        「うーん、そうねぇ……」

        けれども美和は答えてくれない。
        悩ましい女の溜息を混じらせながら数分に亘って綾音を観察し、やがて
        解決策を見出したのか、今度はアゴの下にあった手で彼女を手招きする。

        引き寄せられるように美和の真ん前に移動する綾音。
        両手はもちろん、吐息まで届きそうな距離で二人の女性は見つめ合って
        いた。
        だが、その出会いは数秒も持たなかった。
        綾音に向かってニッと笑い掛けた美和が、突然腰を屈めたのだ。

        膝と腰を曲げて中腰の姿勢を取ると、両腕を綾音に向かって突き出して
        いく。
        ダークグレイという落ち着いた色合いのスカート生地を、美和は指の腹
        で撫でながら下降させ、膝小僧が見え隠れしている処で止めた。

        「せ、先輩……?!」

        不安げな綾音の呼び掛けに恐怖が混じり始めている。
        その声を背中で受け止めながら、美和の両指がスカートの裾に絡み付く
        ように曲げられる。

        「綾音、じっとしてるのよ」

        主婦らしいひざ丈のスカートの前で、両腕を捧げてひれ伏す美和。
        その折り曲げられた腰が、後輩への一言と共に真っ直ぐに引き伸ばされ
        ていく。
        両手の指にしっかりとスカート生地を掴まれたまま。

        「キャッ! イヤッ!」

        綾音が少女の声で悲鳴を上げる。
        一瞬のことで立ち竦んだまま、美和によって腰の上までスカートを捲ら
        れたのだ。

        「先輩……どうして? 恥ずかしい、見ないで……」

        20代半ば過ぎのムッチリとした太股が、余すことなく曝け出されてい
        た。
        その股の付け根を覆う逆三角形の布切れさえも、外気に晒され美和の両
        目に晒されている。

        「やっぱりね。私の思った通りだわ」

        「え? 何、なんのこと? 先輩……」

        美和の意味深な答えに、下りかけた綾音の両腕が止まった。
        パンティーが貼り付いた下腹部から視線を外そうとしない美和に、綾音
        は羞恥を堪えて聞いた。

        「綾音。いくら主婦しているからって何よ、このショーツ。全然色気が
        ないじゃない。どうせアナタのことだから、スーパーのワゴンセールと
        かで漁ったんでしょ?」

         「そんな……色気って言われたって、やっぱり節約しないと……」

        美和の答えは図星だった。
        綾音は消え入りそうな声で反論すると、内股どうしをこれ以上ないほど
        密着させて捩り合わせていた。
 
        「だめよ、綾音。その年でベージュ色したオバサンパンツを穿いてたら、
        心まであっという間にオバサン色に染まっちゃうわよ。節約もいいけど、
        女はランジェリーにだけは拘らないとね」

        「は、はい……先輩……」

        同棲していた頃は下着姿でも気にならなかった美和の視線が、今の綾音
        にはどうしようもないほど恥ずかしいのだ。
        この2年間、夫にしか見せてこなかった下半身を突然覗かれたショック
        に、綾音は擦れた声で返事をするので精一杯である。

        「ごめんね、綾音。ちょっと恥ずかしい思いをさせちゃったわね。でも
        私の言ってる意味、アナタにも分かるでしょ? せめて夜の営みの時く
        らい、エッチなランジェリーを身に着けて吉貴さんをその気にさせない
        と」

        美和の両手がスカートから離れて、ベージュ色をしたパンティーが姿を
        消した。
        膝小僧を覆うふわりとしたスカート生地の感触を意識しながら、綾音は
        コクンと頷いていた。