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セクシーショーツ……その後






















【第5話】


        
        「でも先輩。エッチなランジェリーと言ったって、わたし……」

        綾音は口ごもったまま俯いた。
        美和が口にした男を挑発するような過激な下着など、彼女には持ち合わ
        せがないのである。
        ついでに知識の持ち合わせもなかったが……

        「そっかあ、綾音って昔から下着に無頓着だったわよね。同棲してた頃
        なんか、確かグ○ゼのパンツを穿いてたっけ」

        「いくらなんでも、穿いてません。もう少し大人のパンツを穿いてまし
        た」

        「そう……大人のねぇ……それで、大人のパンツって、お尻の処にクマ
        さんの絵がプリントされた……」

        「ひっどーいっ! そんな遠い昔のことを蒸し返さないでください」

        首筋まで赤く染めた綾音が、ほっぺたを風船のように膨らませて抗議す
        る。
        その幼っぽい仕草に、美和が笑いを堪え切れずにぷっと吹き出した。

        「もう、綾音ったら。その顔、昔のまんまね。でも……そうねぇ、男を
        その気にさせる下着って口で説明しても無理よね。この子ったら早速オ
        バサンパンツデビューしちゃってるし……」

        綾音は、再びアゴの下に手を差し込むと考えるポーズを作る。
        そして思考すること1分。
        ほんのりと顔を赤らめた美和は、綾音の腕を取り耳元で囁いていた。

        「そんなこと! ホントにやっても構わないんですか?」

        「ええ、いいわよ。綾音にだけ恥ずかしい思いをさせるわけにはいかな
        いもの。それに、きっと参考になると思うわよ」

        「う~ん……だったら、お言葉に甘えて……」

        5分ほど前の光景が、彼女達の立場を入れ替えて再現される。
        美和の前で膝立ちになった綾音が、彼女のスカートに手を掛けた。
        国際線の客室乗務員らしいエレガントなスカート生地に指を掛けると、
        ゆっくりと持ち上げていく。

        「綾音。遠慮しなくていいから、思いっきりスカートを捲って」

        「……はい……先輩」

        上ずった美和の声が空から降ってきて、綾音は擦れたままの声で返事を
        した。

        (先輩の肌ってすべすべしてる。やっぱりエステとか通ってるのかな? 
        それに太股に無駄なお肉がついてなくて、ほっそりしていて……羨まし
        い)

        次第に露わになる美和の下半身を、綾音は食い入るように見つめた。
        裾を持ち上げる指の背中で、リアルな肌の感触も同時に受け入れていく。

        そして、裾を掴んだ両手が美和のウエストに達した。
        同時に綾音は、息を呑んで見つめた。
        美和の股間に貼り付いたセクシーなパンティーを!
        優雅なレース生地から覗く黒い翳りを!
        その下に潜む、美和の女の部分を!

        「綾音、ちゃんと私のショーツを見てくれてる? 女はね、いつだって
        男の目を意識しないといけないの。出掛ける時も、自宅でくつろいでい
        る時だってそうよ」

        「は、はい……」

        顔が燃えるように火照っていた。
        でも、目は逸らせられない。
        綾音は美和の股間に顔を近付けたまま、声だけを絞り出していた。

        (これが男をその気にさせるランジェリーなの? サイドが紐になって
        いて、それにフロントが透け透けで……やだ、割れ目まで覗いてる?! 
        これが先輩のアソコ?)

        間近で見た女の部分に、綾音の女も疼き始めていた。
        互いのパンティーを見せ合う女たちの光景に、昼下がりのリビングが妖
        しい空気に包まれていく。

        「どう、綾音? わかってくれたかしら。アナタもこんな下着で吉貴さ
        んに迫ったら、きっと上手くいくと思うの」

        「え、ええ……わたしもそう思います」

        そんな綾音の気持ちを断ち切るように、美和が身体を一歩引いた。
        光沢のあるスカートが幕を下ろすように落下し、綾音の目線を遮ってい
        た。

        「あら、もうこんな時間。そろそろお暇しないと……」

        そして美和が腕時計に目をやった瞬間、リビングに漂っていた妖しい空
        気が消えた。
        綾音と美和。二人の間には昔ながらの関係が舞い戻っていた。



        2日後……
        寝息を立てる吉貴に背中を向けて、綾音はひとり寂しく指を動かしてい
        た。
        ミシ……ミシ……と控えめにベッドが軋む中、夫に膣出しされてヌルヌ
        ルとした内壁に指を束にして擦りつけては、官能の炎を昂ぶらせていく。

        ずにゅ、ずにゅ、ずにゅぅっ……ぐちゅぅっ……

        「んんっ……はむうぅぅっっ……」

        唇を覆う左の手のひらが、漏れだす吐息をビリビリと感じた。
        けっして夫には聞かせられない慰めの喘ぎ。それを寝室中に響かせよう
        と、底意地の悪い右手の指ペニスが膣奥にまで触手を伸ばして蠢いてい
        る。
        吉貴の激しい抽送で半分蕩けた柔肉を掻き回すように撫で擦っては、綾
        音仕様の快感へと塗り替えていた。

        (吉貴のバカバカ! どうしてこうなるのよ)

        背筋を這い上る刺激に、綾音は首を仰け反らせて応えた。
        エッチで妖しい電流に頭の中が白く染まり、それと並行して湧き上がる
        虚しいモノが、綾音の瞳をじんわりと潤ませていく。
        そして、次第に焦点の合わなくなった視線が、床の上に捨てられたピン
        クの布切れを拾った。
        美和がアドバイスしてくれて、ランジェリーショップで頬を染めながら
        購入したTバックのパンティーが、丸められた無残な姿で打ち捨てられ
        たように転がっているのだ。

        (わたしがパジャマを脱いで見せてあげたら、吉貴ったら鼻の下を伸ば
        して悦んでたのに。なのにどうして? Tバックを喰い込ませたお尻を
        振ってあげた途端、もう我慢できないって、わたしを押し倒して……
        セックスしてくれるのは嬉しかったけど、もう少しムードっていうかな
        んというか……まだアソコが濡れていないのに、オチ○チンで突かれて
        痛かったんだから。それなのにあっという間に出しちゃうし……)

        要するに、恥じらいを浮かべながらお尻を揺する綾音に、吉貴の欲情が
        暴走したのだ。
        鼻息を荒くして彼女をベッドに押し倒した吉貴は、性欲の源のようなT
        バックを剥ぎ取り、前戯もそこそこにバックから挿入。
        恐怖のあまり身を固めた綾音を無視するように、がむしゃらに腰を突き
        動かしては、あえなく昇天という具合である。

        「ふむうぅっっ……んむぅ、むうぅっっ……!」

        ヴァギナの壺で、吉貴の放った精液が湧き出す愛液に薄められていく。
        恥肉にズボズボと突き立てられる指ペニスの抽送に、綾音の頭が白く染
        まった。
        独りエッチの快感に、吉貴のペニスの記憶が霞んで霧のように消滅する。

        (イク、イク……綾音ぇ、飛んじゃうぅぅっっ!!)







アダルトショップで、バイブ買います!!






















【第6話】


        
        ピンポーン♪♪

        「綾音、元気してる?」

        1週間後、綾音の哀しい決末に責任を感じた美和が、再び訪ねてきた。
        フライトスケジュールが詰まり忙しい身の上だったが、妹のように可愛
        がってきた後輩が心配でならないのだ。

        「それで吉貴ったら、腰をクイクイとさせて、『あっ、出る』で、終わり
        なんだもん。もっとこう……長く愛して欲しいのに」

        「あらあら、恥ずかしがり屋さんだった綾音にしては、大胆な告白ね。
        エッチな下着の影響でちょっとスケベちゃんに変身したのかな。ふふふ
        っ」

        「先輩、笑わないでください。これでもわたしは本気なんですから」

        綾音は、美和が持参したショートケーキを頬張ったまま、ほっぺたを膨
        らませてみせる。
        美和の軽い笑いに、彼女なりの抗議を示したつもりだった。

        「ごめんね、綾音。笑うつもりはなかったんだけど……でも、そうねぇ。
        可愛い後輩のためだし、新しい吉貴さん攻略作戦を伝授してあげるわ」

        「ホントですか、先輩。嬉しいです」

        「ふふ、だから綾音、耳を貸しなさい」

        真顔になった綾音に、美和が顔を寄せ耳打ちする。
        彼女達以外にリビングには誰もいない。それにも関わらずに声を潜めて
        話す美和の内緒話に、綾音の表情が刻々と変化していく。
        そして話のラストのあたりでは、小さく頷きながらも目線が宙を彷徨い、
        顔を首筋まで赤く染めていたのだ。

        「でも、先輩。そんなの恥ずかしいです」

        「綾音、これも幸せな夜の営みを実現させるためなの。ちょっと恥ずか
        しいくらいなによ。我慢なさい、いいわね」

        美和は戸惑う綾音を言い含めると、フライト時間に追われるようにマン
        ションを後にした。



        その日の午後になって、綾音は周囲に気を配りながら外出した。
        駅前に向かうと電車に乗り、隣街のまた隣街へと向かう。

        駅に到着した綾音は、ポケットに忍ばせたサングラスを掛けると、同じ
        くポケットに忍ばせたメモ用紙をこっそりと拡げる。

        (えーっと、『大人の玩具のお店 デカマラ屋』だよね。先輩が教えてく
        れたお店の名前って。でも、こんな店名にして従業員の人って恥ずかし
        くないのかしら?)

        そんなハレンチな店へと向かう自分はもっと恥ずかしいのに、心の中の
        綾音は他人事のように振舞っていた。
        買い物カゴをぶら下げれば似合いそうな地味な服装にサングラスという、
        違和感のあるファッションの彼女は、駅前の信号を渡った先の路地でそ
        の店名を見付けると、相変わらず他人事にしがみ付く心を引き連れて小
        走りに店の中へと入って行った。

        「いらっしゃいませ~♪」

        綾音が店に足を踏み入れた途端、金髪店員の軽い声に出迎えられる。
        真っ昼間に、それも女性だけで訪れる客は珍しいのだろう。
        その店員はレジのカウンターから上半身を乗り出すようにして、綾音の
        姿を目で追っている。

        (嫌だわ、あの店員さん。わたしがお店に入ってからずっとこっちを見
        てる。レジの前でお客さんが待ってるのに)

        綾音はレジの死角になっている通路へ向かうと、再びメモ用紙を拡げた。
        美和が耳元でアドバイスしてくれた商品名を、口の中で復唱する。

        (『パワー自慢!デカチン君』と。絶対に声に出したくない名前だよね。
        でも、どこに有るんだろう?)

        狭い通路を挟んでびっしりと並んだ卑猥な道具に目を逸らせていた綾音
        だったが、いつまでもこうしてはいられない。
        焦る気持ちと戦いながら、棚の端から端へと商品名を流し読みしていく。

        (何よこれっ! 手錠なんか売ってるけど、どこで使うのよ。こっちは
        ……やだ、怖い。ムチに蝋燭って? これってSMの必需品よね、女の
        人を痛めつけて悦ぶエッチなプレイで……キャッ! ブリキのオマルに
        ガラス製のシリンダーまである?! まさか、浣腸セットまで?)

        結婚してからの2年間。吉貴とノーマルなセックスしか経験のない綾音
        にとって、店内に展示された商品は少々刺激が強すぎたのかもしれない。
        目にしただけで身体が火照りだし、下腹部からはジンジンとした疼きが
        忍び寄ってきていた。

        (やだ、アソコがムズムズしちゃう。指が降りていって……ダメダメ! 
        綾音、何しているのよ。さ、早く商品を見付けて退散するのよ)

        気を抜けば、太股どうしを捩り合わせそうになる。
        そんな淫らな感情をなんとか堪えると、綾音は駆け足で店内を見て回る。
        店員からも男性客からも好奇な視線を浴び続けているが、知らない振り
        をする。
        ようやく発見したバイブコーナーと記された一角で、目を皿のようにし
        て『パワー自慢!デカチン君』を探した。

        (あった! これだわ♪)

        棚に貼り付けられたシールを見て、綾音はホッと胸を撫で下ろしていた。

        (あっ! 在庫が……)

        しかしである。そこだけぽっかりとスペースが空いているのだ。
        他の商品は山積みになっているにも関わらずに。

        「どうしてよ、ついてないな……」

        だからといって、諦めるわけにはいかない。
        美和のアドバイスだけが、頼りなのである。

        (ファイトよ、綾音。吉貴との幸せなセックスタイムが、アナタを待っ
        ているわよ)

        綾音はサングラスを掛け直すと、金髪店員の元へ急いだ。
        相手が聞き取れる保障がない、早口兼小声で『パワー自慢!デカチン君』
        を連呼していた。







夫婦の営みは、超巨砲バイブで……






















【第7話】


        
        「綾音、何してるの? さ、早く」

        吉貴がベッドの中から綾音を呼んだ。
        仰向けだった身体を横にして、ベッドの中心線から左端にずらせると、
        被っていた毛布を持ち上げている。
        既にパジャマは脱いでいるのだろう。割れた腹筋と肺の形を浮き上がら
        せたような胸の筋肉が、その薄い毛布の隙間から覗いている。

        「うん、それなんだけどね……わたし、ちょっと……」

        綾音は上下ともしっかりとパジャマを身に着けた姿で、目線を宙に泳が
        せていた。
        吉貴が誘っているのに、両手を後ろに回したままベッドの脇に立ち尽く
        している。

        「ん? どうしたの綾音。もしかして、生理でもきちゃった?」

        「そうじゃないの。実はね……ふぅーっ……」

        煮え切らない妻の態度に、微かにだが吉貴の表情に不満の色が。
        その様子を目の端で気付いた綾音が、唇を動かし始めてから大げさに息
        を吐いた。
        そして、表情筋を引きつらせてまま不自然に笑って……

        「今夜はこれを使って欲しいなぁって思って……」

        綾音は背中に回していた両手を吉貴の前に差し出していた。
        両の手のひらを上向きに拡げて、ピンク色をした丸みを帯びて長い物体
        をその上に乗せた状態で。

        「これって、その……バイブだよね。これを綾音が?」

        「そう、前からちょっと興味があって……思い切って買っちゃった♪」

        「ふ~ん、そうなんだ。でも、このバイブってさ。ちょっとデカすぎな
        いか? 太さだって、缶ジュースの直径くらい有りそうだし、長さだっ
        てほら、俺の息子の2倍はあるよね」

        吉貴が指摘するのも無理はなかった。
        バイブが収まっていたケースには、こうキャッチコピーが記されていた
        のだ。

        『出産経験のあるマダムも大満足!! 直径50ミリ、チン長250ミ
        リの超巨砲が、貴女の秘処に愛の囁きを!!』

        出産経験?! 超巨砲?! ついでに、愛の囁き!!
        金髪店員が店の奥から持ってきたモノを、綾音はひったくるようにして
        購入したのだ。
        店員がチラチラと彼女を見ながら梱包する間も、料金を支払いする間も、
        目を逸らせて店の外に向けて、バッグにそれを押し込むと脇目も振らず
        にマンションへ直行したのである。
        そして夕暮れのリビングで、その物体を初めて目にした綾音は目眩を起
        こしかけていた。
        長さに、太さに、そのパッケージのキャッチコピーに……

        (先輩のアドバイスに従って買ったのに、どうして? こんなバイブを
        使ったりしたら、綾音のアソコが壊れちゃうかも?! わたし、赤ちゃ
        んは欲しいけど、まだ妊娠だってしていないのに……)

        吉貴に愛してもらいたい一心で手に入れた道具を見つめて、綾音は悩み
        続けていた。
        夕食用に買ってきた食材に手を付けずに、圧倒的な存在感を見せつける
        バイブをじっと眺めて、日が暮れて部屋の中が真っ暗になっても、じっ
        とそのままの姿勢で。
        2時間経って、3時間経って……夕食が手作り料理から3分クッキング
        のインスタントに変更されて、ようやく決意した。
        手を伸ばしてバイブを掴んで、ずしりとした重さを体感しながら、「うん」
        と声に出して頷いていた。
        キャビネットの中から優しく微笑んでくれる吉貴の写真に、綾音も微笑
        み返していた。

        (『パワー自慢!デカチン君』よろしくね。夫婦の営みは、アナタにかか
        っているんだからね)



        綾音は吉貴にバイブを手渡すと、パジャマを脱いでいく。
        天井から降り注ぐ仄かな明りの下で、パンティー1枚を残しただけの均
        整のとれたボディーが露わにされる。

        「吉貴、ショーツを脱がせてくれる?」

        ベッドの上でバイブと戯れている吉貴に綾音はそうお願いすると、自分
        もベッドの上に這い上っていた。
        仰向けに寝転び、夫がパンティーを脱がせやすいようにと腰を持ち上げ
        る。

        成熟したヒップをシーツから僅かに浮かせると、その隙間を縫うように
        吉貴の指が柔らかい布地を巻き付けて下りていく。
        スルスルとした感触が太股からふくらはぎへと通過する。
        やがて右足左足の順でツマ先が持ち上げられて、その布切れは引き抜か
        れていた。

        それは、いつもの光景だった。
        二人の結婚生活が馴染んだ頃から続いている、夫婦の営みの始まりの儀
        式である。

        「綾音、本当にこれを使っていいんだな?」

        「うん、吉貴お願い。でも、一気に入れないでね。まだ綾音のアソコ、
        準備ができてないから」

        けれども二人の会話が、いつもの光景に別れを告げさせる。
        綾音は自分の言葉を証明するように、仰向けのまま膝を折り曲げると太
        股を開いていた。
        それを見た吉貴は、バイブを手にしたまま彼女の足元へ移動し、拡げら
        れた股のスペースに自分の身体を滑り込ませていく。

        「バイブのスイッチを入れてみて」

        綾音の擦れた声が、寝室に響いた。
        吉貴は薄明りの中でスイッチらしきものを探ると、そのレバーに指を乗
        せる。
        呼吸を止めたまま、そのレバーをスライドさせる。

        カチッ……ブーン、ブーン、ブーン……

        低周波な音を鳴らせてバイブが唸り声をあげた。
        ビリビリとした振動が、グリップを握り締めた吉貴の手にも伝染する。

        「そのバイブね、ブルブル振動と、クネクネ運動の2種類を選べるよう
        になっているの」

        「そうなんだ、説明書をちゃんと読んだんだね」

        「うん、まあね。バイブを使うのってわたしも初めてだから……」

        天井に向かって話す綾音の声が、消え入りそうなほど小さくなる。
        膝を立てて開いた太股が、まだバイブを宛がってもいないのに、ブルブ
        ルと震えだしている。

        吉貴はバイブを握り直すと、太股の付け根へと視線を走らせていた。
        歪みのない小判型をした女の部分をじっと見つめて……
        その盛り上がった肉塊に刻まれた赤い亀裂に、視線のすべてを集中させ
        て……

        「綾音、いくよ」

        彼女に負けないほど小声で囁いていた。
        低いモーター音を響かせるバイブの先端を、花弁の中心に押し付けてい
        った。







綾音がイクところを、ちゃんと見ててね♪






















【第8話】


        
        「ひゃぁっ! すごい……アソコがぁ、ビリビリしてるぅっ……は、あ
        ぁぁっ」

        ペニスを模した先端にサーモンピンクの恥肉をなぞられ、綾音は甘い声
        で鳴かされた。
        バイブを握り締めた吉貴が腕を上下に振るたびに、太股がガクガクと揺
        れる。
        電気信号が送られたように、シーツの上でお尻がもぞもぞと震える。

        「もう、濡れてきた。やっぱりバイブだと早いね。エッチなお汁がほら、
        割れ目から溢れてきてるよ」

        「はっ、はあ……いやぁ、恥ずかしい。そんなこと言わないでよ」

        指で2、3分の愛撫と、振動するバイブの2、3分の愛撫では、比較に
        などならない。
        いつも同じ角度から指を差し込んで、割れ目を往復させるだけの味気な
        い吉貴の指とは違う。
        花弁を割り拡げるように沈んだバイブが、秒速の振動で恥肉を揺さぶる
        のである。
        経験したことのない刺激に、これだけで綾音の心が白く濁り始めていた。

        「そろそろOKかな。オマ○コもびしょ濡れだし」

        「んん、はあぁぁ……いいわよ、吉貴。バイブを入れてみて。でも、そ
        っとよ、ゆっくりね」

        「ああ、任せてよ。ちゃんと挿入してあげるからさ」

        吉貴はバイブのスイッチを切ると、模造ペニスと化した先端部分を綾音
        の膣口に当てた。
        肉唇を左手の指で拡げながら、ゆっくりと慎重に挿入を開始する。

        ズズッ……ズニュ、ズニュ、ズニュ……ズズズッ……

        「はぁぁ、入って……くるぅっ! 綾音のなかに入ってぇきちゃうぅぅ
        っっっ!」

        ジュース缶を思わせる極太バイブが、膣壁をこじ開けるように侵入する。
        デリケートな粘膜を内側へと巻き込みながら、膣奥を目指して狭い軌道
        を拡張していく。

        念入りなバイブの愛撫に、綾音のヴァギナは充分に濡らされていた。
        けれども、標準型のペニスしか受け入れたことのない綾音にとっては、
        未知の恐怖との戦いであった。

        「大丈夫かい? 綾音。苦しかったら、抜いてあげるけど」

        「へ、平気よ。全然、大丈夫だから。だって、ここの通路って赤ちゃん
        の通り道なんだよ。い、今から這い這いできるように拡げてあげないと」

        (そうよ。綾音は怖がったりしたらいけないの。わたしは、『パワー自慢!
        デカチン君』を悦んだ顔をして受け入れないといけないの。だって分か
        るもん。吉貴が興奮しているのが。バイブを押し込む手が震えてそれが
        伝わって、綾音のアソコも震えているから。全然怯えているわけじゃな
        いのに)

        「もう少し……あと……少しで……入ったぁ! こんなに太かったのに、
        バイブが綾音のオマ○コの中にすっぽりと入ったよ! 分かるかい? 
        綾音」

        反発する肉の抵抗を押し退けて、バイブが根元まで挿入される。
        立て膝をした綾音の股間に顔を突っ込んだまま、吉貴が声を裏返して叫
        んでいた。

        「んくっ、は、入ったんだね。うん、わかるよ、バイブがぁ、子宮の扉
        に当てってるから……はあぁぁ」

        綾音も声を裏返していた。
        まるで巨大な杭にお腹を貫かれたような、今までに経験したことのない
        感触に。
        内臓を丸ごと押し上げられたような、人のペニスとは段違いな存在感に。

        これが気持ちいいのか?
        それとも苦痛なだけなのか?
        2年間、人妻として生きてきた綾音にも判断できなかった。
        ただ身体の芯をじわじわと侵食する熱いモノが、その答えを前者だと教
        えてくれているような気がする。

        (そうなの。『パワー自慢!デカチン君』は、吉貴のオチ○チン君なの。
        綾音は今、あの人と繋がっているの。セックスしようとしているの。だ
        から……)

        「ね、ねぇ吉貴。バ、バイブのスイッチを入れて……今度はクネクネ運
        動で……お願い」

        綾音は薄暗い天井を見上げたまま唇を開いていた。
        これから始まる想像もつかない刺激に、心を大げさに怯えさせて。身体
        でほんのちょっぴり期待して。

        「えっ、綾音いいの? スイッチを入れても」

        相変わらず声が裏返ったまま、吉貴が聞き返してきた。
        息苦しさを我慢して、綾音は首だけを持ち上げてみせる。

        「んん、はぁっ……だって、このままだと……気持ちよく、なれないも
        の。さ、遠慮しないで」

        「あ、ああ。それじゃ……」

        愛する妻に促されて、愛する夫の指がスイッチに触れた。
        それでもちらっと綾音を覗って、また彼女に頷かれて、その指が力強く
        スイッチをスライドさせる。
        その指の力強さが伝わったように、バイブに内蔵されたモーターが力強
        い音を立てる。

        カチッ……ヴィィーン、ヴィィーン、ヴィィーン……

        「んんっ、はあぁぁんんっっ、お腹がぁっ! お腹の中でぇっ……バイ
        ブ、暴れてぇっ……んはっ」

        綾音は仰向けのまま背中を仰け反らせていた。
        ブリッジするように背骨を湾曲させて、完熟した双乳をプルンプルンと
        揺らせた。

        ぐちゅ、ぐちゅ……ぐにゅ、にゅちょ、にゅちょ……

        吉貴の目の前で、くるくると円を描くように回転するピンク色のグリッ
        プ。
        それが、限界にまで拡がったサーモンピンクの亀裂を、歪な形に変形さ
        せながら掻き回していく。

        「ふうぅぅ、んんっ……あっ、ひゃぁっ!」

        綾音が半開きにした唇から、言葉にならない声を吐いた。
        隙間なく密着した膣壁が、バイブの踊りに合わせてゴムのように引き伸
        ばされていたのだ。
        続けて、折り曲げていた膝関節がグラグラと揺れると、脱力したように
        解放される。
        その瞬間、伸ばされた粘膜から湧き出た愛液が、搾りたての生ジュース
        のように亀裂の間を縫って溢れ出してくる。

        「綾音……綾音ぇっ!」

        吉貴が興奮とも悲痛とも取れる声で、名前を呼んだ。

        「あふん……んあっ! 感じるぅっ、気持ちいい、気持ちいいのぉっ!
        バイブが膣をグリグリしてぇ……はあ、はっ、いいのぉっ!」

        朦朧としてきた綾音の意識に代わって、淫らな女を買って出たもう一人
        の綾音が舌を突き出しながら吠えた。

        (先輩、これで良かったのかな? 『パワー自慢!デカチン君』が、夜
        の主役でホントに正しかったのかな?)

        「イク、イク、イクぅっ……綾音ぇっ、バイブでぇ……いいっ、イッち
        ゃうぅぅっっ!!」

        呆然とする吉貴の前で、
        綾音は結婚以来初めての絶頂シーンを見せつけていた。







綾音って、おっちょこちょいだったんですね?






















【第9話】


        
        それからまた1週間が経過して……

        ピンポーン♪♪ ピンポーン♪♪

        「ヤッホー綾音。うまく、やってるかな?」

        いつものように、ショートケーキを手にした美和が綾音を訪ねてきた。
        だが今回に限っては、フライト時間が目前に迫っているのだろう。
        普段着に合わせたナチュラルメイクとは違う、アイラインの際立った
        CA用のメイクが施されていた。

        「それで、結果はどんな感じ? 吉貴さんとは深~く愛し合えるように
        なったかしら?」

        「それが……そのぉ……」

        リビングに入るなり、目を輝かせて作戦の効果を訊いてくる美和に、綾
        音が煮え切らない態度で応じた。

        「もぉ、じれったいわね。私がアドバイスしてあげたバイブで、エッチ
        してもらったんでしょ?」

        「はい……1度だけですけど……」

        「1度って? 綾音はあのバイブを1回しか試さなかったの? もしか
        して、あのバイブ、気持ちよくなかった? 私、ずっとアレを愛用して
        いるんだけど。可愛らしいし、膣にもピッタリとフィットするしね」

        「う~ん、膣にピッタリフィットですよね? あのぉ、ですね。先輩っ
        て赤ちゃんを産んだこと……ないですよね?」

        綾音はショートケーキをお皿に乗せながら、美和に上目遣いの目線を送
        った。

        「当たり前でしょ! でも、そんなことを、どうして訊くのよ?」

        「実はですね。先輩にアドバイスしてもらった、このバイブなんですけ
        ど」

        後輩の言っている意味が分からずにキョトンとする美和を置き去りにし
        て、綾音は寝室に向かうと、プラスチック製のパッケージに収まった例
        のバイブを持ち出してきた。
        それを、テーブルの端っこすれすれに置いた。

        「なんなのよ、この巨大バイブは? え~っと『パワー自慢!デカチン
        君』って……?」

        パッケージの印字を棒読みにして、美和の頭上にクエスチョンマークが
        並んだ。
        ピンク色をした物体と綾音の股間を交互に見比べて、頭上のクエスチョ
        ンマークの数を次第に増やしていく。

        「私がアドバイスしたのは『パワー自慢!デコチン君』よ。『デカ』では
        なくて『デコ』の方。これよ、標準ボディだけどエラの処だけ自己主張
        した可愛い子ちゃん」

        「デカチン君ではなくて、デコチン君……ですか。わたしって、聞き間
        違えてたんですね。あ、はははは」

        親子ほど差のある2本のバイブを見比べて、綾音は涙を浮かべて笑った。
        普段からバイブを持ち歩いている美和への驚きも忘れて、吉貴のペニス
        と同型のバイブを寂しく撫で続けている。

        「あなたって、しっかりしている様に見えて、意外とおっちょこちょい
        なのね。それとも吉貴さんとのセックスでオツムの中が満杯なのかな? 
        でも、どうだったの『パワー自慢!デカチン君』の使い心地って? こ
        んな太いので膣を掻き回してもらったら、やっぱり感じたでしょ。吉貴
        さんの前で絶頂できたんでしょ?」

        「ま、まあ……そうですけど……」

        「だったら良かったじゃない。でも、それだったらどうして使うのを止
        めちゃったのよ。せっかく買ったバイブが勿体ないじゃない」

        相変わらず歯切れの悪い綾音に、首を傾げて両腕を拡げた美和が『分か
        りませんポーズ』を決める。
        そして、テーブルの端で肩身を狭くしている『パワー自慢!デカチン君』
        に潤んだ目線を送った。

        「そうなんです。先輩の言う通りなんですけど、わたし、気付いたんで
        す。綾音がバイブで気持ちよくなったら、吉貴が哀しそうにするって。
        その……オチ○チンを相手にしてもらえないから」

        綾音は、「ふうーっ」とやるせない溜息を吐くと、美和の潤んだ目線を押
        し退けるように、自分も『パワー自慢!デカチン君』を見つめた。

        「そうよねぇ、男って人種は意外とナイーブな心をしているのよねぇ。
        それで綾音は、バイブを使うのを止めちゃったんだ? でも、それだっ
        たらオナニーをこっそりってわけ?」

        「……はい。でも仕方ないですから」

        「あらら、もう諦めちゃうわけ? これから何十年も夜の営みを続けな
        いといけないのよ、綾音は吉貴さんと。それなのにアナタはずっと、オ
        ナニーで性欲を解消するわけ? そんなの夫婦として不健全よ」

        「だけど、他に方法なんて……」

        綾音はバイブから目を外すと表情を暗くする。
        彼女が口にした『不健全』という単語が響いたのか、ケーキに伸び掛け
        た右手が膝の上に舞い戻っている。

        「綾音、落ち込んじゃダメ。方法なら他にも有るんだから」

        「もう、有りませんよ。そんなの」

        美和は、涙目のまま、ほっぺたを膨らませる綾音をじっと見つめた。
        それまでの柔らかかった顔付きを、キュッと引き締めると彼女の腕を掴
        んだ。

        「それが有るのよ、綾音。淡白な男のセックスを一変させる方法が。だ
        から立って。こっちへ来て。ケーキなんか、後で食べればいいから」

        「ち、ちょっと先輩。どうしたんです?」

        ここがまるで自分のマンションであるかのように、美和は綾音の手を引
        いて寝室へと向かった。
        もちろん、吉貴と綾音の寝室へである。
        そして、ドアを閉めると彼女は身に着けた服を脱ぎ始めたのだ。
        抗議するのも忘れて唖然とする綾音の前で、セクシーすぎるシースルー
        の下着姿を露わにする。

        「ほら、綾音も脱ぐのよ。女どうしなんだから恥ずかしくないでしょ」

        美和はそう言うと、下着にも指を掛けた。
        吉貴が眠っていたベッドに見せつけるようにして、ブラジャーを外すと
        パンティーを足首から引き抜いていた。
        まるで機内サービスでもするかのように、全裸のままで優雅なポーズを
        決めてみせる。

        「綾音、ブラとショーツもよ。さ、早く」

        「あぁっ、はぁ、はい……」

        綾音もまた、美和にせっつかれるようにして、大人っぽいレース仕立て
        のランジェリーをブラジャー、パンティーの順に肌から引き離していた。
        吉貴が不在の寝室にも関わらず、愛される下準備を思わせる可憐な素肌
        を余すことなく晒していたのだ。