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夫婦の営みは、超巨砲バイブで……






















【第7話】


        
        「綾音、何してるの? さ、早く」

        吉貴がベッドの中から綾音を呼んだ。
        仰向けだった身体を横にして、ベッドの中心線から左端にずらせると、
        被っていた毛布を持ち上げている。
        既にパジャマは脱いでいるのだろう。割れた腹筋と肺の形を浮き上がら
        せたような胸の筋肉が、その薄い毛布の隙間から覗いている。

        「うん、それなんだけどね……わたし、ちょっと……」

        綾音は上下ともしっかりとパジャマを身に着けた姿で、目線を宙に泳が
        せていた。
        吉貴が誘っているのに、両手を後ろに回したままベッドの脇に立ち尽く
        している。

        「ん? どうしたの綾音。もしかして、生理でもきちゃった?」

        「そうじゃないの。実はね……ふぅーっ……」

        煮え切らない妻の態度に、微かにだが吉貴の表情に不満の色が。
        その様子を目の端で気付いた綾音が、唇を動かし始めてから大げさに息
        を吐いた。
        そして、表情筋を引きつらせてまま不自然に笑って……

        「今夜はこれを使って欲しいなぁって思って……」

        綾音は背中に回していた両手を吉貴の前に差し出していた。
        両の手のひらを上向きに拡げて、ピンク色をした丸みを帯びて長い物体
        をその上に乗せた状態で。

        「これって、その……バイブだよね。これを綾音が?」

        「そう、前からちょっと興味があって……思い切って買っちゃった♪」

        「ふ~ん、そうなんだ。でも、このバイブってさ。ちょっとデカすぎな
        いか? 太さだって、缶ジュースの直径くらい有りそうだし、長さだっ
        てほら、俺の息子の2倍はあるよね」

        吉貴が指摘するのも無理はなかった。
        バイブが収まっていたケースには、こうキャッチコピーが記されていた
        のだ。

        『出産経験のあるマダムも大満足!! 直径50ミリ、チン長250ミ
        リの超巨砲が、貴女の秘処に愛の囁きを!!』

        出産経験?! 超巨砲?! ついでに、愛の囁き!!
        金髪店員が店の奥から持ってきたモノを、綾音はひったくるようにして
        購入したのだ。
        店員がチラチラと彼女を見ながら梱包する間も、料金を支払いする間も、
        目を逸らせて店の外に向けて、バッグにそれを押し込むと脇目も振らず
        にマンションへ直行したのである。
        そして夕暮れのリビングで、その物体を初めて目にした綾音は目眩を起
        こしかけていた。
        長さに、太さに、そのパッケージのキャッチコピーに……

        (先輩のアドバイスに従って買ったのに、どうして? こんなバイブを
        使ったりしたら、綾音のアソコが壊れちゃうかも?! わたし、赤ちゃ
        んは欲しいけど、まだ妊娠だってしていないのに……)

        吉貴に愛してもらいたい一心で手に入れた道具を見つめて、綾音は悩み
        続けていた。
        夕食用に買ってきた食材に手を付けずに、圧倒的な存在感を見せつける
        バイブをじっと眺めて、日が暮れて部屋の中が真っ暗になっても、じっ
        とそのままの姿勢で。
        2時間経って、3時間経って……夕食が手作り料理から3分クッキング
        のインスタントに変更されて、ようやく決意した。
        手を伸ばしてバイブを掴んで、ずしりとした重さを体感しながら、「うん」
        と声に出して頷いていた。
        キャビネットの中から優しく微笑んでくれる吉貴の写真に、綾音も微笑
        み返していた。

        (『パワー自慢!デカチン君』よろしくね。夫婦の営みは、アナタにかか
        っているんだからね)



        綾音は吉貴にバイブを手渡すと、パジャマを脱いでいく。
        天井から降り注ぐ仄かな明りの下で、パンティー1枚を残しただけの均
        整のとれたボディーが露わにされる。

        「吉貴、ショーツを脱がせてくれる?」

        ベッドの上でバイブと戯れている吉貴に綾音はそうお願いすると、自分
        もベッドの上に這い上っていた。
        仰向けに寝転び、夫がパンティーを脱がせやすいようにと腰を持ち上げ
        る。

        成熟したヒップをシーツから僅かに浮かせると、その隙間を縫うように
        吉貴の指が柔らかい布地を巻き付けて下りていく。
        スルスルとした感触が太股からふくらはぎへと通過する。
        やがて右足左足の順でツマ先が持ち上げられて、その布切れは引き抜か
        れていた。

        それは、いつもの光景だった。
        二人の結婚生活が馴染んだ頃から続いている、夫婦の営みの始まりの儀
        式である。

        「綾音、本当にこれを使っていいんだな?」

        「うん、吉貴お願い。でも、一気に入れないでね。まだ綾音のアソコ、
        準備ができてないから」

        けれども二人の会話が、いつもの光景に別れを告げさせる。
        綾音は自分の言葉を証明するように、仰向けのまま膝を折り曲げると太
        股を開いていた。
        それを見た吉貴は、バイブを手にしたまま彼女の足元へ移動し、拡げら
        れた股のスペースに自分の身体を滑り込ませていく。

        「バイブのスイッチを入れてみて」

        綾音の擦れた声が、寝室に響いた。
        吉貴は薄明りの中でスイッチらしきものを探ると、そのレバーに指を乗
        せる。
        呼吸を止めたまま、そのレバーをスライドさせる。

        カチッ……ブーン、ブーン、ブーン……

        低周波な音を鳴らせてバイブが唸り声をあげた。
        ビリビリとした振動が、グリップを握り締めた吉貴の手にも伝染する。

        「そのバイブね、ブルブル振動と、クネクネ運動の2種類を選べるよう
        になっているの」

        「そうなんだ、説明書をちゃんと読んだんだね」

        「うん、まあね。バイブを使うのってわたしも初めてだから……」

        天井に向かって話す綾音の声が、消え入りそうなほど小さくなる。
        膝を立てて開いた太股が、まだバイブを宛がってもいないのに、ブルブ
        ルと震えだしている。

        吉貴はバイブを握り直すと、太股の付け根へと視線を走らせていた。
        歪みのない小判型をした女の部分をじっと見つめて……
        その盛り上がった肉塊に刻まれた赤い亀裂に、視線のすべてを集中させ
        て……

        「綾音、いくよ」

        彼女に負けないほど小声で囁いていた。
        低いモーター音を響かせるバイブの先端を、花弁の中心に押し付けてい
        った。