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エスカレーターの狭間で…… 第1話  それは、偶然の透けパン

























【第1話】



それは、いつもと変わらない平日の昼下がりのこと。

貴重な昼休みを急な接客に追われた俺は、遅めの昼食を地下街で済ませ、職場へ戻ろうとしていた。
道幅4メートルほどの窓のない地下商店街を、地上へと続くエスカレーターに向かって歩いていく。

「早いもんだな。もうお節料理の予約かぁ」

小綺麗な料理屋のガラス窓には、朱塗りの重箱と色鮮やかな正月用料理のチラシ広告。
それを見て俺は、皮肉そうに口の端を歪めた。
続けて周囲を並行して歩く、白いワイシャツ姿の同僚サラリーマン諸君たちを眺めてみる。

商売というのは先手必勝が世の常だが、場を読むのも必要なのでは……?
俺なら買わん。

ただ、口があればチラシも言い返すかもしれない。
『その言葉、家族を持ってからにしろ』って……はい。仰る通りであります。



やがてエスカレーターが近づくにつれ、ムッとした空気が流れ込んでくる。
俺は首を締め付けるネクタイを緩めると、色褪せた赤い手すりに腕を乗せた。

ゆっくりと流れる視線。
そのはるか上、出口付近から射し込む真白い日差しに思わず目を細める。
そしてその光から逃れるように、並んで設置された階段へと視線を向けた。

ラッシュ時ではない。そのためか、幅2メートルほどの階段を利用する物好きは皆無に等しかった。
そんな中、淡い水色の作業着に身を包んだひとりの清掃員が目に留った。
制服と同色の前つば付きの帽子を深めにかぶり、手には自分の背丈くらいありそうなモップを握り締め、黙々とそれをローラーでも押すように動かしている。
帽子からはみ出た前髪が、流れる汗のせいで額に貼り付いている。
紅潮した頬。疲れを隠せない瞳。
それ以上に目を引くのは、細めの上半身に比べて発達した腰骨。要はムラムラしそうな尻肉ということだ。
女……だったのか?
顔を斜め下に向けた女性は、俺の期待をいい意味で裏切るほど若かった。
いや、まだあどけなさを残す少女のようにも見えた。
それに可愛い。こんな清掃員なんか辞めても、他にも色々行先があるくらいの美人だった。
だが、そのとき俺はあることに気が付いた。

おいおい、パンティが透けてるぜ。

顔に見惚れて一瞬の間しか残されていなかったが、間違いない。
ズボンの生地が薄いのか、肉付きのいい尻に、逆三角形の小さな布地が貼り付いている。
いや、肩甲骨の下あたりを横に走るブラの紐まで、くっきりと浮かび上がっている。

俺は過ぎ去る階段の上から、彼女の姿を見下ろしていた。

どうする?
もう一度拝みに行くか?
なんなら心にもないことだが、彼女に指摘してあげれば……?

俺の中で色んな声が飛び交い、取り敢えずという感覚で下りのエスカレーターにUターンする。
今度はじっくりと拝ませてもらうぜ。
さっきより2段ほど下った階段を、腰を曲げて掃除をする彼女を凝視する。
こっちに背中を向けるのをじっと待ちながら、首が斜め前から真横、斜め後ろと半円を描いて……見えた。彼女の透けパンが。

それにしても、露骨すぎやしないか。
透けてるってレベルじゃないよな。じっくり鑑賞しなくても気が付くって感じだしな。

「声だけでも掛けてみるか」

再び地下に降り立った俺は、2本のエスカレーターに挟まれた中州のような階段を上り始めた。
どうやら俺も、物好きな人間に仲間入りしたらしい。
いや、これはスケベ人間入門ってとこだな。

黙々と作業をする彼女を見つめながら、黙々と階段を上る俺。
だが手早くモップを操る彼女のお陰か、俺は10段ほど上った踊り場で、見て下さいとばかりに突き出された女の尻を目にすることができた。

「おとなしそうな顔をして……へえ~黒かぁ」

一言呟ける間を確信して、彼女の背中に話しかけてみる。
そして、モップが踊り場を掃除し始めるのを見計らって、今度は聞こえるように声を掛けた。

「あのぉ、すいません。ちょっと」

「あっ、はい。なんでしょう」

振り向いた彼女の声は、顔に違わず柔らかく幼げだった。
左胸にぶら下がっている大きめのバッジに目を走らせる。

『(有)コスモス・クリーニングス 大橋怜菜』

「大橋怜菜(おおはし れな)ちゃんかぁ、可愛いねぇ。で、何才なの?」

控えめを意識した口調と、想定していたのと違う質問に、彼女は怯えた表情をする。
たぶん、駅の改札口はどこか? とか、そういうのを思っていたんだろうなぁ。
不謹慎な利用者ですいません。

でも、もう少し遊ばせてもらうよ。怜菜ちゃん。
職場に戻ったところで、とうが立った女事務員のしけた顔しか待っていないもんでね。








エスカレーターの狭間で…… 第2話  恥辱ステージへの誘い

























【第2話】



「あ、あの……そういうのはちょっと……」

目尻がちょっと下向き加減の瞳が、困惑したように左右に泳ぎだしている。
俺は、階段を上る物好きがいないことを確認して、怜菜ちゃんの耳元で囁いた。

「いや、年を聞いたのは、まあ、冗談だけどさぁ。そのぉ、見えちゃってるよ。怜菜ちゃんのパンティ。ずばり、黒でしょ。ついでにブラジャーも」

「えっ?! や、やだぁっ、そんなぁっ!」

怜菜ちゃん、は1オクターブ高めの声をあげるとお尻に両手を当てた。
そのまま、エスカレーターと接している壁際まで飛ぶように移動した。

「その作業着、夏用だから生地が薄いんじゃないのかな? だから、ちょっと屈んだだけで透けちゃってるんだと思うけど」

「どうしよう? それじゃ私、ずっと……?」

俺は同情するように深く頷いて……

「たぶん怜菜ちゃんのパンティを、たくさんのおじさんたちが覗いていったと思うよ。まあ、俺もだけどね」

そう言うと、ピタリと閉じ合わされた彼女の股間を見下ろした。

「い、イヤッ、みないで。見ないでください」

ここが地下街の入り口だということも忘れて、怜菜ちゃんは大粒の涙を浮かべた。
その足元には、寂しそうにモップが転がっている。
それを健康オタクなのか、初老のカップルがジロリと睨んで俺を抜き去った。

まずいなぁ。このままだと俺が何かしたと勘違いされちまう。

「ま、まあ、恥ずかしいのは分かるけど、いつまでもこうしている訳にはいかないだろう? ところで怜菜ちゃんは、この仕事長いの?」

俺の問いに、彼女は首を大きく横に振った。

「いえ、今日が初めてなんです。大学の同級生が体調を崩しちゃって、取り敢えず私が代役で」

「ふーん、怜菜ちゃんは女子大生かぁ。で、その子とは仲がいいわけ?」

俺の問いに、また彼女は首を大きく横に振った。

「いえ、たまに挨拶を交わすくらいで」

「へえ、そうなんだ。だけど、どうしてそんなバイトを引き受けたりするの? そんなの放っておけばいいだろ」

「だめなんです、私。頼まれたら嫌と言えなくて」

おいおい、こんな絶滅危惧種がまだ存在してたとは……
俺は彼女に同情の顔を見せながら、舌舐めずりした。

「う~ん、どうしたもんか……? 他の色なら……でも白でも透け具合は一緒だし、まあ、Tバックならパンティラインが出ないとか聞いたことがあったような……」

「Tバックって、そんな……第一私、替えのパン……ううん、下着なんて持ってません」

涙声だった。
顔を真っ赤に染めた怜菜ちゃんが、半泣きの表情のまま俺を見上げている。
背中を壁に押し付けて、両手を股間の前でクロスさせて。

「でも参ったなぁ。俺だってお仕事で忙しいんだけどな。この付近にランジェリーショップなんてなかったと思うし、でもこのままだと怜菜ちゃん。恥ずかしくて仕事にならないでしょ?」

俺は難しそうな顔をして頭を掻いた。
前半の言葉はほとんどウソだが、後半は真実と俺のスケベ心が、新たな愉しみの伏線を仕掛けようとしている。

「どうする? どうせ怜菜ちゃん、アルバイトなんだし。だったらこんな仕事放り出して、隣の駅前までTバックのパンティを買いに行く? まあ、なんだかんだで2時間くらい掛るかもしれないけど」

「で、できませんっ! そんなお仕事を途中で放り出すなんて! それに、後30分くらいで見回りの人がチェックすることになっているんです」

案の定、怜菜ちゃんは喰い付いてきた。
そう、おとなしそうな割には、この子は責任感が強い。
これでも営業畑15年。こんな小娘の心理を読むなんて簡単簡単。

「だったらどうするかなぁ? まあ、下着を脱いじゃえば透けることもないだろうけど」

「えっ……下着を……ですか?」

怜菜ちゃんが哀しそうな顔で俺を見る。

「そう。ノーブラ、ノーパンで。ちょっと恥ずかしいかもしれないけど、これだったら、透け透けの黒いパンティとブラジャーを覗かれないで済むと思うけどね。それとも、恥ずかしいのを我慢してお仕事を続ける? まあ、おじさんたちはその方を応援するけど」

「い、イヤです! そんなの……でも下着無しなんて……」

声がしだいに小さく細くなっていく。
ここは一気に……

「あのさぁ、悩むのも分かるけど、時間は待ってくれないよ。玲奈ちゃん。どうするの? トイレならこの階段を下りた所にあるから」

指先までピンと伸ばして、階下にある女子トイレのマークを指し示す。
その指先を追うように、帽子の下の視線が後を追い掛けていく。

「……わかりました。脱いで……来ます」

観念したように、玲奈ちゃんが弱々しく呟いた。

「ごめんなさい、おじさん。背中、ガードしてくれますか?」

「ああ、いいとも」

モップを壁に立て掛けた彼女は階段を下りていく。
チラチラと後ろを気にしながら、両方の手のひらをお尻にあてがい、俺の視線さえシャットアウトする。

まあ、いいさ。お愉しみは後に取っておかないとな。
それに自分に降りかかった突然の不幸と、これから始まる更に恥辱的な行為を思えば、多少の同情もまたありかな。

俺はトイレの通路へと消えていく作業着の女の子を見送り、目の位置を上にした。
モップだけが取り残された踊り場と、それに続く階段。

ふふふっ。まるで宝塚の劇場みたいじゃないか。
ただし、恥辱のショータイムの場としてだが……








エスカレーターの狭間で…… 第3話  ノーパン・ノーブラでも頑張ります!

























【第3話】




「お待たせしました……」

10分後、怜菜ちゃんが姿を現した。
病人のように掠れた声で頭を下げると、俺の前にすっと移動した。

「あ、あぁ。脱いで……きました。透けていませんか?」

「えっ、う、うん。どうかな?」

水色の作業着が揺れている。
女の子らしい華奢な肩が震えて、女らしい張り出しを見せた腰も一緒になって震えて……
それをほくそ笑む俺の下半身は、ズボンの中で急速に硬化していく。

「う~ん。ちょっと見には分からないと思うけど……念のため屈んでもらえる? そこの空き缶入れを片付ける振りをしてたら、人目に付かないと思うし」

俺はエスカレーターの裏側に設置された自動販売機を指差した。
清掃をする作業員とドリンクを選んでいる客。
これなら、誰の目にも違和感なんて持たれないだろう。

「あ、えっ……? は、はい……わかりました」

彼女も納得したようだった。
小走りに自動販売機の元へ近寄ると、隣に置いてあるダストボックスの蓋を開ける。

「お願いします、おじさん。早く確認して」

つーんとした酸っぱい匂いが鼻をつく。
そんな空き缶が詰まった合成樹脂の箱を、水色の帽子が覗き込んでいた。いや、そのフリをしていた。

サイドの縁を両手で掴んで、背中を丸めながら腰を折り曲げた彼女。
その背後に立つ俺は、首を上から下へとゆっくりと移動させる。

肩甲骨の下あたりを横に走る黒い線は消滅していた。水色の生地には何も映っていない。
ブラジャーは、言われたとおりに外したみたいだった。

女性特有の頬ずりしたくなるヒップにも、逆三角形の黒いシルエットは浮かんでいない。
パンティもちゃんと脱いでいる。

要するに怜菜ちゃんは、ノーブラ、ノーパンってわけだ。
この薄手の作業着の下には、今は何も身に着けていない。

「あ、あぁぁ……大丈夫ですか? ……いやぁ、恥ずかしい」

身体の震えに連動するように、声も震えて泣いている。
それでも彼女は俺の答えを聞くまではと、腰を突き出したままじっと耐えている。

「うん、大丈夫だよ。背中にはなにも映っていない。でも……」

「で、でも……?」

「下の方はちょっとね。なんというかそのぉ~、怜菜ちゃんのお尻が割れ目のスジまで。ま、まあ、薄っすらとだけどね。よ~く観察しないと気が付かないレベルだから……たぶん……」

俺はわざと自信なさそうに答えた。
ついでに怜菜ちゃんには悪いが嘘もついた。

「た、たぶんって……? お尻が割れ目って……? ひっ、イヤァァァッ! 見ないでぇっ、おじさん、お願いだから見ないでっ」

案の定、彼女はバネのように身体を伸ばすと、背中を壁に貼り付けている。
右脇のポケットが大きく膨らんているのは、そこに脱ぎ立てのブラとパンティを収めているからに違いない。

「怜菜ちゃん、落ち着いて。見えるといったって、中心のラインがぼやけている程度だから。そう、お尻のお肉がほんのちょっと覗いているだけなんだよ。それに、いつまでもウォールフラワーごっこなんてしていられないだろう? ほら、あと20分で見回りの人が来ちゃうよ」

俺は腕時計に目を落としてみせる。
落としながら、首筋まで真っ赤にして羞恥に耐えている怜菜ちゃんを、さり気なく観察していた。

本当は尻なんか透けていない。もちろん割れ目もだ。
そう、全部おじさんの作り話さ。
でもこれで、もう少しの間愉しませてもらえそうだね。ふふふっ、怜菜ちゃん。

「ああ、いったいどうしたら? ううん、ダメ。やっぱり恥ずかしいよぉ」

恥を忍んで作業を続ける。
彼女にとって答えはそれしかないのはずなのに、さすがに最後の踏ん切りが付かないのだろう。
さっきから、ひとり首を振っては小さな溜息を連続的に吐き続けている。
それを不審そうに見下ろす、エスカレーターの利用者たち。

仕方ないなぁ、そろそろ恥辱のステージに上がってもらおうかな。

「おっ! いいことを思い付いた」

「おじさん……?」

俺はポンと握りこぶしで手のひらを叩いた。
我ながら白々しいと思ったが、やはり彼女は喰い付いてきた。
涙で真っ赤に腫れた瞳で、すがるように俺を見つめている。

「俺が、いや、おじさんが怜菜ちゃんの後ろに立っていてあげるよ。さっきみたいにガードしてね。その間に君は、残りの階段を掃除する。どうだい、これならお尻を覗かれることはないだろう? 安心して作業できると思うよ」

「あぁ、はい。ありがとうございます。それだったら……あの、我慢できます」

我慢? ああ、俺には尻を見られるってことか?
でもねぇ、怜菜ちゃん。それだけじゃないんだけどな。

「うん、そうかい。だったら早速始めようか?」

俺は怜菜ちゃんを先導するように踊り場に戻っていた。
モップで拭き掃除を始めた彼女の背後に、意味もなく立ちながら左右に移動していく。

「助かります、おじさん。これなら覗かれないで済みます」

「そう。それはよかったね。でもそれだったら、もう少し感謝して欲しいな。他の方法で……ね、怜菜ちゃん」

「他の方法……ですか?」

モップを片手に、怜菜ちゃんが上体だけをひねって振り返る。
その彼女に向かって、いやらしくほっぺたの右端を持ち上げて言ってあげた。

「うん、男であるおじさんが悦ぶ方法でね」








エスカレーターの狭間で…… 第4話  男の目を悦ばせるって……?

























【第4話】



「悦ぶってあの……男の人がですよね?」

1段下から見上げる少女の顔が強張っていく。
まだ潤ったままの瞳を大きくひらいて、細い眉毛がピクピクと数回痙攣した。

「あっ、勘違いしないで欲しいな。間違っても怜菜ちゃんと肉体関係を持ちたいとかじゃないんだ。ただ、この場で清掃をしながらでいいんだけど、僕の言うことに従って欲しいんだ」

「に、肉体関係って……! 言うことに従えって……! 私、おじさんのことを優しくていい人だと思っていたのに……」

「だからぁ、肉体関係はなしだって。怜菜ちゃんの身体にも指一本触れたりしない。服を脱げなんてことも言ったりしない。だから、ちょっとだけおじさんを愉しませてよ。これでも、仕事を犠牲にして君に付き合ってあげているんだからさ。ね、頼むよ」

俺は両手を合わせた。
仕事用の営業スマイルに猫撫で声。これでダメなら、仕事用の泣き落しか、その逆にちょっとばかし脅しってのも。

「でも……やっぱりイヤです。ごめんなさい……」

怜菜ちゃんも俺をマネして両手を合わせた。

う~ん、だめか。だったら最後の切り札、脅しでいくかな。
俺はそう決めると、口角から力を抜いて笑みを消した。

「お、おじさん?」

「だったら仕方ない。もう俺は協力しない。怜菜ちゃんひとりで、恥ずかしいお尻の狭間をみんなに見てもらいながら掃除するんだね」

声音も1オクターブ落としてみた。

「そんなぁ、困ります。おじさん以外にも覗かれるなんて」

「だろうねぇ。若い女の子が、見ず知らずのおじさんたちにお尻を見られるのって辛いよね。でもねぇ、残念だけど俺も仲間入りさせてもらおうかな? こんな風にね」

「な、なにを……なにしてるんですか?!」

踊り場でしゃがみ込み、両方の手のひらであごを支える俺に、怜菜ちゃんは狼狽した。
その両サイドのエスカレーターからは、事情を知らない無数の視線がふたりに向けて降り注いでくる。

「あ、ああ。やっ、ど、どう……お、おじ……さん?」

ちぎり絵にされた単語しか、怜菜ちゃんは発せない。
再びモップを手放した両腕が、後ろにまわりお尻の上を何度もかすめた。
でも、露骨に隠すべきかどうか迷っているみたいだった。

俺は無言を貫いた。
ただ、じっと眼尻を下げたエッチな視線を彼女に送り続けた。

落ちる。もう少しだ。もう少しで……落ちろ。堕ちろ。堕ちるんだ!

「わ、わかりました……ううぅっ、従います……」

涙声がした。逃げ場を失った妖精がその身を晒した。

堕ちた?!

俺はゆっくり立ち上がると、彼女の背中に貼り付いていた。同時に囁いていた。

「その言葉、ウソじゃないよね」

怜菜ちゃんは返事の代わりに頷いた。
深く大きくゆっくり。そして悔しいのか辛いのか、羽をもがれた妖精の背中は震えていた。



「怜菜ちゃんってさ、パンチラ覚悟の超ミニのスカートで登校したことは?」

「ないです」

「それじゃあ、下着なしで外出したことってあるのかな?」

「ありません」

俺の質問に怜菜ちゃんは淡々と答えていく。
感情を露にしたら負けという感じで、目深にかぶった帽子を更に引き伸ばして、視線を合わせようとはしてくれない。

「ふ~ん。だったらさ、どんな感じかな。生まれて初めてのノーブラ・ノーパンって?」

「……うっ、恥ずかしいです。ただそれだけです」

踊り場から2段下がった所で、モップの動きが止まりかける。
俺は続けて質問をぶつけた。

「だよね。下着なしって恥ずかしいよね。でもそれ以外にも何かあるんじゃないの? ほら、乳首だって作業着の裏地に擦れちゃうし、むき出しの割れ目だって股布のところに当たっているし。なんか変な気分になってくるとか? ふふっ」

「あ、ありません! そんな……恥ずかしい。それだけです」

上体だけひねった怜菜ちゃんが、キッとした目で睨みつけてきた。

「おっ。いいねぇ、その目。ゾクゾクするねぇ。ところで怜菜ちゃんは、脱いだ下着をどうしたの? トイレのごみ箱にでも捨てちゃったのかな?」

問い掛けながらも、俺の目は膨らんだ上着のポケットを見つめた。
それに感づいた彼女の右手がポケットを隠した。

「捨てません。でも……言えません」

「ということは、持ってるってことだよね。ブラジャーとパンティ?」

語尾の単語だけ強調した。
その脅しが効いたのか、怜菜ちゃんがコクリと頷いた。

「じゃあさぁ、怜菜ちゃんのブラジャーとパンティを、おじさんが預かってあげる」

「そ、そんな……」

一瞬キョトンとして、内容を理解した途端、羞恥色に顔を染めた怜菜ちゃんが声を震わせた。

「できないの? ふふっ、そんなことないよねぇ、さっき『従います』って約束してくれたものね」

俺もなかなかの鬼畜だ。
エロ小説並みのセリフで、こんな無垢な少女を恥じらわせるんだからな。

「早くしないと、時間なくなっちゃうよ」

突き出した腕時計を彼女の顔の前に晒した。ちょいちょいと動かしてみせた。

「わかりました。あ、預けます」

押し殺した哀しい声だった。
そしてなぜなのか? 瞬間目線を上向けてから辛そうに俯いた。








エスカレーターの狭間で…… 第5話 ランジェリーの秘密

























【第5話】



「……うぅ」

「ほら、なにしてるの。早く怜菜ちゃんの脱ぎ立ての下着を握らせてよ」

再び前を向いた彼女の脇に、俺は腕を伸ばした。
その手が、右ポケットに半分突っ込まれた細い手首に触れた。

もぞもぞとポケットをまさぐる怜菜ちゃん。
やがて、人目に晒す時間を最小にしたいのか、ボール状に丸めた布きれをふたつに分けて俺に握らせた。

「は、早く。早くしまって下さい!」

切羽詰った声を怜菜ちゃんがあげる。
俺は、そんな恥辱に悶える彼女に悦を感じながら、黒いふたつのボールを手のひらで弄んだ。

「ふふっ、なんかズシッてくるね。汗が沁み込んでいるのかな。それとも小さいボールは、他の液かな。いやらしいお汁とか」

「ち、違いますっ! 私、そんなハシタナイこと。それよりも、いつまで見ているんですか? 早くポケットの中へ。あ、あぁ、見られちゃう」

水色の帽子が何度も左右に揺れた。
エスカレーターを上り下りする利用者へ、視線を走らせているのだろうか。
でも自分が差し出したモノを見るのは抵抗があるのか、後ろを振り返ろうとはしない。

「大丈夫さ。バレやしないよ。それよりも、怜菜ちゃんは真っすぐ前を向いて、モップを動かしておけばいいのさ」

俺は事もなげにそう言うと、大きなボールから解体を始めた。

「へえ~、怜菜ちゃんって着痩せするタイプなんだね。バストはいくらあるの?」

「は、82……です」

これ以上逆らうのは得策ではないと判断したのか、素直に応える怜菜ちゃん。
俺は乳房を包むパッドの手触りを愉しみながら、尚も質問を続けた。

「ついでだから教えてよ。あとのサイズも」

「え、えっと……ウエストは55。ひ、ヒップは83……です」

「おっ、パーフェクトなプロポーションだね。そっかぁ、ヒップは83もあるのか。このちっちゃなパンティが、怜菜ちゃんの大きなお尻を包んでいたんだね」

水色のズボンと共に震える上向きのお尻。
俺はチラチラとそれを観察しながら、ブラジャーを上着のポケットに納めた。
続けて、小さなボールを拡げる。

「いやぁ……見ないで……」

俺がなにをしているのか分かるのか、怜菜ちゃんがこっちを見ないまま懇願する。
肩をガクガクさせて、全身を身悶えさせて立ち尽くしている。

いいねぇ、その声。その立ち姿。
でもおじさんには聞こえないし、見えないんだよね。
見えているのは唯一……!

俺は美少女のパンティをいっぱいに引き延ばした。
視線が当然のようにクロッチの中心、恥ずかしい縦じわに集中する。

「ふふふっ、怜菜ちゃんのパンティ、汚れているよ」

照明にかざさないとよく見えない。
でも確かに黒い生地の真ん中に、うっすらと沁みのようなモノが縦に並んでいる。

「ううぅっ、見ないで、許して、もうお願い……」

怜菜ちゃんが半泣きの声で懇願する。
震えも止まらなくなっている。
肩だけじゃない。全身を小刻みに揺らせては、耐えるようにモップを握り締めている。
10本の指だってほら、血の気を失い真っ白に。

俺は張り詰めた自分の下腹部を撫でていた。
卑怯にも、女の子を盾にして己の性欲を満たそうとしていた。

「でも、どうして怜菜ちゃんは黒色のパンティなんか穿いてきたんだい? 君の雰囲気だと、もっと淡い色がお似合いだとおじさんは思うけどな」

下着が全てポケットに収まったことを確認すると、怜菜ちゃんは清掃を始めた。
踊り場から10段目、9段目と手際よくモップを動かし、残り8段まで片付けていた。

「私だって普段はあまり穿きません。こういう色は……」

「じゃあ、今日に限ってどうして?」

さっきの下着観察のインパクトが大きかったのか、その後の怜菜ちゃんは、少々際どい質問にも気にせずに答えてくれた。

「アドバイスされたんです。その子に」

「ああ、君にバイトを押し付けた同級生だね」

怜菜ちゃんは横に移動しながら、同意するように頷いた。

「バイトと言ったってお仕事をするんだから、気を引き締めないといけないって。そのためには、下着の色も……その勝負下着というか、黒色が一番だって、彼女が勧めてくれて……」

「それで身に着けていたってわけだ。はあ~」

あきれて声を失いかけた。
これは絶滅危惧種以上の新種かもしれない。
今どきここまでバカ正直で、人を疑わない人類に遭遇するとは……

たぶんその同級生は、怜菜ちゃんをからかいたかったのだろう。
いや、こんな下着で作業をすれば、間違いなく彼女の透け透けのブラとパンティを大衆に晒すことになる。

もしかしたら、可愛い怜菜ちゃんに対する嫉妬?
そうだな、仕打ちの悪質さからみてその線が濃厚だな。

ふふ、だとしたらちょっと面白いことを思い付いたぞ。

俺は怜菜ちゃんに付きまといながら、視野いっぱいに黒眼を走らせた。
前方も後方も、当然左右にも。

そして、いた! 見つけた!

階段の最上段に佇む小柄な人影。
そこから彼女は、俺たちの行為を覗いていたに違いない。
俺のようなスケベなオヤジに、怜菜ちゃんが弄ばれるのを……