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エスカレーターの狭間で…… 第4話  男の目を悦ばせるって……?

























【第4話】



「悦ぶってあの……男の人がですよね?」

1段下から見上げる少女の顔が強張っていく。
まだ潤ったままの瞳を大きくひらいて、細い眉毛がピクピクと数回痙攣した。

「あっ、勘違いしないで欲しいな。間違っても怜菜ちゃんと肉体関係を持ちたいとかじゃないんだ。ただ、この場で清掃をしながらでいいんだけど、僕の言うことに従って欲しいんだ」

「に、肉体関係って……! 言うことに従えって……! 私、おじさんのことを優しくていい人だと思っていたのに……」

「だからぁ、肉体関係はなしだって。怜菜ちゃんの身体にも指一本触れたりしない。服を脱げなんてことも言ったりしない。だから、ちょっとだけおじさんを愉しませてよ。これでも、仕事を犠牲にして君に付き合ってあげているんだからさ。ね、頼むよ」

俺は両手を合わせた。
仕事用の営業スマイルに猫撫で声。これでダメなら、仕事用の泣き落しか、その逆にちょっとばかし脅しってのも。

「でも……やっぱりイヤです。ごめんなさい……」

怜菜ちゃんも俺をマネして両手を合わせた。

う~ん、だめか。だったら最後の切り札、脅しでいくかな。
俺はそう決めると、口角から力を抜いて笑みを消した。

「お、おじさん?」

「だったら仕方ない。もう俺は協力しない。怜菜ちゃんひとりで、恥ずかしいお尻の狭間をみんなに見てもらいながら掃除するんだね」

声音も1オクターブ落としてみた。

「そんなぁ、困ります。おじさん以外にも覗かれるなんて」

「だろうねぇ。若い女の子が、見ず知らずのおじさんたちにお尻を見られるのって辛いよね。でもねぇ、残念だけど俺も仲間入りさせてもらおうかな? こんな風にね」

「な、なにを……なにしてるんですか?!」

踊り場でしゃがみ込み、両方の手のひらであごを支える俺に、怜菜ちゃんは狼狽した。
その両サイドのエスカレーターからは、事情を知らない無数の視線がふたりに向けて降り注いでくる。

「あ、ああ。やっ、ど、どう……お、おじ……さん?」

ちぎり絵にされた単語しか、怜菜ちゃんは発せない。
再びモップを手放した両腕が、後ろにまわりお尻の上を何度もかすめた。
でも、露骨に隠すべきかどうか迷っているみたいだった。

俺は無言を貫いた。
ただ、じっと眼尻を下げたエッチな視線を彼女に送り続けた。

落ちる。もう少しだ。もう少しで……落ちろ。堕ちろ。堕ちるんだ!

「わ、わかりました……ううぅっ、従います……」

涙声がした。逃げ場を失った妖精がその身を晒した。

堕ちた?!

俺はゆっくり立ち上がると、彼女の背中に貼り付いていた。同時に囁いていた。

「その言葉、ウソじゃないよね」

怜菜ちゃんは返事の代わりに頷いた。
深く大きくゆっくり。そして悔しいのか辛いのか、羽をもがれた妖精の背中は震えていた。



「怜菜ちゃんってさ、パンチラ覚悟の超ミニのスカートで登校したことは?」

「ないです」

「それじゃあ、下着なしで外出したことってあるのかな?」

「ありません」

俺の質問に怜菜ちゃんは淡々と答えていく。
感情を露にしたら負けという感じで、目深にかぶった帽子を更に引き伸ばして、視線を合わせようとはしてくれない。

「ふ~ん。だったらさ、どんな感じかな。生まれて初めてのノーブラ・ノーパンって?」

「……うっ、恥ずかしいです。ただそれだけです」

踊り場から2段下がった所で、モップの動きが止まりかける。
俺は続けて質問をぶつけた。

「だよね。下着なしって恥ずかしいよね。でもそれ以外にも何かあるんじゃないの? ほら、乳首だって作業着の裏地に擦れちゃうし、むき出しの割れ目だって股布のところに当たっているし。なんか変な気分になってくるとか? ふふっ」

「あ、ありません! そんな……恥ずかしい。それだけです」

上体だけひねった怜菜ちゃんが、キッとした目で睨みつけてきた。

「おっ。いいねぇ、その目。ゾクゾクするねぇ。ところで怜菜ちゃんは、脱いだ下着をどうしたの? トイレのごみ箱にでも捨てちゃったのかな?」

問い掛けながらも、俺の目は膨らんだ上着のポケットを見つめた。
それに感づいた彼女の右手がポケットを隠した。

「捨てません。でも……言えません」

「ということは、持ってるってことだよね。ブラジャーとパンティ?」

語尾の単語だけ強調した。
その脅しが効いたのか、怜菜ちゃんがコクリと頷いた。

「じゃあさぁ、怜菜ちゃんのブラジャーとパンティを、おじさんが預かってあげる」

「そ、そんな……」

一瞬キョトンとして、内容を理解した途端、羞恥色に顔を染めた怜菜ちゃんが声を震わせた。

「できないの? ふふっ、そんなことないよねぇ、さっき『従います』って約束してくれたものね」

俺もなかなかの鬼畜だ。
エロ小説並みのセリフで、こんな無垢な少女を恥じらわせるんだからな。

「早くしないと、時間なくなっちゃうよ」

突き出した腕時計を彼女の顔の前に晒した。ちょいちょいと動かしてみせた。

「わかりました。あ、預けます」

押し殺した哀しい声だった。
そしてなぜなのか? 瞬間目線を上向けてから辛そうに俯いた。