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処女は自分で奪うもの その2























(四十六)


八月 二十三日 土曜日 午後九時四十分  吉竹 舞衣
  


テーブルの上でゴロンと転がったのは、毒々しい青色をした無機質な物体。
形状は口では言えない。説明してはいけない。
でも、ちゃんと持つところも付いているし、下の方で短い突起が枝分かれしている。

それでも、こんな物を高級そうなキャビネットに入れてはいけないと思う。
こういうのは人目を避けるようにして、ベッドの下に潜ませるとか机の奥の方とか……

「そんな驚いた顔をしなくても……
エッチ大好きな舞衣さんなら、よーくご存知ですよねぇ。
そう、バイブですよ」

悪戯が成功した子供のように無邪気な笑みを浮かべると、道具の取っ手に設置してあるスイッチを入れた。

ウイィ―ンッ、ウイィ―ンッ、ウイィ―ンッ、ウイィ―ンッ……

動いた?! これ動いてる?!

低いモーター音を響かせながら青色の物体が卑猥な踊りを始めた。
身体をくねらせのたうちまわり、ガラスのテーブルに振動を与えながら少しずつ全身している。
まるでおぞましい生き物。

「気にいってもらえましたか、舞衣さん?
そして、このバイブであなたは処女を喪失するのですよ。
それもご自分の手によってねぇ……ふふふふっ……」

「えッ?! あっ、あのっ……それってぇっ……!!」

ダメッ! ショックが大きすぎて言葉になっていない。
テーブルの上で、グロテスクな塊が踊りながらわたしを睨んでいる。

あれが何の道具か……そんなの私だって知っている。
あれを身体のどこにいれるのか、それも知っている。

でも、いくらなんでも初めてが、あんなグロテスクな道具だなんて……
私の初体験は人間じゃなくておぞましい化け物だなんて……

「ほう、言葉が出せないくらい嬉しいですか?
……それは良かった。
ついでに、いいことを教えてあげましょう。
舞衣さんが今座っている場所は、有里さんが処女を失った場所なんですよぉ。
有里さんが処女の血を流したところです。
ね、そう思えば舞衣さんも感慨深いでしょう。
……では早速突いてもらいましょうか。ご自分で……」

副島は一旦電源を切ると、私の手のひらにそれを握らせた。
見た目以上にズシっとくる重さ。
そして、重さに比例するような恐怖が心にのしかかってくる。

有里。舞衣の初体験の相手、バイブになっちゃった。
やっぱり私は神様に罰せられるみたい……

私はソファーの背もたれに背中を密着させると、両足をひらき直した。
あそこに這わせた左手で大陰唇の扉を慎重にひらき、バイブを握り締めた右手を股の中心へと移動させる。
そして、そのまま先端を割れ目の入り口に固定。

「言っておきますが、初めてはメチャクチャ痛いですよぉ。
何といってもこんな太い物をあそこに突き刺すんですから……
おまけに濡れていないんでしょ。おま○こ……」

「……ぐッ……!」

どこまで残酷で意地悪なんだろう。
本当に最低な人……
私を怖気づかせて楽しんでいるんだ。

ちょっと悔しい。
でも、話していることは当たっている。
きっとものすごく痛いだろうし、あそこが潤っていないのも確かだし……

だから怖い。怖くて気を失いそう。
そうでなかったら発狂するかも……

「舞衣さーん。さっさと女になってくださいよぉ。
さあ、バイブをおま○この中へ……」

私は固まりそうになる右手を励ますと、ゆっくりと手前に引き寄せた。

クチッ……

「ひっ!? ひィッ……!」

バイブの先端が割れ目のヒダの隙間にめり込んだ。
我慢したかったのに、噛みしめた奥歯の間から悲鳴が漏れて肩がビクッと震えた。

「あぅっ、うぅぅぅっ!……こ、怖いッ……!」

でも入れないと……
まだ全然入っていないじゃない。

もっと右手を励まして、もっと右手に力を込める。

「あぐっ、痛いッ……んんッッッッ……」

鈍い痛みが少しづつ鋭い痛みに変わって、バイブ先端の太くなった部分が割れ目の中に完全に沈んだ。

「そろそろ、処女膜ですよぉ。
これで舞衣さんもヴァージンとお別れですねぇ」

「お願いします。少しの間、黙っていてください」

私は壊れそうになる気持ちをなだめるように、深呼吸を繰り返した。

そして、心の中で短い囁き。

さよなら。舞衣のヴァージン……
さようなら。私の女の子……

両目を閉じて大きく息を吸い込んで、呼吸を止める。
片手で心細かった右手の上から左手を添えると、両腕に覚悟を込めた。

青色のおぞましい物体が、乾いた膣を秘膜を傷つけながら割り広げていく。
どうしようもない激しい痛みが、あそこから末端の神経まで身体の中を駆け抜けていく。

「んんんッッッッッ! んッぐッッッッ……痛ィッ、痛いッ! ……裂けるぅぅぅぅぅぅッッッッ!!」

ズンッ、ズズッ……ズンッ、ズズッ……プチッ、プチ、プチ、プチッ……    

かすかに聞こえた処女膜の悲鳴……
堪えていたのに。見せたくなかったのに。涙がほおを伝った。

私は瞳の奥に浮かぶ有里に語りかけた。

女になるのって結構辛いね。
舞衣、覚悟が足りないのかな? 
痛い痛いって情けなく叫んで、涙もいっぱい流したよ。
……でもね、後少しなんだ。
もう少しで全部入るから……
そうしたら、舞衣も女になれる。有里と一緒になれる。
だから最後だけ応援して。舞衣を励まして……

閉じていた両目を見ひらき、息を大きく吸ってゆっくり吐いた。
残っている勇気を振り絞って両腕に再度力を込める。

有里、いくよッ!!



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バイブで絶頂 その1























(四十七)


八月 二十三日 土曜日 午後九時五十分  吉竹 舞衣
  


「ひぎィィィッッッ!!……はぁッ、ああぁぁぁぁぁッッ……んんッッッッッッ!!!」

ズズッて音が頭に響いて、膣の奥に何かが当たった。
トドメのような肉を切り裂く激痛に、はしたないくらい大きな声で絶叫した。

精神が壊れるくらいに震えて、贖罪という言葉が自信なく揺れる。

「はぁ、はあ、んんんッ……はぁ、入ったの……? 
全部……入っちゃったのっ?!……」

私は肩で荒い息を繰り返しながら、恐る恐る視線を下へとずらしていく。
胸のふくらみからおへそ、さらに下腹部へと……

でも本当は見なくてもわかっている。

膣全体に拡がる異物の違和感とジンジンと火傷をしたような痛み。
それに処女を喪失したという心の傷……

そして、追い掛けるように両目が消し去りたい映像を教えてくれる。

噴き出した汗が油を塗ったように光り、だらしなく左右にひらいた太もも。
股間に突き刺さった状態で、握り手の円柱部分と枝分かれした突起部分をわずかに露出させているバイブ。
その残りの大半を口いっぱいに拡げて飲み込んでいる、恥ずかしい割れ目。

女性の身体ってすごい。
こんなおぞましい異物をお腹に飲み込んでも死なないんだから……
見て、舞衣のあそこ。
股の間からニョキッて飛び出して、まるで男の人のアレのよう。

ものすごく恥ずかしくて情けない姿なのに、なんだか滑稽。
……笑いたくなる。

「処女膜喪失、おめでとうございます。舞衣さん。
一生に一度の大切な儀式を、大人の玩具で経験された今のご気分はいかがですかぁ?」

いつの間にって感じで、ソファーの前に副島が立っている。

気が付かなかった。

私がつまらない感傷に浸っていたから……?
それとも、下腹部の異物のせいで五感が鈍っているから……?

「あ、あの……そんなことより……これ抜いてもいいですか?
お、お話なら後でしますから……これ……苦しいんです」

「なにを仰います。
せっかく、舞衣さんを天国に連れて行ってあげようと思っているんですから、もう少しバイブはそのままで……」

そう言うと副島は突然腰を屈めた。
じっと、恥ずかしい姿のまま止め置かれている私の下腹部を覗いてる?!
バイブを飲み込んだままの割れ目を、薄笑いを浮かべた顔に覗かれている!

この人、これを動かす気なんだ!

思い出したくないのに、頭の中に卑猥な踊りをするバイブが浮かんだ。
ガラスのテーブルの上を耳障りなモーター音を撒き散らしながら、身体をくねらせて振動するおぞましい無機質な生き物。

怖い、怖いよぉ……
今それが動いたら……わたし本当に死んじゃうかも……

「直ぐに処女だった自分なんて忘れてしまいますよ。
さあ、わたしの前で有里さんよりも可愛い声で鳴いてくださいね。舞衣さん……」

「イヤッ、コワイッ! ……お願いします……もう少し……待って……」

背もたれに限界まで身体を押し付けて、ささやかな抵抗をするわたしに副島はさらに微笑んだ。
そして、簡単にわたしの両手を払い除けると、股間のバイブを握り軽く揺らした。

「ヒィッ……触らないでッ……んんッッッッ、痛いッ……!」

忘れ去りたい激痛が膣に帰ってくる。
涙が……また零れた。

「おやおや、この程度で鳴かれてはこれから先耐えられるでしょうか?
本当の快楽は、こんなものではありませんよぉ」

涙でかすむ視界の先で、カチッって音が聞こえた。
その瞬間、お腹の中で無機質な生き物が暴れ出した。

ヴイィ―ンッ、ヴイィ―ンッ、ヴイィ―ンッ、ヴイィ―ンッ……

「いやぁぁぁぁッ、うッ、動いてるッ?! 
これ、お腹の中で動イテルッ……痛いッ、痛いッ……とめてぇッ、お願いとめてくださいッ、ああぁぁぁ……」

股間から突き出た取っ手がうねうねと回転し、そのたびに割れ目が醜く歪んでいく。
傷ついた表皮を感情を持たないバイブが剥ぎ取っていく。

ものすごく痛くて、ものすごく辛くて、ものすごく哀しい。

でも耐えないといけないと思う。
わたしは有里の……



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バイブで絶頂 その2






















(四十八)


八月 二十三日 土曜日 午後十時  吉竹 舞衣
   


「わくわくしますねぇ。ゾクゾクしますねぇ。
女の子が苦しみ耐え忍ぶ姿は、最高のショータイムですからねぇ。
さあ、もっといい声で鳴いてください」

女性を虐めて嬉しいなんて、ほんと最低な男。
死んでも付き合いたくないタイプ。
正義感の強い有里だったら、速攻で必殺パンチが飛び出しているかもしれない。

私は、おぞましい苦痛から逃れようと左右に頭を振った。
でも、心はこの苦痛から現実逃避しようとしている。

「まだ辛いですかぁ?
もうそろそろ、おま○こが熱くなってきませんかぁ?
刺激が足りないなら、いくらでも協力しますよぉ……ほらぁ」

ヴイィンッ、ヴイィンッ、ヴイィンッ、ヴイィンッ……

「くっぅぅぅぅぅぅぅっ、とめてっ、バイブをとめてっ……はぅぅ、う、動きが……速く……なってるぅッ……?!」

緩慢だったモーターの音が鋭くて早くなって、それがお腹の中から響いてる。
それと呼応するように、膣の中でバイブが激しく暴れてる。

さっきよりも強くくねって……強く振動して……
デリケートな壁を揺らして……それが奥まで伝わって……
そうしたら、ジワーッと熱いものが湧いてきちゃう。

感じてる……?!
こんな情けないことをされて、私、感じてるの……?!

「おやぁ、気がついたみたいですねぇ。
先程から、舞衣さんの内腿がヒクヒクと痙攣していますよ。
もっと快感が欲しいってねぇ」

「……う、うそ……です。はぁっ、私……き、キモチよくなんて……んっぅぅぅっ」

でも、嘘をついたのは私の方……
あそこが切ないくらいに熱くなって、意識していないと甘い声が漏れ出てしまう。

「もっともっと、気持ちよくなりましょうねぇ。
さあ、本当のセックスみたいに抜き差ししてあげましょうねぇ」

「ああぁんっ、いッ、イヤぁぁぁっ! ヤメテェッ、さ、さわらないでぇッ! バイブさわらないで! ……はぁっんッ、イイ……」

必死で声をつないだのに……
バイブに触れないでって、お願いしたのに……

私は甘い吐息を洩らしながら快感に腰を震わせていた。
目の前で毒々しいバイブが出たり入ったりしている。

私のあそこがにゅるにゅるって恥ずかしい音を立てながら、なんなくそれを飲み込み、いやらしい液と一緒に吐き出している。

「ああぁぁっん、んんんッ……ふぅっん、い、いやぁぁぁぁんッ……わ、私……」

バイブに突かれて、快感がわーって拡がって……
バイブが引き抜かれて、切なくて焦れったい感情がすーっと拡がって……
私……バイブの快感の虜になってる……?

信じられないよ。舞衣って、さっきまで処女だったのに……
あそこの中にいるのは、男のアレじゃなくて温もりのない機械なのに……

舞衣は、本当はエッチが好きなのかもしれない。
だって、機械にあそこを玩具にされて気持ちいいんだから……

「どうですかぁ? 指で慰めるより全然気持ちいいでしょう?」

私は口を半開きにしたまま、うんうんと頷いた。
だって本当のことだから……
もうこの人の前でうそを付けないと思ったから……

「では、そろそろイッちゃってください!
私に舞衣さんが絶頂する姿を見せてください!」

「んんッむぅっ、ひっぃいいぃぃぃッ! く、クリトリスは……はぁぁぁぁぁっ、だめぇぇぇぇぇッ!」

副島は、枝分かれした青色の突起を割れ目の先端にグッと押し付けた。
細かくて激しい震動が敏感な突起をビリビリと刺激する。

ただでさえ感じやすいのに。
オナニーのときも、そーぉっと触れるのに。
こんな強いことされたら、私……舞衣……イカされちゃう……!

クチュッ、グチュッ、クチュッ、グチュッ、クチュッ、グチュッ、クチュッ、グチュッ……

「はうぅっ、き、気持ちいい……気持ちいいのぉっ、はぁぁあああっんッ……」

もっと快感が欲しいの。
もっともっと気持ちよくなりたいの。
そう思うと、両手が勝手に乳房を揉み始めた。おっぱいを刺激し始めた。
手触りのいいモチモチとした肌に指が食い込んで沈んで、ひたすらこね回してる。

胸から電気が流れて、膣からもクリトリスからも激しく電気が流れてる。

もう、なにがなんだか分からないの。
ただひとつだけ、気持ちいいってことを除いて……

私は、乳房を下から押し上げて同時に乳首をこすった。
オッパイがものすごく気持ちよくて、上半身がガタガタ震えた。

下半身も気持ちよくしたくて腰を思いっきり突き出した。

バイブが膣の奥まで突き刺さる。
振動が奥の扉を叩いてる。
枝分かれした突起が堅くなったクリトリスを押し潰して、全身の力が抜けていく。

気持ちいいよ。こんなに気持ちいいなんて……
そして頭の中が白く染まっちゃった。

「はぁああああああぁぁぁっ、いいぃぃッ、いいぃのぉっ! イクゥッ、イッちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッッ……!!」

あごを仰け反らして頭を振って……
両足をビクビクと痙攣させて、腰を振ってオッパイを揺らして……
そして……そして大きな声でイクッて叫んで……
私は……舞衣は……オナニーでも経験したことがなかったのに、初めて絶頂しちゃった。

ソファーにお尻がついているのに実感がないの。
軽くなった身体は宙に浮いているかのよう……

エッチって気持ちいいんだ。
性器をいじるのって、こんなに気持ちいいんだ。
このまま精神も快楽の世界に沈めた方が楽かもしれない。

……誰?
……誰、舞衣を呼んでいるのは……
……誰、遠くで首を横に振るのは……

……有里……?
……有里なの……?
……悲しい顔……してる……?!

……!
……そうよね、そうなんだよね。
……ありがとう、有里……舞衣……もう少しで……



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プレゼントはバイブ























(四十九)


八月 二十三日 土曜日 午後十時三十分  吉竹 舞衣
  


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

ソファーの上で両足を前に投げ出したまま顔を伏せていた。
時間が経過するにつれ、白くぼやけていた心が澄んだ空気のようにクリアーになっていく。

舞衣はあそこに自分でバイブを入れて、副島にスイッチを入れられて……
怖くて痛かったのに膣の中でそれが暴れて……
その後は……ダメ! 思い出してはいけないみたい。

「豪快なイキっぷりでしたねぇ。
聞かされたこっちの方が、恥ずかしくなってきましたよ。
まあ、これで舞衣さんも大人の女性の仲間入りが出来たわけですし、メデタシメデタシってとこでしょうか」

副島はボックスティッシュを取り出すと、透明な液で汚れた指を拭い始めた。
まるで私に見せつけるかのようにして……

「ところで舞衣さん。バイブの虜になるのは構いませんが、行為が終わってもおま○こに挿れたままってのはいただけませんねぇ。
物事には後片付けも大事ですよ。
ご使用後は、あそこからきちんと抜き取りきれいに水洗い……
ははははっ。ただし、エッチな液で洗うってのはなしですよ……ふふふふっ、はははははっ……」

どうやらこの人、バイブに付着しているヴァージンの証を見たいらしい。
そうでなかったら、玩具のように扱った女の後処理まで気にする必要ないもの。

……根っからのサディストみたいね。

私は慎重にバイブの取っ手を掴むと、ゆっくりと抜いた。

「……んんっ、んんんくっぅぅっ……!」

ぬちゃって音が耳をいじめて、バイブを引き抜くだけなのにゾクリと妖しい電気がはしっちゃう。
私は、つい下腹部に目を落としてしまった。

……涙がまた流れ落ちた。
……見るんじゃなかった……

「ほほーぅっ、バイブがびしょぬ濡れですねぇ。
テカテカと光っていますよぉ。
それに、所々にこびりついている赤いものって……クックックックッ……
それって、あのときの鮮血ですよねぇ。
ほらぁ、舞衣さんもご覧になってはいかがですかぁ。
ご自分の記念すべき瞬間を共にした相棒ですよぉ」

「お願いします。こっちを見ないでください……恥ずかしい……」

取り出したものの、どうしていいのかわからなくて、私はバイブを握り締めていた。
できることなら、さっさと捨ててしまいたい。
でも、副島はそれを許さないだろう。
そんな行為にでれば、きっとなにか因縁をつけてくる。

「よろしければそのバイブ、舞衣さんにプレゼントしますよ。
随分と愛おしそうにしていらっしゃいますから、是非ともご自宅でオナニーなどに活用してくださいませ」

「いえ、遠慮します。
私……こんなモノ要りませんっ!」

「そう、仰らずに……
ああ、そうだ。こうしましょう。
舞衣さんは、次の行為までにそのバイブで、おま○こを馴らしておいてください。
もう処女じゃないんですから、いつまでも痛がってもらっては困りますからねぇ。
これは命令です。
一日一回、そのバイブでオナニーをすること……いいですね!」

副島はそう言うと、スーツの乱れを直した。
もう帰る気なのかもしれない。

「そんな……許してください。
……私、それが怖いんです。
気持ちの整理がつくまで……もう少し待ってください。お願いします」

「いいえ、決めました。
なんなら、有里さんにプレゼントしてもいいんですよ。
ただし舞衣さん。あなたが直接手渡しでね……
まあ、それも無理と言うなら、私が有里に渡さないといけなくなりますが……」

「……有里」

副島がニヤ付いている。
私の答えはひとつしか残っていない。

「……わかりました。言うとおりにします。
だから、有里には……」

そう、私がこのバイブを使って毎日オナニーをさせられるってこと……
でも、有里にそんなことさせるわけにはいかない。

「ええ、いいでしょう。
その代わり、次に会うときまでにしっかりと宿題をこなしておいてくださいね……ははははっ……」

私はバイブを強く握り締めた。
いっそのこと、こんなモノ壊れてしまえばいいのに……

そうすれば、恥ずかしい宿題も勘弁してもらえるかな。

副島が去った後もずっと立ちつくしていた。
つまらない期待を抱きながら……



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哀しみの帰路























(五十)


八月 二十三日 土曜日 午後十一時  吉竹 舞衣
   


「ねぇーっ、今晩はかえさないわよぉーっ……ひっく……」

男に肩を抱かれるようにして、足元をふらつかせた女性が私の横を通り過ぎていく。

鼻につく香水とお酒の匂い。
昨日までの私だったら、嫌悪感から眉をひそめていたかもしれない。

「でもさっきの人……なんだか嬉しそう。
きっとあの男の人と……愛のあるセックスをするんでしょうね」

私は、誰に遠慮するでもなく大胆なことをつぶやきながら、駅前の歩道を歩いていた。
午後11時を過ぎて、週末の繁華街は昼間とは光景が一変している。

居酒屋、スナック、小料理屋……
そして、ちょっといかがわしい看板を掲げたお店。
出入りする人も歩いている人も、大げさに例えると人種が違う。

わずか数分の間に、私は知らない人から何度も声を掛けられた。
そのたびに無言を貫き無視を決め込んで歩いていた。

……ううん、半分間違っている。
相手の声が遠くでささやいているようで、よく聞き取れなかった……これが本当の理由。

「……なんかうっとおしいな……近道しようかな……?」

私は、点滅が始まった横断歩道を迷うことなく渡りきると、黒い森のように見える公園の中へと入って行った。
そして、点々と灯っている照明を頼りに、人気のなくなった園内を脇を締めるようにして歩いた。

さすがにここまで来ると、喧騒の世界からは解放してくれる。
その代わり不気味な静寂が私を取り巻き始めている。

……あら? 向こうから誰かが近づいてくる。
……怖いな……
やっぱり近道なんてしなければ良かったかな。

…… ……
……? ……?! 
……なーんだ。あなただったのね……

……あなた、迎えに来てくれてたの……?
今日は帰って有里の傍にいてあげてと言ったのに……

ふふっ……でも……ありがとう。
私のことが心配だったんだね。

舞衣なら大丈夫よ……安心して……
……って、言いたいところだけど……今の私、あなたには嘘をつけないみたい。

だから、お願いしてもいいかしら。家まで送ってくれる? って……



「……もうすぐ出口ね」

……そうだ。あなたに面白い物を見せてあげる。
これ、なにかわかる?

…… ……

……あなた、本当に優しいのね。
知っているのに答えないなんて……

……でも、それって遠慮しすぎ。
私はあなたに見てもらいたいんだから……ねっ、知っているでしょ?

ふふっ……これはねぇ。バイブって言うの。
どう、グロテスクでしょ。
この道具ね、女の人を感じさせて鳴かせることができるのよ。
そう、簡単に言うと疑似セックス……

……それね、ついさっきまで舞衣の大切な処に入っていたの……
私のヴァージンはこんな道具に奪われたの……

さあ、もっと近くで見ても構わないわよ。
あなたなら構わないわ。

……ほら、汚れているでしょ?
いやらしい液に混じって赤いのも見えるでしょ?

本当はきれいに洗いたかったのに副島が許してくれなかった。
そのまま持って帰れって……
そして、今晩は汚れたままのバイブで自分を慰めろって……
そう命令されたわ。

それに、これも渡されたの。

なんの薬かって……?

……ピルって言うお薬。
これを毎日服用すれば、どんなにセックスして膣(なか)に出されても妊娠しない魔法の薬。
副島はこれから毎朝、この薬を飲むようにって……
そうすればいつでも男の相手が出来るからって、そう笑いながら言ってた。

これってどう思う?

ただ、私の心をいたぶりたいだけなのか……?
それとも、早く有里のレベルに追い付き男を満足させろって……どっちかな……?

……出来れば後者であって欲しいな。
そのために私はこの身体を差し出したのだから……

あらっ、あなたと話しているうちに私の家が見えてきたわ。
……ここで、もういいわよ。
後はひとりで大丈夫だから……

今晩は気を使ってくれて、ごめんなさい。

帰ったら、有里によろしくって言っておいてね。
ただし今夜のことは内緒にね……

じゃあ、おやすみなさい。



私は合い鍵を使って玄関を開けると1階の電気を点けた。

父はいない。
……多分、今晩も愛人のマンションだろう。

母もいない。
……多分、寝室でひとりテレビでも見ているのだろう。

私は軽く溜息を吐くとバスルームへ向かった。

一瞬、バッグの中身をお湯で清めようかと考えたがやめた。

今は汚れた身体を一時的にでもリフレッシュしたい。
そして、清らかな身体で男の命令に従うつもりだ。

まだ私にも、ほんの少しの意地があったみたい。
……これならまだ頑張れるかもしれない。

手早く裸になるとバスルームの扉をひらいた。
そして、熱いシャワーを浴びながらつぶやいた。

「有里、もう少しだけ待っていてね。
舞衣も今日、女になったから……
もう、あなただけに辛い思いはさせない。
だから……
うっ、ぅぅぅぅっ……うぅぅぅぅぅぅっ……」

ごめん、有里……
どうしたんだろう。悲しくなってきちゃった。
ちょっと泣かないとおさまりそうもないから、話はまた後でね……



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