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12月 18日 火曜日 午後8時30分 二宮 佐緒梨 時が止まった真っ赤な砂が、佐緒梨の恥辱の時間が終了したことを告げた。
でも、延長だって出来る。
おじさんの気持ちと財布しだいで、真っ赤な砂が時を刻むなんて自由自在。
そしてわたしも……
あんなに辛かったのに……
スローモーションのような砂時計を睨み続けたのに……
なぜなの? どうしてなのよ?
わたしは、はしたない喘ぎ声に混ぜて延長を促そうとした。
「はぁぁ、はあぁ、お客……っ!」
でも、それ以上、言葉が続かなかった。
続けたかったけど、もっともっと気持ちいい快感に浸りたいのに……
身体中が切ないモノに包まれて、心が白く染まる一歩手前で、わたしはけじめのように首を振った。
そして……
「ああぁぁ、はぁぁぁぁっ、サリー……イクぅっ! イッちゃうぅぅぅぅぅっっ!!」
大きな声で絶叫した。
お尻を激しく振って、太ももでおじ様を包みながら、下半身をビクンビクンって痙攣させた。
両手がブラジャーを押し上げて、乳首をつまもうとするのに……
まだまだ、佐緒梨の割れ目をおじさんのくちびるに押し付けたいのに……
わたしはイッちゃった。
そう、おじさんの舌で10分ちょうどで恥ずかしくイッたの。
淫らな佐緒梨が、名残惜しそうに指をくわえているのを横目で見ながら……
「はあ、はあ……サリーちゃん、イッたんだね。
おじさんの舌で昇ってくれたんだね」
顔中汗まみれにしたおじさんが、スカートの中から顔を覗かせた。
鼻からあごまで、唾液なの? 鼻水なの? やっぱり佐緒梨のエッチなお汁? みたいなものでべっとりと汚したまま、それでも火照ったわたしの顔を見てにっこりと微笑んだ。
「はあ、はあ、おじ様。
サリー、恥ずかしいけどイッちゃった。
だって、おじ様の舌、今までのお客様の中で一番上手だったよ。
ありがとうね、こんなにエッチなサリーを感じさせてくれて……」
「そ、そう。サリーちゃんがそう言ってくれるんだったら……はぁ、はははははっ……
おじさん。なんだか元気が沸いてきたよ。
今夜は、ありがとう。サリーちゃん」
「こ、こちらこそ。
あっ、ええーっと、お客様。今宵は『マッチ売りの少女の部屋』をご利用くださいまして、誠にありがとうございます。
気が向きましたら、またのご来店をお待ちしております♪♪」
わたしは、営業用の笑顔を作ると深々とお辞儀した。
そして、心の中でつぶやいていた。
おじさん、これからも奥様とは仲良くしてね。
佐緒梨のことは忘れて、今夜は夫婦の営みでもがんばってみたらって……
「はあーっ……サリーちゃん……か」
閉じられたドアを見つめながら、つい溜息が漏れちゃう。
因みに、サリーというのは、お義母さんが商売用につけてくれた名前。
このお仕事を始めたその日に、本名の佐緒梨じゃまずいね。とか言って、たった1分悩んで出来上がっちゃった。
サオリからオだけ抜いて、『サリー』だよって。
昔のアニメのキャラクターみたいで可愛いじゃない。
せいぜいお客様に魔法でも掛けて、お札を吸い上げておくれって……
わたしは別に魔法使いになんかなりたくないけれど、あの人にサリーって呼ばれた瞬間、自分にだけ魔法を掛けるの。
どんな恥ずかしい行為でも、自然にできちゃう淫乱サリーに変身する魔法を……
だけど、こういう中途半端なのって結構辛いのよね。
佐緒梨の指が火照ったお肉を慰めようとして、スカートの裾をスルスルとめくり始めている。
オナニーして、浮ついた気分を落ち着けようとして……
でも……
遠くから階段を昇る足音が聞こえた。
コツコツとハイヒールの軽い音と、コツンコツンと低い皮靴の音。
わたしは、慌ててウエットティッシュを引き抜くと、汚れたあそこをゴシゴシと痛めつけるように擦った。
新しいお客様に備えて、優しいおじ様の面影を消し去るように……
新しいお客様に、またリセットした佐緒梨でお仕事したくて……
そして、ドアがひらくと同時に、弾かれたように部屋の真ん中へ進み出た。
「いらっしゃいませ♪♪」
あっ! 涙のあとを拭うの忘れてた?!
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