(19)
4月 8日 火曜日 午後7時20分 岡本 典子 ファサッ……
「ひぃっ……?!」
スカートを腰の上まで勢いよくめくり上げられた。
そうしたら、ショーツだけのお尻がブルッて小さく震えた。
でも、これは寒さのせいなの。
肌を刺す冷たい冷気のせいなの。
絶対に、悔しかったり惨めだったりしない……から……?
「ボリュームのあるいいケツをしている。
このムッチリ感は、さすがは人妻だな……
さあ、次はどうして欲しいんだ?」
河添がまた耳元でささやいた。
逃げ場なんてない私をもっと辱めたくて、卑猥なセリフを耳に刻み込んでいく。
そして、もう待ちきれないよ。って、男の手のひらがショーツの上からお尻を撫で回し始めた。
お肉の弾力を楽しむように、さっさとおねだりさせようと、ペシペシって叩かれた。
「ううっ……か、河添様、お、お願いがあります。
の、典子、寒くて凍えそうなの。
早く……せ、セックスして暖かくなりたいの。
ああ、だから……の、典子の……パ、パンティーを脱がせてください。
メスの匂いを漂わせている……はしたない、お、おま○こに、あなた様の……お、おち○○んを……挿れて……お願い……」
しゃべり終えた途端、冷たい北風が吹き付けてきた。
背筋がゾクゾクして泣きそうになってる。
薄い布に覆われたお尻を好き勝手にされて……
淫乱な典子にピッタリのセリフを言わされて……
卑猥で禁断な単語も、典子はまた口にしちゃった。
きっとこの後も、喉が嗄れるくらい叫ばされちゃうかも。
「ああ、典子のお望みどおり温めてやるよ。
寒風に晒されるベランダで、犬のようにバックから突いてやる。
だからお前も、せいぜいいい声で吠えるんだな。
ふふっ、典子の旦那に聞かせるようにな」
「ああ、ひどい……」
北風が更に勢いを増した。
ベランダで半裸にされた私に、獣のセックスはお似合いだよって、身体の芯まで凍らされていく。
ほらぁ、さっさと交尾して獣みたいに叫ばないと凍えるぞ! って、淫乱な典子に期待して脅してくる。
私は、コンクリートの柵に身体を預けるようにして夜空を見上げた。
視線の端で暗く沈む愛する街を捉えた。
そして考えていた。
夜風に吹かれてするセックスって、気持ちいいのかな? って……
それで気持ちいいのって、本当は男だけじゃないのかな? って……
スルッ……スススッ……スルッ……
「……んん……んんっ……」
河添の指が、おねだりどおりにショーツを引き下ろしていく。
無抵抗な女から最後の下着を剥ぎ取るのって、そんなに楽しいことなの?
そんなに興奮することなの?
ただ脱がされる私にはわからないけど、理解なんてしたくないけど……
毒舌な男はこんなときだけ黙りこくったまま、焦らすほどゆっくりゆっくり薄布で肌を刺激していく。
内ももを合図のように叩かれて、右足を上げて左足を上げた。
ほのかに温もりを感じるショーツを足首から引き抜かれた。
また、内ももを叩かれた。
私は、「ううッ」って小さく呻いて太ももをひらいていく。
大切な処を覗きやすいように、落ちそうになる腰をもっと高く持ち上げる。
典子は一応人間なのに、これじゃまるで芸を仕込まれた動物みたい。
ううん、それ以下かも。
だって、人前で性器を晒す恥ずかしい芸なんて従順な動物でもしないよね。きっと……
「この前も味あわせてもらったが、まるで使いこまれていない処女のようなおま○こだな。
合わせ貝の肉の扉も、もう少しいびつになるものだが、まったく形が崩れていない。
ここは、前の旦那の臆病な扱いに感謝するか?
それとも、子を産まなかったこと典子に感謝すべきか?
まあ、どちらにせよ、お前の女の価値は高値のままだということだ……ははははっ」
「……ひどい……そんな言い方。
それに主人の事には、触れないで欲しいと前にも話したのに……」
私は振り向かずに暗い闇を見ていた。
男の噴き付ける鼻息を、デリケートなお肉に感じながら力を込めてコンクリート柵を握り締めていた。
間違っても振り向くわけにはいかないの。
だって、男に覗かせるために股をひらいてお尻を突き出す典子なんて私じゃないから……
夫を侮辱されて後悔しきれないことをズケズケと指摘されて……
それでも言い返せない典子なんてやっぱり私じゃないから……
そう、今ここにいるのは博幸の知っている典子じゃないの。
淫乱っていう肩書のついたエッチでスケベな典子なの。
だから、私の方からおねだりするの。
こんな感じで……
「か、河添様……
いつまでも典子のはしたない……お、おま○こなんて覗いてないで、早くあなた様の逞しいモノを……
そう、お、おち○○んを、典子の……おま○こに、い、挿れてぇ……突っついてぇ!
典子……もう、待ちきれないのぉ……」
夜空に向かって小声で叫んでた。
それでも、風に乗って愛する街まで飛ばないように祈りながら叫んでた。
そして、祈って叫びながらエッチを催促するように、はしたなくお尻を左右に振っていた。
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