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4月 8日 火曜日 午後7時50分 岡本 典子 ぬちゃぅっ、じゅちゃっ、ぬちゅゃっ、じゅちゃっ……
パンッ、パンッ、パーンッ、パンッパンッ……パーンッ、パンッパンッ!
「ほらぁ、まだか典子?
俺の命令がきけないとなると、お前の儚い夢もこれまでだな。
さあ、俺が射精するまでがタイムリミットだ。
……と、言いたいが、もうまもなくだがな……」
典子の夢……儚くて果てしなく遠いふたりだけの夢……
視線が遠い暗闇に注がれた。
私は腰から突き上げられる快感に顔をしかめながら、一点を見つめた。
小さな粒のような光が涙に揺れて、口をひらいていた。
壊れそうに声帯を震わせていた。
「んはぁ、の、典子は……みぃ、淫らで淫乱な人妻です。……お、おち○○んが大好きな……人妻です……ああっ、ああぁぁぁっっ!」
口を閉じた瞬間、何かが弾け飛んでいた。
身体中の神経を甘い電気が駆け抜けて……
膣がキューッて収縮して……
子宮の扉がギギーッってひらくのを感じた。
そうよ、イッちゃうの。
男が射精する前に、典子が絶頂しちゃうの。
このマンションの住人みんなに聞かれながら、夜空に向かって獣のように叫びながら飛んじゃうの。
私は突き出される腰のタイミングに合わせて、お尻を振っていた。
衝撃で太ももが揺れて、おっぱいもプルンって揺れて、お腹のなかで子宮も揺らされる。
河添が、後ろで小さく呻いた。
硬くて太いモノが膣に突き刺さるたびに、更に太くなって更に硬くなっていく。
「はぁぁ、いいぞぉ典子。うっ、ぅぅ」
硬いモノを埋め込んだまま、ウエストを強く掴まれた。
皮膚を破る勢いで爪を立てられる。
まだよ。あとちょっと……あと少しで……
引いては寄せる快感の波に飛び乗ろうとした。
割れ目がトロって溶けて、新しいエッチな水が湧き上がって……
背筋から頭のてっぺんまで気持ちいい電気が矢のように流れて……
私は『エイッ!』って、踏み切った。
獣みたいなセックスが大好きな淫乱典子だからジャンプした。
パンッ、パンッ、パンッパンッ……パンッパンッパンッパンッ!
ぬちゃぅっ、じゅちゅっ、ぬちゅゃっ、じゅちゅっ……
「んんあぁぁっ……ああっ、きもちいいのぉっ、硬くて太くて……だから、だから、だから……イクぅぅぅっっ、イッちゃうのぉぉぉぉっっっっ!!」
「ううっ、で、でるぅッ!」
どぴゅッ、どぴゅッ……どぴゅぅぅぅぅ、どぴゅぅぅぅぅぅぅッッ……!
「はぅぅぅ、ううぅぅっ、お、お腹が……熱いっ! あぁぁ、熱いシャワーで……典子のお腹……火傷するぅぅぅっ!」
一瞬のことだけど……
膣に精液を撒き散らせた河添のモノが、可愛いって思ってた。
後で死ぬほど後悔すると思うけど……
真っ白に染まる頭の中で、夫以外の異物を愛おしいってどこかで感じた。
背中を弓のように反らせて、赤い舌を覗かせながらあごを突き出して……
たぶん叫んで、たぶん聞こえたと思う。
気持ちいいって鳴く声と、快感って鳴く声を……
私は、コンクリート柵に寄り掛かっていた。
河添のモノが引き抜かれたあとも魂の去った抜け殻のように、ほとんど全裸の身体を冷たいコンクリートに預けていた。
そして薄れる意識の中で考えていた。
結局、獣のセックスをさせられたのって私だけだったのかな?
だって、この人……
ズボンの隙間からアレだけ露出させて、服を脱がなかったもの。
なんかずるいよね。
典子だけ獣になるなんて……
それとも、あの人って案外寒がりなのかな?
セックスしてこんなに身体中火照っているのに、やっぱりおかしいね。
なんだか私……眠くなってきちゃった。
このままお休みしようかな……
犬のように身体を丸めて寝ちゃおうかな?
夜空と一緒。
闇に沈む意識の中で、時が流れていく。
やがて、会いたかったのに顔を正視できない誰かが脳裡に浮かんで、同時に誰かが典子の身体を持ち上げた。
そしてひとこと「こんな所で寝たら、風邪ひくぞ」って……
ふふっ、最後にこのセリフ……卑怯だと思うよ……誰かさん……
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