第1話
埼玉県浦和市にある篠田会計事務所は、公認会計士の篠田喜一を始め、
男性社員10名、女性社員5名の市内では中堅の会計事務所だ。
現在65歳の篠田喜一は10年程前に妻と離婚し、今は市内のマンショ
ンで一人暮らしをしている。
身長は低いがガッシリとした体格で、顔は赤黒くギラギラとした大きな
目を持つエネルギッシュな男だ。
この物語は、朝礼での篠田喜一の一言から始まる。
「みんな聞いてくれ。私の古くからの友人で太田二郎という会計士が先
月病気で亡くなってな、彼の奥さんからいろいろ相談されて……」
話の内容は、亡くなった会計士太田二郎の顧客約80社の引継ぎと、そ
この社員5名の受け入れをするというものだった。
社員の三島理恵は、俯いたまま篠田の話を聞いていたが、今の理恵にと
ってそんな事はどうでもいい話だった。
理恵は近々、篠田会計事務所を辞めようと思っていたのだ。
理恵が篠田会計事務所に就職したのは8年前の事だった。
商業高校を卒業した理恵は地元の短大を経て、20歳でこの会計事務所
に入社した。
現在28歳の理恵は、その美貌から顧客からの評判も良く、若手男性社
員からも慕われる存在だった。
本来は大人しく無口な性格だが、甘い眼差しと透き通るような肌は、官
能的な匂いを漂わせていた。
そんな理恵は男性社員にとって高嶺の花だった。
「三島さん、安西建設の業績はどうだ?」
「はい、先月は平年並みでした」
篠田の問いに理恵は、間をおいて答えた。
この篠田からの質問は、週に一度は必ずある。
しかしこれは質問ではなく、篠田からの誘いのサインなのだ。
(一昨日会ったばかりなのに……)
理恵と篠田の肉体関係は、理恵が入社してから半年も経たないうちに始
まった。
当時20歳だった理恵には、高村准一という恋人がいたが、幼馴染みの
加奈に准一を奪われてしまった。
加奈は、幼い頃から理恵に強い対抗意識があった。
理恵と加奈は、小学校、中学校、高校まで、ずっと一緒だった。
加奈は幼い頃から、理恵の持ち物はなんでも手に入れたい性格だった。
おもちゃ、絵本、服、お菓子まで、理恵が持っている物は、なんでも手
に入れた。
そして、中学、高校になると、理恵の友人も自分が支配するようになり、
20歳の時には、とうとう恋人の准一まで奪い去ったのだ。
(加奈が憎い。いつか復讐してやる……)
そんな時に、篠田からの誘いを受けたのだ。
篠田は理恵を抱く度に、5万円を支払った。
週に1~2回、必ず理恵をホテルに誘った。
当時の理恵の月収は15万円にも満たなかったが、篠田からホテルで受
け取る金額は、少なくとも月20万円、多い時は30万円を超える月も
珍しくなかった。
(この金で身体を磨いて、准一を見返してやる……)
理恵は、いつもそう思っていた。
※ この作品は、ましゅまろくらぶ 真理子様から投稿していただきました。
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