第3話
理恵の肉体は、篠田に征服されていた。
篠田は、親子以上に年の差がある理恵を、20歳の時から自分色に染め
てきた。
(この女は、絶対誰にも渡さない……)
理恵はそんな篠田の存在に、嫌悪感があった。
(そろそろ篠田との関係を清算したい。このままでは自分が駄目になっ
てしまう……)
しかし、理性とは裏腹に28歳の熟れた理恵の肉体は、篠田を求めてい
た。
理恵は悩んだあげく、篠田会計事務所を辞めようと思っていたのだ。
そんなある日、篠田の亡き友人の太田二郎に雇われていた元従業員の5
人が事務所に訪れた。
「みんな聞いてくれ。先日話をした太田会計事務所の元従業員の方々だ。
明日から出勤だから、宜しく頼む!」
篠田が意気盛んに言った。
(どうせこの人達とは、そう長くは付き合わないのだ……)
理恵はそう思いながらも、顔をゆっくり上げた。
その瞬間、理恵は驚愕した。
その5人の中に、元恋人の高村准一がいたのだ。
(どうして准一が……)
驚いたのは、准一も同じだった。
准一は目を見開いたまま、じっと理恵を見ていた。
そして理恵は、准一はかつて公認会計士を目指していた事を思い出した。
(准一……)
理恵は、まるで夢を見ている様だった。
篠田は、一人ひとり紹介すると腰を降ろした。
翌日の朝礼で、新人従業員の5人は篠田から顧客名簿を受け取り、それ
ぞれの担当が命じられていた。
「え~と、高村君は、三島さんと一緒に、安西建設を担当してくれ」
「えっ……」
あまりの偶然に、理恵は言葉を失った。
「三島さん、今日は安西建設に行く日だろ? 高村君と一緒に行ってく
れ」
何も知らない篠田が、平然として言った。
「あ、はい……」
1時間後、安西建設に向かう理恵の車の助手席には准一が座っていた。
「ホント偶然ね……」
沈黙を打ち消すかの様に、理恵が問いかけた。
「うん、驚いたよ」
理恵の脳裏には、8年前の苦い思い出が蘇ってきた。
「准一、あれから何してたの?」
「……」
理恵は嫌な予感がした。
「もしかして、加奈と……?」
理恵は、准一の左薬指のリングを見て愕然とした。
「加奈と、加奈と結婚したのね……」
「ごめん、君と別れてから3年後に……」
理恵は8年前に准一と別れてからは、一切の交友関係を絶っていた。
同窓会など、准一と加奈が現れる席にも近づかなかった。
理恵の頭の中は、驚きと悲しみが混在していた。
「理恵、綺麗になったね……」
「……」
「理恵、本当にごめん……」
「いまさら聞きたくないわ!」
理恵の目には涙が滲んでいた。
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