(12)
9月 8日 月曜日 午後11時 吉竹 舞衣 時計の針が午後11時を指そうとしていた。
私は、明後日提出予定のレポートを半分ほど書き終えたところで、シャープペンを放り出した。
「……バカみたい」
頭の中に浮かぶのは、家族と呼ばれる人たちの夕食シーン。
ごちそうが並んでいるのに、無味無臭な食事を続ける私。
途切れがちな会話に戸惑いながらも、ほころばせた顔を維持しようとするお母さん。
そして、人としての尊厳さえ持ち合わせていない人、亘の脂ぎった笑顔が映し出される。
私は背筋を走る悪寒に、頭を左右に振った。
振れば振るほど男の顔が醜く歪み、記憶の片隅にへと追いやっていく。
「……有里」
続けて脳裏に現れたのは、舞衣の大切な親友。有里の姿だった。
その表情は醜い男の笑顔とは違う。
とっても清らかな笑顔をしていた。
……でも、私は知っている。
その笑顔が輝いていないことに……
そう、頭の中に写し出されている有里は、駅前で別れ際に見せた笑顔だった。
「ごめん、有里……」
レポート用紙に水滴が落ちる。
ひと粒……ふた粒……文字が滲んだ。
「そうだ……オナニーしないと……」
私は、ぼそっとつぶやくと椅子から立ち上がった。
そのままベッドの脇へ移動する。
まるで寝る前の日課、歯磨きをするように。
お手洗いに行くように。
そう、身に着けているものを全て脱ぎ去っていく。
ブラもショーツも全部。
裸になって、携帯を手に取って、感覚の消えた指でボタンを操作する。
乱暴にしか見えない指使いで動画モードに設定する。
それを、ベッドの枕もとに置いてある、熊さんのぬいぐるみに立て掛けた。
裸のままベッドに這い上がり、有里の哀しい笑顔をもう一度思い浮かべた。
「はぁーぁ……」
小さく溜息を吐く。2回、3回、4回……
私は壁に寄り掛かるように腰を落とすと、両膝を折り曲げて立て膝をする。
剥き出しにされた大切な処を、熊さんのぬいぐるみが見つめた。
私の目の前で、膝頭が震えている。
意識していないと、勝手に閉じ合わせようとする。
ここまでの動作をするのに、3日前は30分。
昨日は10分くらい……でも今日は5分くらい……
どんなに辛いことでも、馴れてしまえば……心を殺すことさえ可能なら……このくらい……
私は両目を閉じた。
両方の手のひらで、両方の乳房にそっと触れた。
そして下から持ち上げるように、おっぱいのお肉を回転させるように揉み始めた。
「ふーぅん、ふーぅんん……んんっ……」
鼻息でごまかしているつもりなのに、唇からは甘い声が漏れてしまう。
手のひらが乳房の形を歪めるたびに、切ない気持ちが増していく。
もっと、オッパイを虐めよう。
心にそう言い聞かせると、指先に力を込めた。
「ふぅぅぅぅッんッ……き、キツイッ……!」
さっきまでの甘くて切ない刺激が、痛い刺激に変化する
目を閉じていたってわかっている。
舞衣の乳房。力任せに握られたテニスボールみたいに醜く歪んでいる。
でも、もっともっと虐めないと!
「ヒィィィィッ、痛ッ……んんんんぐぅッ……!」
私は、親指と人差し指で乳首をひねった。
捻じるように摘んで、先端に爪を立てた。
鋭い痛みに涙が溢れてくる。
同時に強い電気が流れたみたいに、肩をガクガクと震わせた。
あまりにもの激痛に、指が手心を加えようとしている。
私は指を叱りつけると、もっと痛みを得ようと更に力を加えた。
「んんんんグゥゥッ……ぁぁぁああああっっっ……有里……ッ!」
噛み締めた歯の隙間から呻き声が漏れ出した。
この程度で哀しい声を上げるなんて、舞衣ってだらしないな。
ねぇ、有里もそう思うでしょう?
「そろそろ、下も弄らないと……」
私は、まぶたを開くと熊さんのぬいぐるみを見つめた。
両手を下に降ろしていき、両肘を両膝の内側にあてがった。
そのまま、押し出して左右に拡げた。
「……いやらしい」
まだ何もしていないのに、物欲しそうに割れ目が開いている。
中から、赤くて恥ずかしいヒダが顔を覗かせている。
そのまま、両手の指で大陰唇を左右に拡げた。
出来る限り力を込めて、限界まで開くつもりで……
それを熊さんがじっと見ている。
舞衣の中まで拡げられた、いやらしい性器をじっと見ている。
「ああぁッ、んんんッ……おねがい……みないで……」
指が震えている。
その振動を、デリケートで敏感な肉が受け止めている。
「早く……いじめて……気持ちよく……しないと……」
私は、自分でも理解できない言葉をつぶやくと、左手の指に割れ目を開かせたまま、右手の指で恥ずかしいヒダの間を擦った。
薄い粘膜を剥ぎ取るように、ゴシゴシと指を走らせた。
「んんんぅぅぅッ、刺激が……ああっ、つよい……」
アソコがゾクゾクして、腰が勝手に震える。
でも、もっともっと刺激を与えて、濡れさせて準備しないと……
指を揃えて小陰唇の扉を強引に開いた。
中の感じる壁を縦方向に何度もひっかくように擦り上げた。
「はあぁぁッ……痛くてッ、ムズ痒くってッ……んくぅっ、耐えられないっ……」
アソコの中で、気持ちいい電気が渦を巻いた。
開かれた太ももがガクガク震えて、ベッドの上でお尻も揺れた。
身体の芯がどんどん熱くなってくる。
グチュグチュとエッチな水音が聞こえる。
溢れだすエッチな液体が、割れ目と指をしっとりと濡らしている。
「……準備……出来たかな……?」
私は気持ちいい行為を中断すると、ベッドに設置してある小さな引き出しを開けた。
中に右手だけを突っ込んでゴソゴソかき回す。
そして円柱の物体を手に取ると、右手を急かせるようにしてアソコにあてがわせた。
「バイブを使わないと……だめ……だから……」
囁くように自分に言い聞かせる。
目を逸らしたいのに、それを見てしまう。
副島から強引に手渡された、おぞましい淫具……
舞衣の処女は、この道具に奪われたんだ。
その上、副島から毎晩自分を慰めることを強要され、そのお伴としてこのバイブの使用を義務づけられた。
「さぁ、早く挿れよう……」
私は左手に命じて、割れ目を中までしっかりと開かせた。
バイブを持つ右手に力を込める。
にゅぷって音が心の中に響いて、バイブの胴体がどんどん飲み込まれていく。
「んんんっ、ぅぅぅうううッ……はいってぇッ……舞衣の中に……はいってぇ……くるぅっ……んんぐぅぅッ……!」
初めてのときみたいに、痛くなんてない。
初めてのときほど心に亀裂も入らない。
それどころか膣の壁をバイブが擦って、痒い処を優しくひっかいているみたいで、ものすごく気持ちいい。
足の指先までジーンとしちゃう。
……それなのに、なんだろう?
相変わらず舞衣の心は拒絶したまま、おぞましさと恐怖に震えている。
そして訴えている。
こんなこと……女の子がするものではないって。
もう少し、自分を大事にしろって。
でもね……舞衣は知っているの。
毎晩、わたしの心は最後に屈辱を噛み締めながら、快楽の道を選ぶということを……
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