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9月 10日 水曜日 午後2時 水上 千里 「先生っ! ……松山先生っ! ……待ってくださーい」
千里の声って結構とおるから、たぶん聞こえているはず。
なのに、松山は知らんぷりして、目の前の角を曲がろうとしている
どういうつもりよ?
同僚のナースから『松山先生が呼んでいる』って言うから、さっきから探し回っていたんじゃない。
それなのに、声を掛けた途端、逃げるように歩き出すんだから。
私とすれ違った、ふたり連れの入院患者さんの会話が聞こえた。
「今日の千里ちゃん……なんだか色っぽくないか?」
「そうかぁ? ワシには、普段通りの彼女にしか見えんがな」
私は、ナース服の上から太ももを両手で押えた。
そして、心の中で答えてあげた。
最初のおじさん……いい観察力してるわね。
私たちナースを、そういう目で見てたんだ。
後のおじさん……女を見る目がなってないわよ。
でも……今に限っては、千里はアナタの方が好き♪
それにしても、じれったいわね。
ナース服の裾を気にしながらお上品に歩いたって、なかなか距離が縮まらないもの。
それなら大股で歩けばと言いたいところだけど、それが出来ないからもどかしいの。
一層のこと、走っちゃおうかな? ランニングしてるみたいに。
でもそんなことしたら、さっきのおじさんたち、目を丸くするわね。
間違って裾がまくれちゃったりしたら……!
想像しただけで、ゾッとする。
「せんせ……キャッ!」
私は、角を曲がった所で誰かに右手を引っ張られた。
そのまま、廊下に面した一室に連れ込まれる。
「何するの……あっ、先生……?!」
私の唇に松山は黙れとばかりに、人差し指を押し付けている。
「シーィッ……静かに……」
そう言うと、片手で扉を閉める。
「……先生……これは……?」
私は、声のトーンを低めにして松山から慌てて離れた。
そのまま、部屋の片隅に身体をひっつけた。
わずか6畳くらいの閉ざされたスペースは、カビ臭くて陰気な雰囲気が漂っている。
それも当然だと思う。
ここは、入院患者さんの生活用品や、シーツ、毛布、枕などが収納されている備品室だから。
他には使われていない医療用ベッドまで。
そんな物が段ボール箱に詰められて、天井に届くくらいに所狭しと積み上げられている。
普通女の子ならこんな密室に連れ込まれて、しかも相手が男だったりしたら悲鳴を上げるのが相場よね。
でも千里には出来ないの。
この部屋に私を連れ込んだ理由が、一瞬で理解できたから。
「なかなか趣があって、いい部屋でしょう。ほらベッドまで準備してある」
「ええ。先生のご趣味には、ぴったりのようですね。
ここが私と先生の秘密基地にでもなるのかしら」
こんなことぐらいで怖気づいたなんて、思われたくない。
だから平然と答えてあげた。
「ははははっ……相変わらず、君って人は。さっきの食堂での千里の言動。あれは実に面白かったですよ。
先輩ナースを言葉だけで沈黙させる。上司である私を威嚇のつもりか睨みつける。
まあ、可愛い同僚から先輩ナースの目を逸らせようとする、千里の苦肉の策だということは、分かっていましたからね」
「あら、気付いていたのね?」
「ええ……」
「そうなの……」
私は落胆したように大げさに溜息を吐いてみせた。
松山が下品な笑いをする。
「それで先生。私をこんな所に連れ込んで何をする気ですか?
さすがに、セ……セックスする時間はないと思いますよ。
松山先生の午後のスケジュールは、私と一緒に入院患者さんの検診をすることになっていますから。
もう、10分もないですよね……ふふふっ……」
私は短く笑って、挑発するようにナース服の裾をまくってみせた。
それを見た松山が、下品な笑いを繰り返した。
どうやら、千里で満足してるみたい。
これなら茜ちゃんは、大丈夫……かな?
「ははははっ……千里はどうしようもない淫乱娘ですね。
今日はそんなアナタに、ピッタリの道具を準備してきたんですよ」
そう言うと、松山は白衣のポケットをまさぐり、私にある道具を差し出した。
「……これは?」
知らない顔して、ナース服の上から股間に両手を添えた。
「またまた、そんな顔をして。21にもなった娘さんが、これを知らないわけないでしょう。
このローターを、千里のエッチなオマ○コに入れてもらいましょうか?」
私に手渡された卵型のエッチな玩具。
これがなんなのか、知っている。
使い方も、もちろん知っている。
だって、千里もひとつだけど持っているから。
だけど、これは寝付けなかったり、ちょっと欲情してるときに、ベッドの中でこっそり使う恥ずかしい玩具。
そう、自分を慰めるときに……
間違っても白昼に、しかも職場でなんて。
こんなの、普通の人間がするべき行為じゃない。絶対に……
「おや、顔が真っ赤ですよ。熱でもあるんじゃないですか?
……それとも、淫乱千里のことだから、玩具を見た途端オマ○コが疼いて堪らないとか?」
「……くっ……違います、そんな。それより……これを入れればいいんですね」
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