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お父さん、綺麗に撮ってね♪






















【第1話】



        
        カシャッ、カシャ、カシャ、カシャッ……

        「よぉーしOKだよ。雪音。ちょっと休憩しようか?」

        「はぁ~い」

        夏空をイメージしたブルーなライトの下で、あたしは仰向けの身体を起
        こした。
        そして、はあ~って大きく伸びをしながら、紐ブラジャーからはみ出た
        乳首を指で押し込んだ。
        ついでに、紐パンツから覗いちゃってる大切なお肉もそっと隠してあげ
        る。

        いつもの撮影。いつもの仕草。
        お父さんは、あたしに休憩だって言っておきながら、カメラを覗いて次
        の撮影準備に余念がない。

        でも、今日こそ言わないと……!
        おとといだって、その前の撮影のときだって、結局言いそびれちゃった
        し……

        「うん。今日こそは……ファイト! 雪音」

        あたしは椅子の前でUターンすると、カメラの元へと向かった。

        「お父さん……あのね……」

        ここまで言って、ゴクンと唾を飲み込んで、あとは、エエイッって感じ
        で……

        「ほら、ティッシュ、たくさん持ってきたから!」

        カメラから目を離したお父さんは、部屋の端に山のように積まれたボッ
        クスティッシュとあたしを、交互に見たままポカンとしていた。



        「ううぅ、やっぱり……僕には……」

        「ううぅでも、やっぱりでも、僕でもないの! いつまでも水着からチ
        ラリじゃ、儲からないでしょ。お客さんにだって、マンネリばかりやっ
        てると、どこかの一発芸人みたいに忘れられちゃうでしょ」

        「でも、僕と雪音は実の親子なんだし、その……ゴニョゴニョまで撮る
        というのは……そのぉ……」

        「もう、焦れったいわね! 娘のあたしが恥を忍んでお願いしてるのに
        ……ホントにだらしがないんだから。だいいち、『ゴニョゴニョ』ってな
        によ! 男だったらはっきりと、お……お……お、オマ○コって……言
        いなさいよ! さあ、始めるわよ! カメラ早くっ!」

        「ゆ、雪音、い、今……なんて……お、おま……うぅぅぅっ」

        「もうお父さんったら、こんなことで泣かないの。あたしだって年頃な
        んだから、こんな用語くらい知っているわよ。まあ、人前では話さない
        けど……っていうか、早く始めましょ」

        あたしはステージに上がると、水着を脱いでいった。
        全然平気って顔で、ブラジャーを取ってパンツを下した。
        全裸のまま、唖然とするお父さんの前で、どこも隠さずに突っ立ってい
        た。

        優柔不断なお父さんを急かせるため……
        今更になって、恥ずかしいって叫ぶ女の子の雪音を黙らせるため……

        こんなの恥ずかしくなんかない。
        そうよ。いつもの撮影のときだって、素っ裸のまま女の子の割れ目に絆
        創膏だけで平気だったから。
        乳首を指先で隠しただけで笑っていられたんだから。
        だから……だから……早くっ……

        「そ、それじゃあ雪音、いつものポーズから」

        「わかった。綺麗に撮ってね♪」

        観念したお父さんが、ぼそっと呟いた。
        それに応えたつもりのあたしも、ちょっと声が裏返っちゃった。

        ごめんなさい、お父さん。
        こんな、はしたなくてワガママで毒舌な娘を許してね。

        あたしは腰に左手を添えると、右足を半歩前に踏み出し、身体を半身に
        する。

        カシャッ、カシャ、カシャ、カシャッ……

        全裸のあたしを捉える初めてのシャッターの音。
        その音に導かれるように、あたしは次々とポーズを決めていく。

        「そこで振り向いて……そう。今度はひざを開いて、顔は横向きで……
        OK。こっちを向いて、挑発的な笑顔で……! そう、いいぞ! そう、
        そのまま!」

        撮影が進むにつれて、お父さんの声に勢いが増していく。
        次第に要求するポーズが卑猥なモノへと変化していく。

        お父さんのアソコ、パンパンに膨らんでるよ!? 興奮しているのか
        な?
        あたしは、猫のように四つん這いになりながら、黒眼を走らせた。

        でも、それって仕方ないよね。
        こんな可愛い女の子が、オールヌードでモデルしているんだもん。
        それにあたしだって……

        「雪音、お尻をこっちに向けて」

        「……うん」

        あたしは這い這いしながら言われたとおりに、お尻をレンズに向けた。

        「あ、あぁぁ……」

        頭のスクリーンに、この前撮影した律子さんの裸体が映し出されてる。
        ボリュームのある真っ白なお尻のお肉が、頭の中でズームアップされる。

        雪音も、一緒のポーズをしている。
        まだまだボリュームなんか足りないけど、お尻の割れ目を……ううん、
        もしかしたら大切な処まで……!

        そう思うと、『恥ずかしい』って声が飛び出し掛けて、慌てて口をつぐん
        だ。
        お父さんの隣で腕組みしながら雪音を見つめる、あの時のあたしに負け
        たくなくて、言われてもいないのにお尻をグッと突き出した。

        カシャッ、カシャ、カシャ、カシャッ……

        カメラが鳴いた。
        あたしは、息を止めてそれが終わるのを待ち続ける。
        そしてお父さんから新しい指示が飛んだ。
        「足をひらけ」って……