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放課後の憂鬱   第10章 陥穽(5)


  
                                          


【第10章 (5)】



        
        (・・やっぱり・・できない・・・そんなこと・・)

        藍はやめようと思った。そう思って周りを見回した。
        高科にセットの裏で抱きしめられた温もりが、まだ胸に残っていた。し
        かし、同時にその直前の、吉田達の言ったことが思い出された。

        みんなは照明の外に下がったので、よく見えなかった。しかし、このま
        までは済まない・・・服を脱がなければ、着替えなければ許されない、
        そんな雰囲気が伝わってきた。

        藍は覚悟を決めた。なるべく早く着替えを終わらせてしまいたかった。
        思い切ってブラウスのボタンに手をかけると、そそくさと外し始めた。

        しかし、今度は吉田が注文をつけた。

        「藍ちゃん、そんな急がないでさぁ・・もっと恥ずかしそうにできない
        かなぁ?・・ゆっくりと、さぁ」

        藍は、注文どおりゆっくりとボタンをはずした。ボタンが一つ外れるた
        びに、ブラウスの前がはだけていった。

        とうとう全部のボタンをはずし終わった。藍はしばらくジッとしていた
        が、やがて思い切ったようにブラウスを脱いだ。脱いだブラウスを手に
        持ったまま、片手で胸を覆うようにしていた。

        「おっ! いい表情だねぇ! さすが女優!」

        吉田がからかうように言うと、藍はキッと睨んだ。

        「そうだそうだ。いいぞぉ。無理やり着替えさせられてる雰囲気、すご
        く出てるな!」

        藍はスカートを穿いたまま、レオタードを着ようとした。片手に脱いだ
        ブラウスを持ち、それで胸を隠したままレオタードに足を通そうとした。

        もぞもぞとスカートを少し捲くり上げ、レオタードに手を伸ばしたその
        時、
        「だめだだめだ。藍ちゃん! まず先に、今度はスカートだ。いいね!
        ・・それに、まさか下着のままなんて、ないよね!」
        すかさず吉田が声をかけた。すっかり助監督を気取っていた。

        (えっ、まさか・・裸になれっていうの?)

        それまで藍は、下着の上からレオタードを着ればいい、と思っていた。
        まさかみんなの前で、下着まで脱いで着替えるとは、思ってもいなかっ
        た。
        ブラウスで胸を隠したまま、どうしていいか分からずに、グズグズとし
        たままだった。

        ふいに高科が近寄って来た。顔が険しかった。低い、ドスの利いた声で、
        藍に話しかけた。

        「藍。あんまりみんなを怒らせるなよ。みんな撮影が進まなくて、いら
        ついているんだ。折角仲間になって、力合わせてるのに・・・仕事だか
        らって黙って休んで、やっと出て来たら撮影いやだって文句言って・・・
        それでやっとやってくれるって約束したのにさ。これじゃホントにどう
        なるか、俺でも知らないゾ。」

        そこで突然、大声を張り上げた。

        「やるき、あんのかよっ!! やらねぇってんなら、覚悟できてんな!!」

        藍は怯えた。突然の、高科の急変が恐ろしかった。口も利けず、手がワ
        ナワナと震えていた。

        「・・・ってコトにならないうちにさ。頼むぜ、藍!」

        高科は普段の口調に戻ってそう言うと、藍の背中をポンと叩いた。元の
        場所へ戻って行った。






※ この作品は、ひとみの内緒話管理人、イネの十四郎様から投稿していただきました。
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