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闇色のセレナーデ 第19話  月夜に輝く銀色の液体


























【第19話】




「前から一度見てみたいと思ってたんだが、女の子が電柱に向けて放尿するってやつ。どうだろう?」

突然口を開いた卓造の案に、和也が意外そうな顔をする。

「いや、それがだね……どうも俺は浣腸ってプレイが苦手なんだな。女がケツの穴からブリブリっと捻り出すのを見たらもう、当分の間は飯がまずくって。まあ、だからって言うわけじゃないんだが、片足上げての放尿で、千佳へのお仕置きは相殺してくれないかな。頼むよ、和也君」

その後も卓造は早口で持論を展開した。
トドメのように両手を摺り合せて、和也の前で拝んでまでみせて。

「そんな、僕と佐伯さんは同じ趣向を持った同士じゃないですか。分かりました、今回だけは勘弁してあげます。その代わり千佳、しっかりと足を上げてオシッコを飛ばすんだよ。いいね?」

「うぐぅ、はぐぅっ……オシッコ、させて……もれる、もれちゃうよぉ」

卓造の迷演技のお陰か、和也はあっさりとOKを下していた。
けれども、尿意にのたうつ千佳にはその声も届いていない。
切羽詰まった口ぶりで、ひたすら排尿の許可を求めているのだ。

「さあ、千佳。こっちだ」

卓造は間近にある電柱へ千佳を導いていく。
股を力任せに閉じたまま引かれる鎖の向きに合わせて、僅か1メートル弱の距離に少女は最後の力を振り絞っていた。

人気の全くない静まり返った路地である。
子供が二人手を繋いで拡げれば届きそうな両端を、コンクリートブロックの塀が延々と連なっている。

そのどこにでもありそうな平凡な街の一角の、古びた電柱の根元で、千佳は四つん這いのまま片足を持ち上げていた。
耳元で卓造に囁かれて、混濁しそうな意識のまま頷いて、卓造に掴まれた足首を夜空に向けて突き上げている。

「オシッコをするんだ、千佳!」

卓造が命令口調で叫んだ。
その横で腕組みをした和也がニタニタと笑っている。

「いいの、して? オシッコして……いいのね」

千佳が擦れた声で聞き返していた。
だが卓造が答える必要はなかったようだ。
少女の身体が排尿の瞬間を教えた。

チョロ……チョロ、チョロ……ジョボ、ジョボ、ジョボ……ジョバァァァッッッ!

「ふうんんっ……あはあぁぁっっ……!」

千佳の唇から、言葉にならない切ない声が漏れる。
それよりも一歩早く下腹の筋肉がピクピクと痙攣して、それが連鎖したように秘肉の合わせ目が持ち上がり、スリットの中心から音を立てて液体が噴出する。
青白い月の光に染められて、銀色に輝く小水が半円を描きながら電柱を汚していく。

「見ないでぇっ! あ、あぁぁっっ……お願い、千佳をみちゃ……嫌ぁっ!」

千佳の唇から女の子らしい声が上がった。
両腕と片足で身体を支えて、女の子の部分を余すことなく晒した恥辱のスタイルに、封印された羞恥心が蘇ってきたのだ。
代わりに下腹で渦を巻いていた猛烈な尿意が薄まっていく。

「はははっ、凄い量のオシッコだね。佐伯さん、見てみなよ。こんなに大きな水溜りが出来て。明日の朝とか氷になって、誰か滑らなかったらいいけどね」

和也が指差す方向に、卓造も目線を合わせていた。
四足のポーズに戻した千佳のお尻の下に、その水溜りは存在した。
少女の体内から放出された小水が楕円形に拡がり、その中心で青白い月が輝いているのも。
そこに最後の一雫が垂れ落ちて、さざ波が立つところまで。



「ううぅっ……ぐすっ、ぐすっ……」

冷たいアスファルトの上で、千佳は背中を丸めていた。
メス鶏が卵を温める姿勢で、込み上げる涙を堪えるように啜り泣いていた。

だが、全裸のままでこうしているわけにはいかないだろう。
下手をしたら凍死しかねない寒さなのだ。

卓造は羽織っていたスーツの上着を脱ぎかけた。
もちろん、千佳の背中に掛けてやるつもりだったが、その動きを和也が止めた。
まだ調教は終わっていないとでもいうように、手持ちのバッグから大小2種類のバイブを取り出してみせたのだ。

「佐伯さん、メス犬に服なんて着せてどうするんです? ツマラナイ甘さは、調教師の腕を鈍らせますよ。ふふふっ」

「あ、ああ……そうだったな。ちょっと仏心が出たかもしれん」

「いいえ、それで普通ですよ。ただの人間なら、そんなものです。ですが……僕達は違います。ね、そうですよ、我が同士の佐伯さん?」

卓造の手に、おぞましい2本の淫具が握らされていた。
全身をおびただしい瘤に覆われた極太なバイブと、一見細身だが、挿入させた粘膜に喰い付きそうな螺旋状の溝が掘り込まれたアナル用のバイブである。

「これを、俺が……?」

「ええ。とっても愉しい役目ですが、佐伯さんに譲ってあげますよ。同士のよしみとして。その代わり、一気にいきましょうよ。勢いよくね……クククッ」

和也は卓造の肩口から顔を覗き込ませていた。
低く笑った。

(いくらなんでもひどすぎる。千佳ちゃんのアソコは前戯もしていないんだぞ。濡れてもいない性器にこんな太いのを突っ込んだりしたら?! だが……?! 試しているのだ! この男は、俺のことを……?!)

まるで肩の上に刃物を乗せられたような異様な悪寒に、卓造は直感した。
震える手のひらのせいで、乗せられた2本のバイブが互いに触れ合い、カチカチと音を鳴らしている。

「お、おじ様?! 嫌……やだぁ、うぅっ……バイブなんて……もういやぁっ!」

和也と卓造のやり取りに気付いた千佳が、背中を捻るようにして顔をこちらに向けた。
涙で赤く腫らしたまぶたが痛々しかった。