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行為の後に……























(三十八)


八月 二十二日 金曜日 午後九時四十分  早野 有里
   


「はあぁーっ、今夜は疲れましたねぇ。
有里様に3回も、精液を吸い取られて、もう、くたくたですよぉ。
始めの2回はお口で、後の1回は、下のお口で……
おかげで、私の息子を見て下さい。
散々絞り取られて、かわいそうに……
当分復活出来そうもないですねぇ」

「よかったじゃない。
これで、副島さんも少しは休めて……
わたしが3回も出してあげたんだから、却って感謝して欲しいくらい」

わたしは副島に背中を向けながら、脱ぎ捨てた服を身に着けていた。
もちろん、会話も背中越しに……

「へーぇっ、随分と余裕ですねぇ。
でも、いいんですかぁ?
そんなことでは、行為の日数もポイントも、稼げませんよぉ」

この人、また、それを持ち出している。
わたしは、そんなに馬鹿じゃないのに……
仕方ないわね。ついでだから話してみようかしら……

わたしは、着替えを一時中断すると、下着姿のまま副島の方に向き直った。

「ふふ。もう、本当のことを話したらどうなの?
わたし、何もかもわかっているんだから……
行為の数なんて、最初からどうでも良かったんでしょ。
ポイントに応じて、治療代に換算するってのも全部嘘……
要は、父の命を人質に、わたしをいつまでも自由にしたいだけ。
身体にいっぱいエッチなことを教え込ませて、時田さんのコレクションとして、淫らなに変化していくわたしを提供するのが目的。
ね、そうでしょう」

「…… ……
さすがは、有里様。いつ、お気づきに……?」

「初めて副島さんに会ったとき……
あなた、言ったわよね。
わたしがエッチな行為をすることによって、お父さんの命は保障する。
つまり、行為をした分だけ治療費が支払われるって。
それに、内容も大事だと……
なるべく、男性を興奮させることが出来れば、ポイントも高く付くって……

でも、契約に立ち会った松山先生は、そんなことを一切言わなかった。
時田さんが、わたしの身体を自由に出来るのなら、お金を出しても構わない。
それも、父が治療を受けている間は、何年でも面倒をみることを約束する。
更に今後も、大学に通うことや、普段の生活はある程度認めようと……
続けてこう言ったわ。
ただ額が大きいから、1回や2回という訳にはいかない。
数年、あるいは10年くらいは耐えることになると思う。って……

肝心の契約のときに聞かされなかったことを、わたしを犯すだけのあなたが、補足するように話した。
あれは、副島さん。あなたの思い付きでしょ。
一体、どういうつもりで、あんなことを……」

「いやはや、有里様は素晴らしい記憶をしていますね」
確かに、ポイントの話は私の作り話です」

「じゃあ、どうして、そんな嘘をわたしに……」

「今から、初体験をしようとする有里様を気遣ってあげたんですよ。
この後も、いつ終わるか分からない気持ちでエッチな行為をするよりも、一回毎にポイントが付くと思えば、心にも張り合いが保てるでしょ」

「では、あれはわたしに配慮してくれたの?」

副島は、頭を掻きながらうなづいた。

それって……?!
……♪……♪……

わたし、この人のこと誤解してたのかな……
結構、いい人じゃない。

行為をさせられている間は、死ぬほど辛かったけど、この人はわたしのことを思って……
世の中、まだまだ捨てたものじゃないわね。

♪♪……♪♪……

わたしは、ちょっと嬉しい気分になって着替えを再開した。
身体はものすごく疲れているのに、思わず鼻歌が出そう。

「プフッ、はははははっ、あははははっ、有里様ぁっ、あなたって人は……ふふふ、はははははッ」

「なによ……何、笑っているのよ」

振り返ったわたしの前で、副島が頭を抱えて笑っている。
なにか、いやーな予感……!?

「ふふふっ、はは、さっきの話を真に受けるなんて……ふふ、あなたらしい」

「じゃあ、でたらめだったの……今の話」

「いえ、全部がってわけではありません。
私が有里様に配慮したというところが……ふふふ、ははははは」

「わたしをからかったの?」

「ええ、単純な有里様を見ていると面白くて……
誰があなたのために配慮する必要があるのです。
本当は、ポイントの話を持ち出せは、勝気なあなたのこと、必死で腰を振ると思ったからですよぉ。
はははははっ、まだ、おかしい……」

「そう、だったんだ……
わたしの気持ち、利用されたんだ……」

やっぱり、今日は最悪の日だったみたい。
でも、ここまでされると、なんだか清々しい気分。
……別に負け惜しみじゃないけどね。

これで、行為の中身なんて、わたしが気にすることは無くなったし、副島の命令通りにエッチをすればいいんだから、却って精神的に楽かも……

「それでは、私はこれで……」

わたしがボーっとしている間に、着替え終わった副島が部屋を後にしようとしていた。

あっ、そうだ。
ひとこと、言うことがあったんだ。

「副島さん、わたしのパンツとブラジャーを返してッ!」



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