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一足早いクリスマスプレゼント その3























(10)


12月 23日 日曜日 午後11時50分   二宮 佐緒梨



両手の爪で壁紙を掻きむしりながら叫び続けた。
爪が剥がれそうになるくらい指先を立てて、うつむいたまま首を左右に振った。

そんなに痛くなんかない。
痛くはないけど……

膣の壁が破れそうなくらい引き伸ばされているの。
佐緒梨の大切な処をメリメリと音を立てながら、太いバイブが貫いていくの。

息苦しくて……恐ろしくて……
わたしの女の子が喉が裂けるくらい泣き叫ぶから、佐緒梨も負けないくらい大声で泣いたの。叫んだの。

だって、まだ女○校生だし、恥ずかしいお仕事をしていても、そんなふしだらな身体じゃない。
こんなモンスターみたいなバイブ、佐緒梨の膣に簡単に入ったりしたらいけないの。

それなのに……

「ふふっ、根元まで入っちまったぜ。佐緒梨。
それも、呆気ないくらいにあっさりとな……」

「はあっ、あぁっ、い、いやぁ……う、嘘よぉっ、そんなこと……はぅぅっ……ない……」

「そうかぁ? 嘘つきは……佐緒梨、お前の方じゃないのか?
さっきからポタポタと垂れているぜ。
恥ずかしいま○汁がな。ははははっ……」

わたしは、下を向いたまま視線を足元に向けた。
肩幅にひらいた足首の真ん中に光る数粒の水滴。
その瞬間、雨粒のようにまたひと粒、淡い毛を伝うように淫らな水滴が落ちてくる。

「んくぅっ、はあ、はぁ……わたし……イヤァッ!」

「ふふふっ、だろう?
口では嫌がって見せても、佐緒梨の下の口はまんざらでもないようだぜ。
というより、まだまだ刺激が足りないんじゃねえのか?
玩具をおま○こに突っ込んだだけではな。
……だからよ!」

カチッ……!
ウイィ―ン、ウイィ―ン、ウイィ―ン、ウイィ―ン……

「んあぁッッ?! ああぁぁぁぁッ! んぐぅぅぅぅっ!」

佐緒梨の膣に突き刺さるバイブが、突然運動を始めた。
破れそうな膣の壁を更に引き伸ばしながら、ウネウネと回転し始めた。

言葉なんか出てこない。
獣のように叫ぶだけ。
イヤも許しても苦しいも、全部ダメ!

口はひらいているのに……
くちびるも動いているのに……
喉を搾り出すような声しか出せないよ!

こんなの玩具なんかじゃない。
女の子の大切な処を壊す凶器よ。

「はぐぅぅぅっ、むぐぅ、お、奥に……子宮にあたってぇっ! ううぅっ、きつぃぃぃっ!」

「随分と苦しそうな声で鳴くじゃねえか。
まあ、多少はきついだろうな。
割れ目が限界まで裂け切っているんだからよ。
さすがに直径5㎝の特大バイブは、佐緒梨にもちょっとばかしハードだったようだな」

背中の向こうで聞こえていたバイブの音が、耳元で鳴り響いている感じ。
頭の中でガンガン音がこだまして、同時に荒っぽいバイブの刺激に恐怖と切なさがごちゃ混ぜになっていく。

わたしは、住田の前でお尻を振っていた。
訳のわからないおぞましい感触に背中をくねらせていた。

怖い! 佐緒梨、ホントに怖いよ!

こんな刺激をいつまでも与えられると、佐緒梨のあそこが壊れちゃう!
ううん、その前に佐緒梨がわたしではなくなっちゃう!

ぐちゅぅッ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ……
ウイィ―ン、ウイィ―ン、ウイィ―ン、ウイィ―ン……

「ひやぁぁっ! な、膣(なか)がこすれてぇっ……めちゃくちゃに……う、うごいてぇっ……あふぅぅぅっ!」

指でカリカリと壁を引っかいているのに……
バカになるくらい首を左右に振っているのに……

どうしたのよ、佐緒梨?
怖いのが、恐ろしいのが、気持ちいいに置き換わっていく。
お化けバイブに犯されているのに、大切な処が……ううん、下半身全体が疼いているの。

「おいおい、ずいぶんと汗をかいているじゃねえか。
全身、びっしょりだぜ。
ふふふっ、まあ、佐緒梨のおま○こは、違う汁でベチョベチョだがな。
……どうだ? そろそろこんな刺激では満足できねえだろ? なあ……はははははっ」

カチッ……!
ヴイィ―ン、ヴイィ―ン、ヴイィ―ン、ヴイィ―ン……

「ひいっっ! だ、だめぇっ! くぅぅぅぅっ……ああぁぁぁぁっ!」

壁にへばりつかせた両手が、ずるずるって下がった。

壁紙に汗を滲ませながら、引っかいた跡を残しながら……
ひざが折れて太ももがもっとひらいて……

わたしは、がに股のような姿勢でお尻を左右に振った。
一気に強くなったバイブの刺激に上下にも振った。
お尻をぐるりと回転させた。

「ああぁぁっ、き、きついよぉう……と、とめてぇぇっ! バイブぅ、とめてよぉっ!」

住田が、わたしになにか話しかけてる。
背後から囁くように呟いた。
あざけるように笑った。

でも、聞こえないの。
きっと、佐緒梨のエッチになっちゃったあそこを指差して、もっともっとわたしを辱めようとしているのに、なにもわからないの。

聞こえるのは、身体の芯まで響いてくる玩具の音。
かきまわされるお肉の音。
感じるのは、身体の芯まで気持ちよく疼かせている玩具の振動。
敏感な壁を伸び縮みさせる玩具の運動。

そうよ。佐緒梨、感じちゃったの。
お腹のなかで好き勝手に暴れるバイブに気持ちいいって鳴いちゃうの。
背筋をビクビクさせながら、エッチなお汁を溢れさせちゃうの。

ぐぢゅぅッ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐぢゅぅっ……
ヴイィ―ン、ヴイィ―ン、ヴイィ―ン、ヴイィ―ン……

「はあぁぁっ、あくぅぅっ……わたしぃっ、わたしぃ……あはぁぁぁっっ!」

頭の中が、ぼーっとしてきちゃった。
半開きの口からいやらしい声と一緒に、涎まで垂れてきちゃう。

でも、仕方ないよね。
女の子の身体は、感じやすいの。デリケートなの。

だから、心の中で哀しくて泣いた涙も、ほっぺたを滑るときは嬉しくて鳴いた涙に変化しているの。

「あぁぁっ、佐緒梨ぃ、気持ちいいぃっ。バイブぅ、いいのぉっ……ひあぁぁぁっ」

住田が、また耳元でささやいた。
でもやっぱり聞こえない。
聞こえないのに、イヤイヤって首を振って……

それなのに、ビンビンしているバイブをグニュグュって動かされた。
尻尾のように突き出したバイブの取っ手を握って、膣の感じる壁に押し当てられた。

いっちゃう! 佐緒梨、お化けバイブではしたなく絶頂させられちゃう!

全身を高圧電流が貫いていく。
割れ目からエッチなお汁が噴水みたいに溢れて、床の上に水溜りをつくってる。

熱い炎に火傷しそうな子宮が、哀しく悲鳴をあげた。
同時に、膣がキュゥッってなって、暴れているバイブを締め付けて、大きな大きな快感の波が足先にも指先にも頭のてっぺんにも拡散していく。

ヴイィ―ンッ、ヴイィ―ンッ、ヴイィ―ンッ、ヴイィ―ンッ……
ぐぢゅぅッ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐぢゅぅぅぅっ……!

「ひぃっ、ふあぁぁっ、はぁぁっ……い、イクぅ、佐緒梨ぃっ、いっちゃうぅぅぅっっ……はああっ、はああぁぁんんんんっ!!」

わたしは、あごを突き出して喉元をさらして絶叫してた。
淫乱な佐緒梨を見せ付けるように、お尻をブルブル震わせて背中を湾曲させて、ついでにおっぱいも揺らせて……

お仕事でも見せない、サリーじゃない佐緒梨で絶頂しちゃった。
大ッ嫌いな男の前で、笑われながら感じさせられちゃった。

「ううぅ……はあぁ……ああぁ……」

視線がすぅーって落ちていく。
ひざが床に付いて、両手も引っ付いて、それと同時に意識が薄くなっていく。

頭の記憶が、さっき囁かれた住田の言葉を再生した。

「このバイブは、俺からのプレゼントだ。
1日早いクリスマスプレゼントだ」って……

そして、「明日の夜、また来るからな。
そのときに、俺の女になるか決めてもらう」って……

わたしは、勢いよく閉まるドアに向かって呟いていた。

「そう思うんだったら抜いてよ!
今すぐ、このお化けバイブ、引き抜いてよ!
佐緒梨……明日からあなたの彼女なんでしょ!」って……



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白い男























(11)


12月 24日 日曜日 午後7時30分   野村 春樹



「あ、雪だ……」

僕は、空を見上げた。

真っ黒な空間から降ってくる真っ白で冷たい粉粒が、手のひらに触れては水玉に変化する。

「今夜は積もるかしらぁ?
そうしたら、ふふっ、ホワイトクリスマスだよねぇ……」

どこからか、舌足らずな声が聞こえた。
立ち止まった僕の横を、お酒の匂いをまとわり付かせたカップルが通り過ぎていく。

「確か、この辺りのはずなんだけど……」

僕はメモ用紙に書かれた住所をもう一度読み直すと、周囲を見回した。

目がチカチカしそうな派手なネオンに、大音量で流れるクリスマスソング。
客を呼び込もうと必死の店員と、喧嘩かなって思うくらい大声で叫んでいる酔っ払いのおじさん。
目の端でしっかりとチェックしてしまうアダルトなお店。
そして、チラチラと見掛けるちょっと目付きの怖いお兄さんたち。

やっぱり、昼間とは雰囲気が全然違う。
歩いている人も空気だって、別の世界みたいに……

「本当にこんな所にいるのかな?」

人の波が途切れた交差点で、もう一度空を見上げた。
そうしたら、いつもの優柔不断な僕が話しかけてくる。

友人から缶ジュース1本で仕入れた情報なんて、所詮こんなもの。
さっさとお家に帰って、クリスマスケーキをパクついている方が春樹らしいって……

「やだぁ……こんな所ではダーメ♪
ね。続きはホテルで……」

電柱の影からうらやましい……違った、いやらしい女の人の声が聞こえた。

「……やっぱり、帰ろうかな?」

ぽつりと呟き、完全に足が止まった。
そして、渡ったばかりの横断歩道で回れ右をする。
くちびるを噛み締めて、ポケットに突っ込んだ手のひらで拳を作りながら歩き始めた。

いつのまにか、大粒に変わった雪が目の中に飛び込んでくる。
ぼやけて滲んだ居酒屋の看板が、真っ赤に輝く塊となって僕の横を過ぎ去っていく。

早足で歩いていた。
走っていた。

ローソクの明かりが灯ったケーキを思い浮かべて……
たったひとりで食べる、味気ないケーキを想像して……

「はあ……はぁ……はあぁ……」

信号が赤に変わり、僕の足が自然に止まった。

まだまだ降り続く雪の中ように膨らむ歩行者の群れ。
その真ん中で、守られるように佇んでいる僕がいる。
独りで立っていられない僕がいる。

やがて信号が青に変わり群れが動き始めたとき、視界の端で白い影が動いた。
思わず立ち止まった視線の先で、真っ白なスーツに身を包んだ長身の男が細い路地へと入っていく。

ドクッ、ドクッ、ドクッ……!

なんだろう? この気持ち……?

運動したのと全然違う意味で、心臓が高鳴っている。

僕は、引き込まれるようにその男を追い掛けていた。
まるで北風と戯れるようにして歩くその男に魅了されて……

細くて入り組んだ路地を歩いていく。
ここがどこなのかなんて、もうわからない。

いつのまにか、男の白い背中も消えている。
でも、何かに誘われるように歩いている。

そして、2度3度、角を曲がった突き当たりで立ち止まった。

目の前に立塞がる古びたアパートと、入り口付近で所在なげに佇む女性の姿を目にして……
当たったことのない僕の勘が、探し物はここだよって、耳打ちしてくれて……

「あのぉ……この辺りに、二宮さんって方、住んでいませんか?」
二宮佐緒梨というんですけど……」

「ああ、いるよ。このボロアパートの2階にね」

思い切って訊いた僕の問いに、女の人は沈んだ声で答えてくれた。
低くて暗くて聞き取りにくい声。

でも、確かに今いるって……!

僕は、その人に頭を下げると、急いで錆付いた階段へ向かおうとした。

「待ちな……!」

「えっ?!」

「坊や、カネは持っているのかい?」

「か、カネって……お金のことですか?」

「ああ、そうだよ。
こっちも商売だからね。
ただで、サリーに会わせる訳にはいかないよ。
……さあ、いくら持っているんだい!」

その人は、靴先から頭の頂上まで目線を走らせると、僕の目を見て言った。
さっきまで寂しそうにしていたのに表情が一変している。
伏せ目がちだった瞳が細い眉毛と一緒に上へと吊り上って、整った顔が無理矢理に歪まされている。

でも、訳がわからない。
おカネ? それよりも、サリーって誰?
この人は、誰なの?

「よ、4千円くらい……」

「ふっ。坊や、それじゃぁ無理だね。
うちは、最低5千円からなんだよ」

財布の中身を見せた僕を見て、その人は小さく舌打ちした。
でも、視線は外してくれない。
じっと僕の目を……その奥まで貫き通すような鋭い眼差しを注ぎ込んでくる。

「……坊や。あんた佐緒梨を……いや。
……ほ、ほらぁ、他になんかないのかい?!」

「ちょ、ちょっと?!
なにするんですか? やめてください……」

指がジャンパーのポケットをかき回して、ズボンのポケットまでまさぐっている。
そうして、ちょっとしわのついた2枚の紙切れをつまみ上げていた。
もうすぐ期限が切れるチケットを……

「ふーん……
これは、代金の代わりにもらっておいてやるよ。
……いいだろ。付いてきな」

その人は、唖然とする僕を尻目にさっさと階段を上がり始めた。

「なにしてるんだい。坊や。
サリーに会いに来たんだろ?」

「は、はい……」

2階の通路から声がして、僕は駆け上がっていった。

心臓が破裂しそうで息苦しくて……
これって夢かな?
そうだよね。こんな変な話。現実であるわけないじゃないか。

夢……きっと夢……
怖いけど、ものすごく不安だけど……

でも、このまま起こさないで欲しい。
もう少しだけこの世界を彷徨いたいから……
あの子に会うまでは……



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僕の恋人は……佐緒梨? サリー? その1























(12)


12月 24日 日曜日 午後8時   野村 春樹



「いらしゃいま……せ?! あぁっ、えぇっ! の、野村……くん?」

「に、二宮……さん?!」

目の前に佐緒梨さんが立っている。
何も無いガランとした部屋で、全然似合っていないロングスカートを履いて、それなのに上半身はブラジャーだけのちぐはぐとした格好で……

「ふたりとも、なに固まっているんだい。
さあ、早くしないと時間だけ過ぎちまうよ」

「あ、あのぉ……これは……?」

「坊やは黙ってな。
ほら、サリー。なにぼーっとしてるんだい。
お代はたんまりとこの坊やから頂いているんだ。
たっぷりと、お前の身体を使ってサービスしてやりな」

「えっ! あ、あの僕……そんなつもりは……それに……」

「黙れって言ってるだろ!!
聞き分けのない坊やだね」

どすの効いた声が部屋中に響き渡った。

「だから時間がないんだよ。今夜はね……
サリー、後は頼んだよ。
その坊やと乳繰り合って、これからは自分のことは自分で決めるんだ。
いいね! 30分経ったら、また来るよ」

その人は、佐緒梨さんを見つめながら早口に捲くし立てると、部屋を出ていった。

「あ、あのさぁ。二宮さ……?!」

「ごめんなさい。少しの間だけ目をつぶって……お願い」

今度は、佐緒梨さんが僕を見ている。
思い詰めた目をして、学校でも見せたことのない大人の表情で……
それなのに、顔を赤らめながら僕の目をじっと見つめている。

「う、うん……わかった……」

言われるままに目を閉じた。
真っ暗なまぶたの裏で、さっきの女の人の目と佐緒梨さんの目が重なって滲んでひとつになっていく。

カチッ……パサッ……シューッ、スルスルスル……

「い、いいよ。目を開けても……」

「うん……って、えっ、えぇぇぇッ?! 佐緒梨さん……どうして……?

目の前には、さっきと同じ場所に佐緒梨さんが立っていた。
可愛らしいブラジャーも野暮ったいスカートも全て床に脱ぎ捨てて、両手を横に引っ付けて立っている。
真っ白な肌を全部晒した佐緒梨さんが、強張った顔で僕に笑い掛けている。

「ど、どうかな? わたしの身体……綺麗かな?」

「あ、ああっ……う、うん。きれい……だよ」

僕は、曖昧に何度も何度もうなづいていた。
目を開けたら全裸の佐緒梨さんが立っていて……

おっぱいも乳首もおへそも、僕よりもはるかに薄い下の毛に、その下からちょろって顔を覗かせている割れ目まで……

生まれて初めて見る本物の女の人の裸。
まさかそれが、佐緒梨さんだなんて……

もう、訳なんかわからなくたって構わない。
もう、夢だって構うもんか!
どんなに揺すられたって、絶対に起きないから!

「ふふっ、じゃあ今度は野村君の番。
じっとしててね。わたしが脱がせてあげる」

「あ……ああ……」

その言葉が魔法の呪文だったのか、僕の身体は金縛りに合ったように固まってしまった。

彼女の細い指が、着ているモノを上から順番に脱がせていく。
続けてズボンのベルトを緩められ、フロントのファスナーが下された。
指の背中が肌を刺激しながら足首へと引き下ろされていく。

「あ、あの、下着は……その……」

「だ~め。わたしに全部任せて……」

僕の前でひざ立ちになった佐緒梨さんが悪戯っぽく笑った。
白い肌をピンク色に染めて、声を震わせながら……

スルッ……スススゥーッ……

「おっきい……野村君のモノすごく大きくて、硬くなってる」

「そ、そんなに見ないでよ。恥ずかしいよ」

彼女の視線を感じた僕の息子が、気を良くしてひとまわり大きく膨らんだ。
そんなバカ息子に腹が立って情けなくて、両手が顔を覆い隠そうとする。

「すーぅっ……はあーっ……すーぅっ……はあーっ……」

「う……うぅっ……」

僕は呻き声を上げた。
彼女の何度も繰り返す深呼吸が、僕の息子を暴発させようとする。

そして……

「野村君……ううん、春樹君。
お願い!……さ、佐緒梨と……せ、セ、セックスして……抱いて!……ね、お願い……」

佐緒梨さんはそう言うと、堅そうな床の上に仰向けに寝転がった。
寝転がったまま折り曲げた両ひざを小さく開いては閉じを繰り返して、「ああぁっ」って声の混じった溜息を洩らして……

くちびるだけを動かした。
僕の耳にも佐緒梨さんにも聞こえない秘密の言葉で……
『みないで……』と……
その後、今度は「春樹君……見て……佐緒梨のあそこ……」って、はっきりとした言葉で……

ゴクッ……ごくっ……

口の中に溜まる唾液を喉へと押し流した。
お腹の底から湧き上がる熱いモノを必死で抑え込みながら、僕は見ていた。

佐緒梨さんを……
佐緒梨さんの大切な処を……
天井の一点を見つめたまま、真っ白な両足をМの字にひらいた中心の楕円形の性器を……
キラッて光って、真っ赤な割れ目から覗いているヒダヒダを……
その上の尖った肉の突起を……

「さ、さあ……早く……しよ……」

佐緒梨さんが僕を呼ぶように両手を持ち上げた。
かすれた声で甘い声をつくって、固まったほっぺたを無理矢理ほぐして笑い掛けて……

「あ、ああ、佐緒梨さん……佐緒梨っ!」

「うれしい♪♪ 春樹君……はるき……」

くちびる同士が触れ合っていた。
お互いの舌が絡み合っていた。

ぷにゅぷにゅとした佐緒梨のくちびるが可愛くて、一生懸命、僕の舌に這わせる佐緒梨の舌が健気で……
流れ込む唾液がフルーツのような香りがして……

くちびるを吸いながら、僕は佐緒梨を見ていた。
佐緒梨も僕を見てくれた。

「ぷはっ、はあ……はるき、佐緒梨のおっぱいも舐めて……」

佐緒梨が身体をずらしてくれた。
両腕を床についた僕の下で、ちょっと小振りな半円球のボールがふたつ並んで姿を現している。

ちゅぷぅ、れろ、れろ、れろっ……

「ああはぁ、んんっ、はるきの舌がおっぱいのお肉に……ふはぁ、気持ちイイ……いいよぉ」

女の子の感じる声が頭の上から聞こえた。
佐緒梨の激しくなる胸の鼓動が、ひっついた肌を通して伝わってくる。

柔らかいお肉に吸い付きながら、舌で硬くなった乳首を刺激した。
口から溢れる唾液を乳房にまぶしながら、赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸うように……
乳首から甘いミルクが流れ出すと信じて、舌先で先端を転がした。
前歯をそっと、根元にあてがってみた。

「あっ! ああぁっ……だ、だめぇ、そんな刺激ぃ……変になっちゃうぅっ!」

佐緒梨の細い肩がビクビクしている。
ひらいた太ももが僕の腰を左右から挟んでムズムズと揺すった。

床の上でだらりとさせていた両手が僕の頭を撫でて首筋を撫でて、感じる声と連動するように指先を肌に食い込ませた。

「はんむぅっ、ぐしゅ、れろ……佐緒梨ぃ、気持ちいい?」

「ひあぁぁっ、ダメ……乳首ぃ噛まないでぇっ……はぁんっ」

舌が乳房を突くたびに、佐緒梨は鼻に掛った甘い声を上げた。
前歯が乳首を左右に揺らせると、肩に回した佐緒梨の両手が僕の顔をふくらみに埋めた。

もっと、刺激して!
もっと感じさせて!
なにもかも忘れさせて!

佐緒梨の心の声を聞いたような気がして、僕は舐め続けた。
いつまでも噛み続けた。

じゅる、じゅる……れろ、れろ、れろ……

「ああぁ、ふぁあんんっ……は、はるきぃ、おねがぃ……い、挿れて……」

そうしたら、小さな声でお願いされた。
感じる声に紛れ込ませるように、そこだけ細い声で佐緒梨はささやいていた。

「はあぁっ、は、早く……佐緒梨……もういいから……準備できてるから……」

今度は、声を振り絞るようにしてささやいてきた。

「んむぷっ、さ、佐緒梨? いいの? してもいいの?」

「はあ、はぁ……うん、いいよ。
わたし……初めてじゃないから……
だから……気にしないで。佐緒梨に、はるきの……お、おち○○んをいれてぇ」



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僕の恋人は……佐緒梨? サリー? その2























(13)


12月 24日 日曜日 午後8時15分   野村 春樹



顔を上げた僕の視線が佐緒梨とぶつかった。
潤んだ瞳と首筋まで真っ赤に染めた彼女が、コクンってうなづいた。

挟み込んでいた太ももが左右にひらかれる。
肩に触れていた両手が、ずり落ちるようにして僕の手首を握り締めてきた。

佐緒梨とセックス……!!
そうだ、僕は彼女とひとつになるんだ!

心臓が暴発しそうになって、額からぼたぼたと汗が振り落ちて、それが白い肌を濡らせて……
僕は、カチカチのおち○○んに右手を添えると入り口を探した。

無防備にひらかれた女の子のあそこを覗いてみたいという、願望を封じ込めて……
羞恥色に染まった佐緒梨を見ていると、とてもそんな行動を起こせなくて……

熱くなった肉の挟間に先端を押し付けた。
知識がないまま、何度も跳ねかえされながら、割れ目の奥にある膣に挿入しようとした。

くちゅ、くちゅ、ぐちゅ……

「あんぅぅっ……もうちょっと上……あっ、あぁぁ、そこ違っ……ううん、行き過ぎだよ」

「はあ、う、うぅ。こ、ここ? はあっ!」

ズズッ……

「あぁぁ、そう、そこぉっ……はるき! 挿れてぇっ! 一気にぃっ! んくぅっ、ふぁぁぁっ」

ズズッ、ズズズッ、ズリュゥゥッ!

僕は、言われるままに腰を突き出した。

「う、ううぅっ。熱い! 佐緒梨の膣(なか)、狭くて熱いよ」

「んあっ! あっ、ああぁ、わたしもぉ……感じるぅっ、はるきの熱いモノ、感じてるよぉっ! はあぁぁんんっ」

僕の下で、佐緒梨が笑った。
白い歯を覗かせて笑顔を見せてくれた。

顔をくしゃくしゃにして、ほっぺたまで涙で濡らせて……

生まれて初めての女の人の膣(なか)。
太ももと太ももが密着して、恥ずかしい下の毛どおしが絡み合って、それに、にゅるってしてて、やっぱり火傷しそうなくらい熱くて……
柔らかいお肉の壁が僕の硬いモノを包み込んでいる。
幸せな安堵感に心が満たされていく。

「さ、さあ……動いて……
あ、あぁ、春樹のしたいように……していいから……」

「それじゃ、佐緒梨。いくよ……う、うぁ……」

ずりゅッ、じゅちゅ、ずりゅッ、じゅちゅ……

腰を上下に動かした。
彼女と身体を重ねたまま、お尻を持ち上げるようにしておち○○んを引き抜いて突き刺した。

「はぅっ、はぁぁぁっ……春樹の硬いのが……入ってくるぅっ……あぁぁんっ」

とってもぎこちないのに……
おまけに、僕のほうが気持ち良すぎて、ついつい体重を乗せちゃうのに……

佐緒梨が気持ちよさそうな声を上げた。
細いあごを上向かせて、白いのどを仰け反らせて、下手くそな腰使いに感じようとしている。

「あぁ、ああぁっ……春樹ぃ、もっと……もっとメチャクチャにぃっ! あふぅっ、はあ、忘れさせてぇっ!」

佐緒梨の指が、手のひらの下に滑り込んでくる。
床の上で手のひらと手のひらが重なり合って、指どおしが固く固く握り合わされている。

ずりゅッ、にゅちゅ、ずりゅッ、にゅちゅ……

「はあ、はぁ……佐緒梨ぃっ! さおりぃっ! 大好きだぁっ! きみのこと……うぅっ……大好きだよ!」

「んぅっ、んん……わたしも、佐緒梨もぉっ! はるきのこと……好き! 大好きだよ!」

僕は腰の上げ下げを加速させた。
弾けそうなおち○○んを『もう少しだけ』って、なだめながら熱くて蕩けそうな肉の挟間に突き入れた。

堅くて冷たい床の上なのに、僕の体重まで支えてくれる佐緒梨が愛おしくて……
下手くそな僕のセックスに、一生懸命感じてくれる佐緒梨といつまでもこうしていたくて……
心から気持ちよくなって欲しくて……
もっともっと乱れてエッチな表情が見たくて……

「い、いいよぉ。春樹ぃ、上手だよぉっ! 春樹の……お、おち○○ん、気持ちいいよぉ」

恥ずかしい処どおしが激しくぶつかった。
僕のおち○○んが佐緒梨の感じる蜜を割れ目の外まで掻き出していく。

太ももがひっつくたびに『ぴちゃっ、ぴちゃっ』って音がして……
おへそが擦れ合うたびにヌルヌルして……

「はあ、ううっ……さ、佐緒梨の……お、おま○こも、気持ちイイッ!」

理性の吹き飛んだ頭の中にいるのは、佐緒梨だけ。
小さな鼻から懸命に息を吸い込んで、ピンク色のくちびるから甘い息を甘い声で泣く佐緒梨だけ。

「春樹ぃ……出してぇ……はぁぁ、膣(なか)に思いっきり出してぇっ! んんっ、ちゅぷっ、んちゅぅぅ……」

僕は、くちびるに吸いついた。
佐緒梨も舌を伸ばして、僕の舌を舐めてくれた。

舌と舌がひとつになって、重ね合わせた手のひらを強く強く握りしめて……

佐緒梨が腰を持ち上げた。
僕のおち○○んがもっともっと深く挿入されるように、打ち込むタイミングに合わせてくれた。

「ふぁぁっ、んんっ、深いぃっ、春樹のおち○○んが……佐緒梨の子宮に……ひぁぁぁぁんん」

「うあっ、もう……我慢できない! いくよ!」

「うん、いいよぉっ! 佐緒梨の膣(なか)に射精してぇっ!……子宮に吹きかけてぇっ!」

柔らかいお肉が、おち○○んをギューゥって締め付けた。
引き抜こうとする亀頭を、包み込んだ肉の壁が襞が刺激した。

同時に、オナニーとは全然違う電気がお腹を胸を切ないものと一緒に流れて……
僕は、なにかを叫びながら思いっきり深く強く挿入した。

どぴゅっ、どぴゅっ、どぴゅぅぅぅぅっっっ、ドク、ドク、ドクッ……!

「はぁっ、くうぅっ! 佐緒梨っ! さおり……」

「はあっ、くぅぅっ……熱いぃ! 春樹の熱いのがぁっ……佐緒梨の膣(なか)にぃっ……うれしい……」

ゾクゾクって背中が震えた。
お腹の中が……内臓が……全部消滅して、ちょっと空しい開放感だけが漂っている。

佐緒梨が泣いている。
汗にまみれたおでこに乱れた髪をひっつけて、鼻をすすって涙を流している。

僕も、肌を密着させたまま泣いていた。
しょんぼりとしたおち○○んを熱く火照った割れ目に沈めたまま、声を殺して泣いた。

心臓と心臓が重なって、どっちの音かごちゃ混ぜの激しくてやるせない鼓動。
それを聞きながら、いつまでもそうしていたかった。
ベッドも布団もない堅くて冷たい床の上だけど、普通の恋人のように抱き合っていたかった。

それなのに……

「うぅっ、ぐすっ……ありがとう、春樹。
……あなたとのセックス……うっく……佐緒梨の一生の思い出にするね」

佐緒梨は、握り合っていた手を振り解いていた。
そっと僕の両肩を持ち上げると白い裸体を横に滑らせた。

「どうしたんだよ? 何、言ってるんだよ?!
僕はまだ……佐緒梨と一緒に……」

「……残念だけど、もう時間なの。
春樹……ううん、お客様。今夜はサリーのスペシャルメニューをご利用いただきありがとうございます」

佐緒梨は、僕に向かって丁寧にお辞儀をした。
まるでホテルのフロントの人のように、作られた笑みを浮かべて……
僕の下で見せた恋人の顔を消し去って……

「……どうして?」

見上げる僕に佐緒梨は背中を向けた。
前屈みになって、脱ぎ散らしたスカートに片手を伸ばした。

肩甲骨の辺りが真っ赤になっている。
腰骨の付近も左右に膨らんだお尻も、僕が動いて床にこすられて、痛々しいくらいに真っ白な肌が真っ赤に染まっている。

そして、さらに前屈みになった。
見られるのも構わずに、お尻とその下にある真っ赤な挟間を僕の前に突き出した。

太ももの裏側を白い液体が垂れ落ちていく。
まだひらき気味の割れ目から、僕と佐緒梨の体液がつつーって流れ落ちていく。



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佐緒梨を守れるのは……? 























(14)


12月 24日 日曜日 午後8時25分   野村 春樹



♪♪……♪♪……

突然、携帯が鳴き出した。

ロングスカートとブラジャーを身に着けた佐緒梨が、携帯を耳にあてながら何度もうなづいている。

「……うん……うん……わかった」

携帯をポケットにしまった佐緒梨の顔に険しさが増した。
その表情のまま、取り残された僕の服を手早くかき集めた。

「春樹君。早く服を着て!
あの人が……あの男がこのアパートに向かってるって……!
今、お義母さんが……」

同時に、ギギーッって鳴いてドアがひらいた。
中に入って来たのは、さっきの女の人。
たぶん、この人が佐緒梨のお母さん? だと思う。

そして、もうひとり……
背の高い白い影が外の通路に立っている。

「坊や、すまないねぇ。
まだ30分経っていないんだけど、ちよっとばかし予定が狂っちまってねぇ。
……で、時間がないから手短に話すよ。
佐緒梨はね、今夜から怖ーいおじさんの女になることになっているんだよ。
わかるかい? その意味が?
そうさ、その男の性のお人形にされちまうのさ。
これからは、朝から晩までその男に、身体を玩具にされる。好きなときに好きなように、あの男に犯される……」

「お、お義母さん! もういい。
そんな話、春樹君にはしないで!
わたしは……覚悟を決めてるから……」

「ふふふ、覚悟ねぇ……
佐緒梨、勘違いするんじゃないよ。
あたしはねぇ、明日から新しい仕事を始めることにしたのさ。
外にいる男と一緒にねぇ。
その時には、佐緒梨……あんたが足手まといになるんだよ」

「足手まとい……?」

「そうさ。だいいち、血も繋がっていない、籍も入れていないあんたの面倒を、これ以上みるなんてあたしは真っ平ごめんだね。
だからと言って、未だに自分の立場もわかっていない住田に、あっさりとあんたを差し出すのも癪だしね。
……そこでだい。坊や。
お前さんに訊くけど、佐緒梨の身体は気に入ってもらえたかい?」

取り敢えず下着だけを身に着けた僕に、その人は視線を向けた。
口調は刺々しくて険しいのに、目だけでそっと笑い掛けて……

「……はい!」

僕は、力を込めてはっきりと答えた。
ついでに、大きくうなづいてみせた。

「そうかい。……なら、決まりだね。はははは……」

その人は大声で笑った。
涙混じりの声で僕と佐緒梨の顔を交互に見比べながら、お腹の底から辛いモノを全部吐き出しているように、僕には思えた。

涙が溢れてくる。
なんだろう?

あまりにも話が突拍子すぎて……
まるで見たこともない映画の世界に放り込まれたみたいで……
自分の一生を決めるターニングポイントが、前触れもなく突きつけられて……

でも、勇気も希望も溢れてくる。
なんでだろう?

優柔不断で頼りない僕だけど……
今まで、嫌なことや辛いことから頭を抱えて逃げ回っていた僕だけど……

僕と同じように涙ぐむ佐緒梨を見て、僕の身体の下で僕の全てを受け入れてくれた佐緒梨を、愛おしくて、命を賭けてでも守るべき人だと確信して……

そうしたら、下着姿のまま通路に飛び出していた。
部屋の中から佐緒梨の悲鳴に似た声が聞こえたけど、そんなの無視して、白いスーツの男の前にパンツとランニングシャツの姿で立っていた。

とっても怖いけど……
でも、とっても怖いおじさんから佐緒梨を守ろうとして……

やがて、キィーッって、荒っぽく車が停まる音がして、カタカタとだらしない靴音がアパートの外階段に響いて……

身体中が恐怖と緊張で凍りついて、奥歯がカチカチ鳴った。
冷たい北風に吹かれて、今頃になって自分の惨めな姿に後悔した。

パンチパーマの頭が揺れながら見えてきた。
浅黒い肌と細くて射すような両目が空威張りする僕を見据えたその瞬間?!

誰かが僕を引っ張った。
白いスーツに身を固めた背中が、僕の前に立ち塞がっていた。

「よぉ、須藤のババァ。これは何の真似だぁ?!」

「あらぁ、住田さん。あいにくだったわねぇ。
あたしねぇ。今日からこの人と新しいビジネスを始めるの。
だからぁ、もう、あなたの言いなりにはならないわよぉ。
ふふふっ、サリーもね……♪♪」

「なんだとぉ! このあまぁッ! 舐めやがって!」

男の声が殺気だっている。
メガネの奥にある視線が、佐緒梨のお母さんを睨んで、白スーツの男を見て、僕の全身をジロって眺めて、佐緒梨をいやらしい目で見つめた。

「どうしたのさ? ショックで動けないのかい。
この街を仕切ってた割には、案外だらしないんだねぇ」

「くッ、言わせておけば、いい気になりやがってぇッ!
ぶっ殺してやるッ!!」

男が動いた!
叫ぶと同時に、2メートルくらいあった間合いが一気に縮まってくる。

「退けぇッ! 邪魔だぁッ!」

男は、立ち塞がる背の高い人を無視した。
一直線に、僕? 違う!
僕の腕を掴んだままの佐緒梨のお母さんに飛び掛かってきた。

「ひぃぃぃっっっ!!」

スーツが裂けそうなくらい勢いよく振りかざした拳に、僕は女の子みたいに悲鳴を上げた。
それは真っ直ぐにおばさんの顔めがけて打ち込まれていく。

バシッ! 

「なッ! なにッ?!」

鋭いパンチを、白スーツの男の左手が払いのけていた。
同時に、素早く身体をひねると、住田の鳩尾(みぞおち)深くに右手の拳をめり込ませた。

ドスッ!!

「うッ! うっグッぅぅっ!!」

まるで風。
一瞬のまばたきの間の出来事……

住田の身体が『く』の字に折れ曲がっている。
足元をふらつかせながら、胃液の混じった唾液を吐き出した。

強い! たった一発でこんな怖い人を倒してしまうなんて……

でも、それを見届けた途端、僕の腰から力が抜けていく。
目線がずるって下がって、「危ない」って言って佐緒梨が支えてくれた。
隣では、佐緒梨のお母さんが、やれやれって顔で溜息を吐いている。

「うっ、うう……だ、誰だぁ……てめぇ……」

「ふーん。私のことをご存じないとは……
では改めて。
副島と申します。建刃会の住田様」

「そ、副島ッ?! 時田の……」

ハスキー声で話しかける男の氷のような冷たい表情。
凍りつかせそうな視線。

それを見上げた住田の顔から戦意が喪失していく。
見る間に青ざめていく。

「ええ、そうです。
あなたの親分さんから、そっくりこの縄張りをいただいた時田グループの副島です。
以降、お見知り置きを……
……というより、覚えてもらう必要もありませんかぁ。
おそらく、あなたにはハッピーなクリスマスがやって来ないでしょうから。
ククククッ……神に見放されたあなたにはね……」

「た、頼むっ! 消さないでくれ……俺はまだ……」

「ククククッ……死にたくはないですかぁ?
だったら、さっさとこの街を離れることです。
そして、2度とその顔を見せないことです。
親分さんの顔に泥を塗ったその面をね……」

住田は、おぼつかない足取りで帰って行った。
もう、ここへは2度と来ない。
素人の僕にもそんな気がしていた。



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