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放課後の憂鬱   第9章  初めてのキス(7)


  
                                          


【第9章 (7)】



        
        「・・・あ~あ、それにしてもやりすぎだな。学校の中であそこまでし
        ちゃあまずいよなぁ。なぁ、藍ちゃん?」

        高科はそう藍に振ると、ここから覗いてみろ、というしぐさで藍を扉の
        隙間から中を覗かせようとした。
        藍はそれに誘われるように再び中を覗き込んだ。
        中では吉田とゆうこが全裸で抱き合い、キスしている。

        (あぁ、あんなこと・・してる・・)

        藍はドキドキしながら覗き込んでいた。



        「藍ちゃん!」

        真剣に覗き込む藍に高科が声をかけた。
        藍ははっと我に返り答えた。

        「・・・えっ? あっ、先輩、なんです・・・うっ!」

        無防備に振り返った藍に、高科は突然唇を重ねた。

        (・・・うっ、うっ・・あっ・・・・)

        藍は何がなんだかわからなかったが、少しして目を閉じていた。
        高科のキスは、いままで藍が経験したことがないほど激しかった。

        高科は藍を抱きしめた。
        藍は吸い込まれるようにして高科に身を委ねた。

        やがて高科は舌を藍の口の中に潜り込ませてきた。
        藍はされるがままに受け入れていた。

        それは一瞬の出来事だったのかもしれない。でも藍には長い、長い時間
        に思えた。

        高科が唇を離した。しかしまだ抱きしめられたままだった。

        「・・・せん・・ぱい」
        藍は高科の胸に顔を埋めた。

        藍はそれまでキスをしたことがなかったわけではないが、ほんの一瞬
        唇を合わせる程度のものだった。
        この前、真里に唇を奪われた記憶が、一瞬頭に浮かんだ。しかしあれは、
        まったく別のものだった。不快ではなかった。
        が、高科とのように、胸が張り裂ける思いではなかった。
        藍にとって、それはファーストキッスだった。



        藍はこのまま時間が止まってしまえばいい、と思った。が、すぐにその
        幸せな時間は過ぎ去っていった。

        「あれ? 先輩! 今日は遅くなるんじゃ・・あっ」

        伊藤がさちと向こうからやってきて、藍はすぐに高科から離れた。
        さちが伊藤に「バカッ、余計なこと言わないの」と言いたそうに肘鉄を
        したが、藍はそんな様子には気が付かなかった。

        「おう、今日はな、用事がなくなったんだよ。さぁ入るか・・」

        高科がそう言うと藍が慌てて 「えっ? まだ、だめ・・」と止めた。
        が、高科はさっさとドアを開け、中に入っていった。
        藍も下を向きながら高科に続いた。

        藍が顔を上げると、まるで何もなかったかのように、吉田もゆうこも着
        替えて座っていた。

        「・・あれ?」
        藍は不思議そうに思わず声を出してしまった。

        「ん、どうした?」

        高科が藍に聞くと、「えっ? あっ、何でも・・ないです。」と答えた。
        何がなんだか、わからなくなっていた。



        「さぁ、今日もハードだぞ!気合いれて行こうな!」
        高科がそう言うと、皆が立ち上がり、準備をはじめた。

        「今日は頼むよ、藍ちゃん。休んだ分、取り戻してな!」
        高科はそう言うと藍を肩をぽんと叩いた。

        藍は、なんともいえない連帯感に嬉しくなった。
        さっきの熱いキスが、高科への思いを強めていた。
        同時に高科が、もしかしたら自分のことを好きでいてくれてるかも、と
        期待に胸を膨らませていた。





※ この作品は、ひとみの内緒話管理人、イネの十四郎様から投稿していただきました。
  尚、著作権は、「ひとみの内緒話」及び著者である「ジャック様」に属しております。
  無断で、この作品の転載・引用は一切お断りいたします。


同性の先輩や後輩達に苛められる女子○生ひとみの
アブナイ体験とSMチックな官能小説




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放課後の憂鬱   第10章 陥穽(1)


  
                                          


【第10章 (1)】



        
        みんなが撮影の準備に取り掛かっている中、藍はまだキスの余韻に浸り、
        ボーっとしていた。

        「藍、藍ったらぁ! ボケッとしてないで手伝ってよ!」

        ゆうこがぼんやり立っている藍に言った。

        「・・あっ! ごめん・・」

        藍は慌ててみんなに混じって、準備を手伝い始めた。
        手伝いながら、藍はゆうこをちらっと見た。ゆうこは何事もなかったか
        のように作業している。
        吉田もゆうこと同じように準備をしている。

        藍は二人が抱き合っていた光景を思い出していた。

        (・・そうかぁ・・吉田君とゆうこ、付き合ってるんだ。なんか・・い
        いなぁ)

        藍はまだ特定の男性と、同じ年頃の男性と親しく付き合ったことはなか
        った。
        仕事と学校を忙しく行ったり来たりしているのだから、それは仕方のな
        いことだった。しかし藍の年頃で「彼氏」が欲しいと思うのは当然だっ
        た。
        だから藍は、吉田とゆうこのことを考えると、羨ましくて仕方なかった。

        藍はキスをされたことで、ますます高科のことが気になっていた。いや、
        好きになっていた。
        準備を手伝いながら、今度は高科の方を見た。その時、高科も藍を見て
        いた。
        藍は高科と目が合ったのが急に恥ずかしくなり、目を背けた。しかし、
        すぐにまた高科を見た。
        すると高科は、まだ藍のことを見ていた。

        (・・・先輩とまた目が合っちゃった・・もしかしたら・・ずっと見て
        る?)

        高科が藍の方へ、さりげなくやってきた。そして、藍の頭をこつんと叩
        くと、
        「ちゃんとやってるかぁ?」と微笑みながら言った。

        「や、やってますよぉ。」
        藍がそう答えると、高科はウインクして見せた。
        それを見て、藍は嬉しくなった。

        (もしかしたら、先輩もあたしのこと・・)

        「先輩!OKっす!」

        吉田が高科に言うと、教室の蛍光灯が消され、代わりに撮影用の照明が
        点けられた。

        「よーし、じゃあ始めるか。伊藤はカメラ、吉田はこっちで俺のサブ・・」

        高科の指示でみんな位置につき始めた。

        照明の消された部室は薄暗い。部室の窓は全て暗幕で遮断されていた。
        が、撮影用の照明が当たる部分は異常に明るかった。
        床の半分は体育のときに使う、灰色のカバーを被せた弾力のある厚いウ
        レタンマットが敷かれていた。それを先程組み立てたセットが3方から
        取り囲み、灰色の壁のようだった。
        まるでその部分は監獄か、取調室のような雰囲気だった。撮影用の照明
        が、その部分に強烈な光を投げかけていた。

        藍が部屋を見回すと、さっきまでの明るい雰囲気が一変しているので、
        胸がドキドキしてきた。得体の知れない不安が湧き上がってきた。

        「藍ちゃんは・・・」
        高科が藍の方を見て言うと、藍はすぐに返事をした。

        「はい・・」
        「まず、ここに立って。照明と音の確認だ。伊藤、どうだ?」

        藍は高科の指示された場所に立った。
        セットの中央だった。あちらこちらから照明に照らされ、眩しかった。
        照明の外にいる高科達が、よく見えなかった。





※ この作品は、ひとみの内緒話管理人、イネの十四郎様から投稿していただきました。
  尚、著作権は、「ひとみの内緒話」及び著者である「ジャック様」に属しております。
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放課後の憂鬱   第10章 陥穽(2)


  
                                          


【第10章 (2)】



        
        伊藤はカメラを覗き込んでしきりに調整している。

        「う~ん、OKです。」

        伊藤の返事を聞くと、高科が藍に声をかけた。

        「さぁ、藍ちゃん、そろそろ着替えてもらおうか。」
        「えっ? 着替えるんですか?」

        藍は朝、高科と会った時に「制服のままでいい」と言われていたので、
        怪訝な面持ちで聞き返した。

        「うん。着替えてね。」
        「・・はい。わかりました。じゃあ、着替えてきます。」

        藍は解せなかったが、素直にそう返事をした。

        (更衣室に行って来なくちゃ・・・)
        (あっ、その前に教室から体操服とって来なくっちゃ・・・)

        藍は、最初から言ってくれればいいのに・・と思いながら、歩き出そう
        とした。
        その時、ゆうこが呼び止めた。

        「ちょっと、藍ってば。どこ行くの?」
        「えっ? 更衣室に・・・」
        「行かなくていいわよ。」
        「だって、着替えろって・・」
        「更衣室じゃなくってぇ・・ここで、着替えるの。」

        「・・ここで?」
        「そう。ここで、よ。みんなの前で、着替えることになってるの。」
        「そんな!?」

        藍は戸惑ってしまった。ゆうこの言う意味が分からなかった。
        すると、今度はさちが寄ってきて話しかけた。

        「藍が休んでる間にね、また台本変わったの。今日はね、主人公が捕え
        られて、囚人服に着替えさせられるトコロ、撮ることになってるの。」

        ゆうこが更に続けた。

        「相談できなくって悪かったけど、藍ったら学校来なかったから。それ
        でねぇ、看守役と区別するためにさ、体操服じゃなくってぇ・・・これ
        に着替えて欲しいんだけど。」

        そう言って藍に、紙袋を手渡した。

        「・・これって?・・」

        藍は袋の中を取り出すと、目の前に広げてみた。光沢のあるオレンジ色
        のレオタードだった。手にとってみると、ゴムのように伸縮性のある、
        かなり薄い生地でできていた。

        藍は慌てて高科に言った。

        「ここでって・・そんなの・・いやです。できません!」

        高科が急に険しい顔をみせた。声も低くなっている。

        「なに、出来ないって?・・・困るなぁ。二日も休まれて、ただでさえ
        時間ないのに・・・そのうえわがまま言われちゃなぁ・・」
        「わがままって・・・そんな!」
        「だってわがままじゃないか! ここまで撮ってきて、今更出来ないな
        んて言われたら・・俺たち頑張ってきたの水の泡なんだぜ? 違う?」
        「で、でも・・ここで着替えるなんて・・」

        すると、横から吉田が口を出した。

        「藍ちゃんが恥ずかしいってのはわかるけどさぁ。藍ちゃんはもうそん
        な事、言えないんじゃないかなぁ。まぁどうしてもいやだって言うなら、
        こっちにも考えがあるけどね。」

        藍は高科が怖い顔になったまま黙っているのと、吉田のいう「考え」が
        どんな考えなのかわからず、ますます不安になった。





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放課後の憂鬱   第10章 陥穽(3)


  
                                          


【第10章 (3)】



        
        明るい照明の中央に立つ藍を、いつの間にか部員達がが取り囲むように
        していた。みんなの顔は、照明を背後から受け表情がよく見えず、それ
        が一層藍を不安を大きくしていた。

        藍は恐る恐る聞いた。

        「・・・考えって?」
        「いままでの撮影の写真とビデオ、俺たちが持ってるんだよ。・・・それ
        ってどういうコトか、わかるよね?」

        吉田の、その言葉で藍は「恐れていたこと」がついに起こったと思った。
        この撮影が始まった時から、いつかこんなことになるのでは、とずっと
        思っていた事・・・しかし藍はここで負けちゃいけないと、勇気を振り
        絞って言った。

        「・・・それであたしを・・脅すんですか?」

        吉田は続けた。

        「あれあれ、藍ちゃん、人聞きの悪いこと言うなぁ。まぁ似たようなも
        のかな。でもこの写真とビデオ、みんな欲しがると思うよ?」
        「・・・・」

        藍が黙っていると、今度は柴田が口を開いた。

        「それにね・・・」

        柴田はそういうと、数枚の紙を藍に見せた。そこにはインターネットの
        アドレスらしいものがびっしりと印刷されていた。

        「・・・なに?・・これ・・」
        「これね、全部インターネットのアダルトサイトのアドレス。ここに写
        真とビデオ、掲載してもらおうと思ってるんだ。」

        「えっ? そ、そんなこと、できるの?」
        「そりゃ、俺たちにはマスコミにコネなんかないからさ。こんなの持っ
        てったって相手にもされないだろうけどね。いい時代になったよなぁ。」

        藍は、写真やビデオを友達に売りつけることぐらいしか考えていなかっ
        た。
        そんなことなら「事務所」で処理してくれる、と思っていた。

        藍自身に経験はなかったが、こっそり撮された写真をもとにナニか要求
        されたという話はよく聞いていた。
        そしてそんな時はすぐ事務所に報告するように、とも言われていた。

        どうせ何人かの目に触れるだけ・・そう思っていたので強気に出ていた。
        しかし、なにやら状況が違う・・

        今度は伊藤が、まるで獲物をなぶる猫のような調子で続けた。

        「もう全部スキャンして、データにしてあるんだ。後は学校のパソコン
        からメールを送信するだけ・・そんな感じかな。それだけで、世界中の
        人にこの作品、見てもらえるんだ。」

        そこで吉田が、ニヤニヤしながら追い打ちをかけた。

        「どう、藍ちゃん。高を括ってたようだけど、きっと仕事なくなっちゃ
        うよね。・・あ、そうでもないか。AVの仕事とかさ。今より忙しくなっ
        たりしてね。」

        藍は予想外の話に、恐ろしくなって体がぶるぶる震えてきた。そんなこ
        とされたら、生きてられない・・

        「お、お願い、そんなこと・・やめて!」

        急に勢いがなくなった藍を見て、吉田が勝ち誇ったように言った。

        「あれ? 藍ちゃん、さっきまでの元気、何処行っちゃったかなぁ? ま
        ぁ俺たちだって、そんなことしたくないさ。藍ちゃん撮影に協力してく
        れたら、そんな事しないよ。」





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放課後の憂鬱   第10章 陥穽(4)


  
                                          


【第10章 (4)】



        
        それまで黙っていた高科が、その時話し出した。

        「おいおい、みんな。それじゃ脅迫みたいじゃないか。藍ちゃんだって
        仲間だぜ。きっとわかってくれるさ。ね、藍ちゃん。一緒にこの映画、
        最後までやってくれるよね。」

        そう言って藍を手招きし、セットの裏に藍を連れ込んだ。

        みんなから見えない場所にまでくると、高科は小声で言った。

        「・・・藍ちゃん、ごめんな。藍ちゃんが出来ないって言うのはよくわ
        かる。でも、みんなこの作品に賭けてるんだ。藍ちゃんにとってはただ
        の部活なのかもしれない。藍ちゃんの仕事に比べると、遊びみたいなも
        のなのかも知れないさ。・・けど、みんなにとっては違うんだよ。真剣な
        んだ。だからあんなきついこと言ったんだと思う。そこを判ってやって
        欲しい。それに・・・」

        「・・それに?」
        「俺、ほんとは藍ちゃんのこと、好きなんだ。藍ちゃんみたいなアイド
        ルに、こんなこと言ったって無駄だって判ってるけどさ。でも、その思
        いがこの作品に詰まってるんだ。藍ちゃんのこと考えれば考えるほど、
        切なくなってこの作品にぶちまけてきたんだ。だからどうしても完成さ
        せたい。」

        高科の切々とした告白に、藍はさっき吉田とゆうこが抱き合っていたの
        を思い浮かべていた。羨ましかったことを思い出した。胸が熱くなって
        いた。
        そして藍は思わず口にしていた。

        「・・・わたしも・・先輩のこと・・好き・・・」

        そう言い終わらないうちに、高科は藍を抱きしめていた。
        藍はその胸に顔をうずめた。そして藍は口を開いた。

        「・・・わかりました。・・やって・・みます。」

        藍の言葉に高科は「ありがとう」と言うと、すぐに藍の唇に自分の唇を
        重ねた。
        藍はさっきのキスよりもずっと熱い気がした。

        そして唇が離れると、高科は明るい大きな声で、
        「藍ちゃん、いや藍、頼んだぜ! 俺の言う通りにすれば大丈夫だから。
        さっ、みんな待ってる。」

        二人が元の位置に戻った。高科が、まるで何事もなかったような明るい
        声で言った。

        「藍ちゃん、やってくれるって。さあっ! 撮影開始だっ!」
        高科のその一言で、みんな位置についた。

        藍は後ろを向いて、もじもじしながら着替えを始めようとした。すると
        高科がすぐに指示した。

        「藍ちゃん、そこじゃないんだ・・ここに乗って着替えてくれる?」

        高科のその指示に、伊藤と柴田が机を運んできた。机をウレタンのマッ
        トのすぐ前に置いた。
        高科の指は、その机の上を差していた。

        「・・そ、そんな・・」

        藍は言いかけた。が、高科の顔を見るとすぐに机の上に乗った。先程の、
        セットの裏で言われたこと、その時の高科の笑顔を思い出していた。

        (先輩のためにも・・頑張らなくっちゃ・・)

        そう思った。

        気が付くと、カメラが藍を下の方から狙っていた。明るい照明を浴びて、
        そんなアングルから、カメラを向けられるのは恥ずかしかった。急に耐
        えられないほどの恥ずかしさを感じた。





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