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闇色のセレナーデ 第4話  妹はメス犬奴隷


























【第4話】




(しまった! 見付かっちまったか)

慌てて卓造は、電柱の陰に身を伏せた。
そのまま顔を半分覗かせて、2階の窓ガラスを。目の前に立ち竦む少女を。視線を交互に走らせて様子を探る。

「ふぅ、良かった……セーフみたいだな」

2階の男の表情に変化は見られない。セーラー服姿の少女の背中にも。

だがその時だった。
不意に少女の背中が揺れたと思うと、小さなソプラノボイスが流れていた。

「お兄ちゃん……」

聞き間違いではない。卓造の耳には、少女がそう囁いたように聞こえた。
そして、その言葉の意味を確かめる間もなく、ネイビー色のセーラー服が吸い込まれていた。
『小嶋』という表札が掲げられた白亜の洋館に。

「お兄ちゃんって……あの男と女の子は兄妹なのか? 兄妹で、なぜあんなことを?」

2階の窓から男の気配が消え去り、卓造はレンガ造りの門に近寄った。
ブロンズ製のネームプレートの脇にある、はめ込み式の郵便受けに目を留める。

(小嶋啓治……一番上に書かれてるってことは、きっと世帯主だろうな。えーっと、小嶋美弥子。これが多分母親で……小嶋千佳? チカ? そうだ! これがあの少女の名前だ。千佳だから、メス犬のチカねぇ。それと後は……)

卓造は、わざと読み飛ばした若い男の名前を口にする。

「小嶋和也。たぶんコイツが、千佳の兄貴だな」

2階から見下ろしていた男と、千佳を引き連れていた時の男の顔がぴたりと重なり、まったく変化のない冷たい表情を作る。
『禁忌の交じり合い』『近親相姦』
脳内に背徳な単語が並び、どうしようもないくらいに気持ちが昂ぶっていく。

もう一度見てみたい!
その禁断の想いを胸に秘めて、卓造はただひたすら立ち尽くしていた。



やがて夕闇が漆黒の闇に移り替わり、時計の針は午後11時を指そうとしていた。
皮靴の中でツマ先の感覚が無くなって、もうどれくらい経つだろうか。
真冬の夜空の下、身体の芯まで冷え切らせた卓造は、それでも洋館に変化が訪れるのを待ち続けた。

(おい、いい加減に諦めたらどうだ? 妹を全裸にして街を徘徊させるなんて、そうそう出来やしないぞ。下手をすれば警察沙汰だからな)

寒さに凍える理性が、正論をぶつけてきた。
その声を否定するように卓造は首を振ると、祈る思いで洋館を見つめた。
そして更に30分が経過した頃、その洋館に変化が訪れた。
2階に灯っていた2か所の照明が消えたのである。

卓造は白く吐き出す息を止めた。
用心のため電柱に身を隠すと、じっと気配を探った。

「出て来た……!」

やがて重厚な作りの玄関ドアが音もなく開かれ、続いて金属製の同じく重厚な造りの門扉も開けられる。

「千佳、バイブを落としたりしたら、お仕置きだからね」

「あぁんっ! わかってる……お兄ちゃん……はあぁぁっっ」

それは場所こそ違うが、1か月前と同じ情景だった。
防寒具に包まれた兄の和也が、全裸のまま四つん這いにした妹の千佳を引き連れているのだ。
おまけに少女の花弁には、唸りをあげて運動するバイブまでもが挿入されて。

「うーん、今夜はどこを散歩しようか? 昨日の駅前はスリルがあったけど、お巡りさんに見付かりそうになったからね。そうそう、あの時は千佳。よっぽど怖かったんだね。オシッコを漏らしちゃったでしょ。パシャパシャって恥ずかしい水音まで立てて」

「ふうんっ、イヤっ、聞きたくない……そんな話。千佳、ホントに掴まるって思ったんだから。あ、あぁ、だから、もう……やめよ、こんなこと。千佳……お部屋でなら、お、お兄ちゃんの相手……するから。セ、セックス……するから」

「ダメだよ千佳。そんなワガママを言ったりして。あんまり駄々を捏ねると、寝ているお父さんとお母さんを僕が金属バットで襲ったりするかもしれないよ。それでもいいわけ?」

「ひいっ! ダメぇっ、それだけは……絶対にしちゃ、ダメ。んん、はあぁ……わかった……お兄ちゃんの言う通りにするから……だから」

「そう、分かってくれたんだね。だったら何もしない。その代わり、今夜もいっぱい絶頂して見せてよ。オマ○コに刺さったバイブでね」

ぼそぼそと会話を続ける、和也と千佳。
その声にじっと耳を傾けながら、卓造は二人の後を尾行した。

(なんて兄貴だ、この和也って男は?! 何も知らない両親を人質にして妹を脅迫してやがる。相当な悪だな)

卓造は足音に気を遣いながら、メス犬にされた哀れな妹を見つめた。
凍り付くアスファルトの路面を四つん這いで歩行する姿に、人としての同情を。
両足を交互に引きずるたびに、張り詰めたヒップがプルンと弾けて、花弁を貫くバイブがグリップを回転させながら腰を震わせる姿に、男としての情欲を。

どちらも、正直な卓造の想いだった。
だが次第に、その想いは下半身に引きずられ始めていた。
気弱でチッポケナ正義感は、所詮この程度のものである。
兄妹の姿が人気のない市民公園に辿り着いた時、卓造の精神は情欲側に大きく傾いていた。







闇色のセレナーデ 第5話  淫具の響きは、同士の囁き


























【第5話】




「さあ、千佳。今夜はここで思いっきり鳴いてもらおうかな」

昼間になると子供の声で賑わう遊具広場も、月明かりに照らし出される無人のそれは、物悲しさを通り越して不気味にさえ思えてくる。

「はうぅぅっ、あぁっ……お兄ちゃん、きついのぉ……バイブが暴れて……ふぁっ、わたし、また……」

千佳はここまでの道すがら、既に2回は絶頂を極めている。
突然歩様が止まり、突き出したヒップをブルブルっとさせたかと思えば、上半身を仰け反らせて嬌声をあげる彼女の姿を、卓造は目撃しているのだ。
そして、3回目がまもなく。

「ふふっ、だったら、もっと暴れさせてあげるね。バイブを」

カチッ……! ヴゥゥーンッ、ヴゥゥーンッ、ヴゥゥーンッ……!

「ひゃぁっ! だめぇっ、きつく……しないでぇ。あうあぅっ、バイブがぁ、中でぇ……も、もうっ……イク、イク……イキますぅぅっっ!!」

和也がリモコンを操作したのだ。
明らかに大きくなったバイブの音ともに、千佳が3度目の絶頂を経験させられる。

ビクン、ビクンと何度も両肩が震えた。
愛液で汚れた内股が、膣肉を嬲り続ける玩具をギュッと絞め付けていた。
桜色の唇が空を見上げて、哀しい声で鳴いた。

「あーぁ、イッちゃった。千佳ったらそんなにオマ○コが気持ちよかったの? ちょっと、はしたなく鳴きすぎだよ。でも、イク時にはイキますって。これだけは褒めてあげる。ちゃんと言えるようになったからね」

「んんっ……は、はぁぁ……だって、お兄ちゃんがそうしろって……んぐぅっ」

次の快感の波が押し寄せてきたのだろう。
千佳は砂地に指先を突き立てると、漏れる吐息を減らそうと唇を噛み締めている。
だが、激しいバイブのうねりに蕩け切った恥肉は、少女の乙女心を嘲笑うかのように淫靡な快感をもたらそうとする。

植え込みの陰からその様子を覗いていた卓造は、ズボンのファスナーを引き下ろし、硬くなったペニスをひたすら擦り上げていた。
間違っても、1カ月前の夜みたいに下着の中での射精はごめんだった。
あの時の惨めさは、今でも忘れられない。

しかし今夜も、中途半端な惨めさは付き纏うことになる。
それまで千佳を見下ろしていた和也だが、不意にその顔を上げたのだ。
全てを知っている。
そんな顔付きで、卓三が潜む植え込みに目を向けたのである。

「佐伯さん。そんな所に隠れてないで、こちらへどうぞ」

「ひ、ひいぃっっ!」

もう少しで放出という時になって、卓造は女のような悲鳴をあげた。
和也に見抜かれていたのだ。

「アナタのことは、何もかも調査済みです。ご自宅のアパートも、勤めていらっしゃる会社のことも。ああ、会社と言えば、2千万の受注は目処がつきましたか? それがないと、リストラ候補とか……くくくくッ」

「な、何がおかしいんだ?! お前のようなお金持ちには……俺の……」

立ち上がり、言い返そうとした卓造の声が尻すぼみになって消えた。
急速に萎え始めた肉棒を両手で隠したまま、棒立ちしている。

(もう、何もかも終わりだ。この男は、俺のことを全部調べ上げたうえで泳がせてたんだ。この1カ月間、ずっと)

絶望の二文字が急速に現実味を帯びてきた。
リストラ……無職……ホームレス……
卓造は自棄になったつもりで二人の元へ歩み寄っていた。
ただし両の手のひらは、股間の前で交差させたままである。

「で、出てきてやったぞ。わ、笑うな……!」

「くくくくっ、申し訳ありません。どうやら僕は佐伯氏の自尊心を傷付けたようです。ですが勘違いしないでくださいね。僕はアナタの心根を知ったうえで、同士に迎え入れたいと思っているんですから」

「ど、同士だって?」

突飛もない和也の答えに、卓造は唾を飛ばして聞き返していた。

「ええ、僕にとってたったひとりの同士にね」

呆けた顔をする卓造を前にして、和也が大きく頷いてみせる。

「俺が、たったひとりの同士……」

希望を失った顔をしていた。希望を失った声をしていた。
だが卓造は感じた。腹の中で蠢き始めた心地よい快楽を。
そして足元では、湧き上がるバイブの刺激に限界を迎えた千佳が、4度目の絶頂を可愛い声で知らせた。



それから10分後。和也から信じられない相談を持ち掛けられた卓造は、夢見心地のままOKサインを送る。
社会の底辺へ転落し始めた営業マンにとって、和也から垂らされた糸は細い蜘蛛の糸ではない。両手でしっかりと握れる太いロープだったのである。

「チカ、佐伯さんがお呼びだよ」

話がまとまり落ち着いたのを見計らったように、和也が千佳に声を掛けた。
一瞬首を上げて、はっとした顔をする少女だが、兄の命令は絶対なのだろう。
紅潮した顔をすぐに伏せると、四つん這いのまま卓造の足元へ移動する。

「か、和也君……お、俺はなにも、そんな……」

全裸の少女が目の前で畏まるのを見て、卓造はうろたえた。

「いいんですよ。佐伯さんは、そのままじっとしていて下さいね。チカ、佐伯さんのを、お前のお口で気持ちよくさせるんだ。できるよね?」

「は、はい……お兄ちゃん……」

(俺のを? お口で? 気持ちよく?)

卓造の脳ミソが、和也が口にした単語を復唱する。
その間にも膝立ちになった千佳によって、股間で揃えられた手のひらが解かれる。

「お嬢ちゃん……いや、そこは……その……」

半立ちのまま垂れ下がるペニスを露わにされて、千佳に負けないほど卓造も赤面していた。
そんな中年男の性器を目の当たりにした少女も、目を潤ませたまま言い様のない憂いを湛えていた。

「失礼します」

けれども、千佳の憂いは数秒で消えた。
氷の目で見下ろす和也に射すくめられたのか、目尻に涙を溜めたまま顔を寄せてきたのである。
卓造の股間へと。

(こんな可愛い少女を、1ヶ月間も自由に出来るなんて……)

ペニスを包み込む柔らかな肉の抱擁に、卓造は10分前に和也と交わした約束事を思い返していた。








闇色のセレナーデ 第6話  上唇にはペニスを! 陰唇にはバイブを!


























【第6話】




話は10分前にさかのぼる。

「それで佐伯さん、アナタを同士と見込んでお願いがあるんです。聞いてもらえますか?」

「あ、ああ。構わないよ」

卓造は曖昧に頷いていた。
だが悪い気はしない。同士という単語を口にして以来、和也の目付きが変わったのだ。蔑みから親しみへと。

「既に佐伯さんもご存じでしょうが、僕がペットと呼んでいるチカは妹なんです。血は……繋がっていませんけど」

「要するに、義理の妹ってことかな」

「ええ、そうです。その妹を僕はレイプし、恥ずかしい写真もたくさん撮って、性奴隷になるように脅迫したんです」

「ゴクっ、ゴクっ……そ、それで?」

「チカは最初。ものすごく抵抗しましたが、僕が父親と母親のことを話すと素直に従うようになったんです」

「千佳が逆らえば、キミが寝ているお父さんとお母さんを金属バットで襲うっていう、あれかな?」

「はい、そうです。なんだ、チカとの会話を聞いていらしてたんですね」

抑揚のないしゃべり方をする和也だったが、卓造の指摘に顔を綻ばせてみせる。
他人が聞けば身の毛もよだつ内容だが、この男には悪びれたところが全く感じられない。
寒風に晒されながらバイブの刺激に耐え続けている千佳さえ、目に入っていないようだった。

「それ以降のチカの調教は、順調に進みました。教えた性技も一生懸命覚えるようになったし、こうしてペットの姿で散歩までこなせますしね」

「それだったら別に、俺に頼みごとなんて……」

「それがですね。最近なんだか、飽きてきちゃったんですよ。僕の言いなりになって、セックスして、バイブで絶頂させられて。まあ、他にも色々試したけど、なんかワンパターンというか……」

(なにが、ワンパターンだ。義理とはいえ、こんな可愛い少女の身体を弄んでおいて、それで飽きたなんて! 羨ましいというか、なんというか……)

卓造は、千佳の身体に目を落としていた。
その少女は、聞くのも辛いのだろう。腰を震わせて漏らす吐息に、すするような泣き声を混ぜ込んでいる。

「そこでです。佐伯さんにチカをお貸しするので、アナタの好きなように調教してもらえませんか? 1か月間ほど」

「えっ! 1ヶ月間、俺がこの子を?! 調教?!」

和也の突拍子もない提案に、卓造の声は裏返っていた。
そこから斜め下の地面では、卵のように丸まり掛けた千佳の肢体が、バネ仕掛けの人形のように跳ねた。

「もちろん、これだけの事を頼むんです。佐伯さんへの報酬は考えています。アナタが抱え込んでいらっしゃる2千万円の受注の件は、明日にでも引き受けようと思いますが、いかがでしょうか?」

「き、キミは一体?」

「ああ、僕ですか? 僕は、小嶋技研って会社で広報部長をしています。父はそこで社長をしていまして。あの、ローカルテレビのCMとかで聞いたことありませんか? 家を建てるならコジマ♪ 土地を買うならコジマ♪ マンションも学校も病院だって♪ とかいう?」

「あ、あはははっ、知ってる。もちろん知っているよ」

卓造は笑うしかなかった。
感情を消した抑揚のない歌声よりも目の前に立っている男が、この地方全域で事業を展開している企業の御曹司だったことにである。

(俺は1ヶ月前から夢を見続けているのか? それなら、いっそのこと覚めるな。このまま俺はこの世界の住人になってやる。この有り得ない世界で自由気ままに生きてやる)

卓造は決めた。
優柔不断がトレードマークの男が、最後は誰の目にもはっきり分かる態度で頷いたのだ。



「ちゅぶっ、ちゅぶ……ちゅばっ、ちゅぶぅっっ……」

「うう……はあぁ……気持ちいいよ、千佳ちゃん」

夢はまだ続いているようだった。
膝立ちの姿勢で舌を這わせる少女に、卓造は深く息を吐いて応えた。

かつての力を取り戻し、怒張したペニスを口いっぱいに頬張り、舌と唇を使ってフェラチオを続ける千佳。
おそらく兄に仕込まれたのだろう。その滑らかな舌使いでエラから裏スジを舐められては、平凡な卓造のペニスの暴発は時間の問題である。

チュッ、チュッと千佳の舌先がキスを繰り返すたびに、卓造のペニスは硬度を増し、下腹に大量の血流が流れ込むのを感じた。

「佐伯さん、これをどうぞ」

このまま千佳のフェラチオに屈したのでは面白くない。
和也はそう判断したのか、手にしたバイブのリモコンを卓造の手に握らせる。

「いいのかい、本当に?」

「ええ、好きなだけどうぞ」

男達の会話に、千佳が怯える仕草をする。
幾分弱められていたバイブのお陰で、なんとかフェラを続けられたのである。
ここでバイブが暴れると……!

カチッ……! ヴゥゥーンッ、ヴゥゥーンッ、ヴゥゥーンッ……!

「んむぅぅっ! ぷはぁっ、あ、はぁぁぁっっ……やだ、許して……佐伯様、許して……ください」

喉奥にまで挿し込んでいたペニスが、透明な唾液と共に勢いよく吐き出されていた。
千佳は顔を苦しげに歪めると、卓造のペニスの前で背中を丸める。

花弁に埋まっているバイブが、呻り声をあげて運動を開始していた。
何度も絶頂を迎えさせられ過敏になり過ぎた膣壁を、バイブが容赦なくこすり上げていく。
全身をくねらせながら膣ヒダを引き伸ばし、疼くような刺激を摺り込んでいく。

「んんっ、きついぃっ! だ、だめぇ……エッチなお汁がぁ……んあぁぁっ」

真新しい蜜液が、迸るように内股を汚していた。
ペニスの根元を支えていた千佳の両手が宙を掴むように彷徨い、股間へと伸ばされていく。

「ダメだろ、チカ。ちゃんとフェラチオをしないなら、お仕置きだよ」

「ふぁっ、はあぁ……します……お口でするからぁ、んん、お仕置きは……イヤぁっ!」

和也のお仕置きに、バイブに触れようとした千佳の指が止まった。
バイブを倣って、くびれたウエストをいやらしく躍らせながら、再び両腕を持ち上げていく。
突き出されたペニスの根元に震える指を被せると、露出した残りを唇の粘膜で覆った。

「ふんむぅ……はぅ、はぁぅっ……ちゅる、ちゅばっ……」

千佳は泣きべそをかきながら、フェラチオを再開した。
卓造のペニスを暴発させるのと、バイブによる5度目の絶頂を競わされながら。







闇色のセレナーデ 第7話  夢の始発は、ミステリアスガールと共に


























【第7話】




「佐伯君、ちょっとこちらへ」

昨日と全く同じ時刻、同じセリフに『こちらへ』と単語だけを追加して、課長の山下が卓造を呼んだ。
さり気なく浴びせてくる同僚の視線に、卓造はちょっと誇らしげに胸を張ると、その課長の元へと向かう。

歩きながら、棒グラフの描かれたホワイトボードに目を留める。
一夜にして、営業3課トップに躍り出た自分の名前を舐めるように見つめた。

「いやぁ、さすがは佐伯先輩。御見それしました。あの天下に名高い『小嶋技研』からワンロット4千万もの発注を受けるとは。それも本社直々からですよ。いや、素晴らしい。私はアナタと共に仕事が出来て光栄です」

人という者は、結果次第でこうも態度が変わるものなのか。
眉毛をひくひくさせながら手を取る山下に、卓造は複雑なモノを感じた。

(約束通りに、和也が手を打ったのに違いない。それも2千万で片が付くのを、倍の4千万も発注させるなんて。山下じゃないが、さすがは天下に名高い『小嶋技研』の若旦那様だ)

出社して早々に、小嶋技研の秘書課から卓造あてに連絡が入り、4千万という大型案件にも関わらず即決で交渉が成立したのである。

「課長。これから外回りの予定を入れておりますので、失礼してよろしいでしょうか?」

「あ、ああ構いませんよ。これからは私の許可など必要ありません。先輩の思う通りにお仕事の方を頼みます」

卓造は、諸手を挙げてバンザイしそうな山下と営業3課の面々に見送られて職場を後にした。


 
「はあ~ぁ、空気がうまい」

片側3車線の大通りを無数の車が行き交うなか、卓造は鼻の穴を拡げ肺がパンクするほど空気を詰め込んでいた。
そして、久々に背筋を伸ばして歩いてみる。
いつも目にしていた当たり前のオフィス街も、異国の街並みに思えてくる。少々大げさだが。

「それで千佳ちゃんは、どこでお待ちなのかな?」

皮靴でスキップするように歩きながら、卓造は黒目を走らせる。
歩く人もまばらな昼下がりのオフィス街。
ちょっと目を凝らせば……

(見付けた! やっぱり来てくれてたんだ)

雑居ビルに間借りしたコンビニの店先で、ダークネイビーのセーラー服が揺れた。
近寄る卓造に千佳も気が付き、こちらを振り向いたのだ。

顔を綻ばせる、よれよれスーツを着込んだ中年営業マン。
沈んだ顔をする、清楚で可憐な女子学生。

場違いなほど対照的な二人だが、これからの時間を共に行動することだけは決定済みである。

「待ったかい? 千佳ちゃん」

「いえ、別に。アタシも今来たところですから。さ、行きましょうか?」

千佳は卓造の顔を一瞥すると、身を翻すようにしてさっさと歩き始めた。

何か雰囲気が違う。
昨夜まで兄である和也に痴態を晒していた線の細い少女のイメージとは、違和感を感じる。
なんかこう、闊達というか……

「どうして、お断りにならなかったんです?」

「え、何が?」

「その……兄からの提案です。佐伯さんは、何も知らないから」

突っかかるような勢いで歩く千佳に、卓造は歩幅を拡げて追い付いた。
その矢先、少女が意味深な言葉を吐いた。『何も知らないから』と。

「確かに、キミのお兄さんと知り合ったのは昨日のことだし、あの人のことは詳しく知らないよ。でもね、こんな夢みたいな話に飛び付かないなんて、普通の男だったら有り得ないと思うよ。まあ、千佳ちゃんにとっては不幸なことだし、その同情もするけどね」

「はぁ、そう言うと思った。やっぱり佐伯さんは、この前の男の人と、その前の男の人とも一緒かも。何も分かっていないわ。それとアタシは、別に同情して欲しくて言ったわけじゃないから」

急に立ち止まった千佳は、30センチは上にある卓造の顔を見上げた。
ほんのりとした桜色のほっぺたをキュッと引き締めると、失望と怒気を孕んだ投げやりっぽい目線をぶつけてくる。

(やっぱり違う。これがこの子の本当の姿なのか?)

深夜の街中で白い肌をくねらせていた千佳と、清潔感溢れるセーラー服に身を包んだ目の前の千佳は、まるで別人である。
薄い太陽の日差しに照らされた少女の全身からは、気高いオーラが漲っている。
見えるはずのない気を、卓造は見た思いがする。

「佐伯さん、こっち来て」

「お、おい!」

ちょっと不機嫌な表情をする女神は卓造の手を引くと、オフィスビルの脇に設置された自動販売機へと誘った。

別にジュースを買うわけではなさそうだ。
千佳は並んだドリンクの見本に目もくれずに、細身の身体を自動販売機と外壁で作られた三角コーナーへと寄せる。
そして幅の広い道路の向こう岸に目を運ぶと、卓造の身体を衝立代わりに見立てるように、向かい合う形で立たせたのだ。

「思った通りだわ。あの人ったら、あんな悪魔に命じられて……ダメ、佐伯さんは振り向かないで。気付かれちゃう」

そう言うなり千佳の両腕は、卓造の背中に回り込んでいた。
コートの上からしっかりと腕を絡めると、自分の身体に押し付けたのである。

「おい、千佳ちゃん。いくらなんでも、こんな所でなんて……マズイよこれは」

「だめよ、こうしないと。でないと、佐伯さん。アイツに用済みの烙印を押されて消されるわよ」

「け、消されるって?! それにアイツって、和也君?」

「そうよ。だけどそれより今は……佐伯さん、アタシとキスして。それに恥ずかしいこと……いっぱいして頂戴。ここで」

髭が剃り残された卓造のアゴに、上目遣いの千佳の目線が重なった。
二重まぶたから覗く瞳が、投げやりっぽいものから悲痛な哀しみの色を湛えて、それでも顔を逸らせようとはしない。

「分かったよ、千佳ちゃん」

卓造は、少女の気迫に押されたまま深く頷いていた。








闇色のセレナーデ 第8話  リードしているのは、誰?


























【第8話】




(いっぱい恥ずかしいことをしてやるつもりだったのに、気付けば相手の少女にリードされているなんて)

どちらかといえば背の高い卓造に、背伸びしてまで唇を寄せる千佳。
その少女に背中を抱かれながら、卓造もまた千佳の背中を撫で回していた。

「ちゅぷ、ちゅぷ……もっと舌を入れて構わないから。その、唾も垂らしてよ。ほら、ディープキスしよ」

斜め45度で重なり合った唇が、千佳に導かれて濃厚なキスを開始した。
卓造は言われるままに唾液に塗れた舌を伸ばすと、半開きになって待つ千佳の唇の間をすり抜けていく。
そのまま滑らかな舌肉を捉えると、絡ませながら男の唾液を沁み込ませていく。

「はんむぅ……千佳ちゃんの唇って柔らかい」

爽やかなミントの香り。それに仄かに甘いイチゴの香りも。
それを卓造は舌全体で感じて、千佳の唾液と共に自分の口内に持ち込んでは、再度その香りを味わっていた。
たった一度だけ経験したことのある、遥か20数年前の切ない記憶を呼び起こしていた。

「ちゅぶ、ちゅばっ……ぷはぁ、キスはもういいから、今度は身体をお願い。好きに弄ってくれていいから」

そんな青春の思い出は、20才以上年の離れた少女の催促に掻き消されていた。
愛し合う恋人どうしでも赤面しそうなセリフが、夢見心地の卓造を現実へと引き戻していく。

「いいの、ホントに? こんな所で身体を触っても?」

「していいから。こんな恥ずかしい言葉。女の子に何度も言わせる気?」

「あ、いや……その……」

千佳は首筋まで肌を赤く染めると、覚悟を示すように自分からエンジ色のスカーフを抜き取っていた。
続けて白線がVの字に切れ込む胸元に手を突っ込むと、固定するスナップをプチプチと外して、襟首を大きく拡げる。

「ごくっ、ごくっ……手を入れるよ」

卓造は溢れそうになる唾液を飲み干した。
青春の残り火だったキスの香りも消化させながら、左手をそっと差し入れる。
だらしなく開いた胸元から腕を突っ込んで、その内に潜む下着に触れようとした。
双乳をガードするごわごわした感触を、まさぐるようにして探した。

「どうして? まさか、千佳ちゃん?!」

制服に圧迫される狭い空間で、卓造の手のひらが固まる。
汗の滲んだ指先が、プリンのように弾む肉の塊に触れたのだ。

「ふふっ、驚いたって顔をしてるわね。そうよ、ブラはしていないの。ついでに言っておくけど、下もそうよ。アタシはパンツも穿いていないから。アイツの命令で、学校へ通う時も家にいる時も、下着なしで生活させられているのよ。レイプされてからずっと」

千佳は早口でそう言うと、卓造の右手を掴み彼女の下半身へと連れていく。
折り目正しいスカートヒダに指先を触れさせると、それに添わせるように千佳の膝小僧のあたりまで誘った。

「さ、中に手を入れて。遠慮しないでいいから」

確かに、ここなら多少大胆に振舞っても人目には付きにくいだろう。
歩道から少し奥まった所にいるため、真っ直ぐに前を向いて歩く限りは目に入らないかもしれない。

けれども、麗しい女子学生と、中年の営業マン。少しでも目線が横にずれれば、いちゃついているのは明白である。
それもかなり大胆なモノを晒す羽目になる。特に千佳にとってはだ。

「佐伯さん、何を怖気づいているのよ。このくらいやって見せないと、アナタは今日1日で見切りをつけられるわよ。早くスカートを捲り上げて、アソコを触りなさいよ。ア、アタシは……平気だからさ」

黒目を泳がせながらも、急かせる千佳がいじらしかった。
卓造には、昨夜の和也の言葉を否定する気にはなれない。
しかし、どう見ても羞恥に耐えているとしか思えないのに、男を災いから逃れさせようと懸命に振舞う少女に分がある。
今は、そう思えてならなかった。

「もういいよ、後は俺がするから。千佳ちゃんはそのままじっとして」

卓造は指先にスカートの裾を引っ掛けると、太股の横を滑らせるようにして持ち上げていく。
本音を言えば、自分のコートの前ボタンでも外して、千佳の痴態を包み隠したいところだが、遠目に監視がいるとあっては、それもままならない。
彼女の心意気に報いるためにも、行為は大げさに、それでいて繊細な指使いを。

「んん……風が……冷たい……」

右側だけ大きく捲り上げられたスカートから、真っ白な太股が付け根まで覗いた。
パンティーを身に着けていないむき出しの股間に、真冬の北風が吹きつけてくる。

「早く触って、温めてよ」

土壇場で怖気づく卓造の右手首を、また千佳が掴んだ。
自分から少し股を開くと、立ったまま自慰をするように亀裂に指を押し当てていく。

「あ、あぁ……千佳ちゃんのアソコ、あったかい」

「ホント、いい年して情けないんだから。『後は俺がするから』って言ったのは誰よ。ほら、左手も止まっているわよ。千佳のおっぱいを揉みなさいよ」

卓造は年下の少女の言いなりだった。
でもそれが、とても居心地良かった。

(俺はこの少女を? まさか、そんな……?!)