闇色のセレナーデ 第5話 淫具の響きは、同士の囁き 2015/10/04 13:00.00 カテゴリ:闇色のセレナーデ 【第5話】「さあ、千佳。今夜はここで思いっきり鳴いてもらおうかな」昼間になると子供の声で賑わう遊具広場も、月明かりに照らし出される無人のそれは、物悲しさを通り越して不気味にさえ思えてくる。「はうぅぅっ、あぁっ……お兄ちゃん、きついのぉ……バイブが暴れて……ふぁっ、わたし、また……」千佳はここまでの道すがら、既に2回は絶頂を極めている。突然歩様が止まり、突き出したヒップをブルブルっとさせたかと思えば、上半身を仰け反らせて嬌声をあげる彼女の姿を、卓造は目撃しているのだ。そして、3回目がまもなく。「ふふっ、だったら、もっと暴れさせてあげるね。バイブを」カチッ……! ヴゥゥーンッ、ヴゥゥーンッ、ヴゥゥーンッ……!「ひゃぁっ! だめぇっ、きつく……しないでぇ。あうあぅっ、バイブがぁ、中でぇ……も、もうっ……イク、イク……イキますぅぅっっ!!」和也がリモコンを操作したのだ。明らかに大きくなったバイブの音ともに、千佳が3度目の絶頂を経験させられる。ビクン、ビクンと何度も両肩が震えた。愛液で汚れた内股が、膣肉を嬲り続ける玩具をギュッと絞め付けていた。桜色の唇が空を見上げて、哀しい声で鳴いた。「あーぁ、イッちゃった。千佳ったらそんなにオマ○コが気持ちよかったの? ちょっと、はしたなく鳴きすぎだよ。でも、イク時にはイキますって。これだけは褒めてあげる。ちゃんと言えるようになったからね」「んんっ……は、はぁぁ……だって、お兄ちゃんがそうしろって……んぐぅっ」次の快感の波が押し寄せてきたのだろう。千佳は砂地に指先を突き立てると、漏れる吐息を減らそうと唇を噛み締めている。だが、激しいバイブのうねりに蕩け切った恥肉は、少女の乙女心を嘲笑うかのように淫靡な快感をもたらそうとする。植え込みの陰からその様子を覗いていた卓造は、ズボンのファスナーを引き下ろし、硬くなったペニスをひたすら擦り上げていた。間違っても、1カ月前の夜みたいに下着の中での射精はごめんだった。あの時の惨めさは、今でも忘れられない。しかし今夜も、中途半端な惨めさは付き纏うことになる。それまで千佳を見下ろしていた和也だが、不意にその顔を上げたのだ。全てを知っている。そんな顔付きで、卓三が潜む植え込みに目を向けたのである。「佐伯さん。そんな所に隠れてないで、こちらへどうぞ」「ひ、ひいぃっっ!」もう少しで放出という時になって、卓造は女のような悲鳴をあげた。和也に見抜かれていたのだ。「アナタのことは、何もかも調査済みです。ご自宅のアパートも、勤めていらっしゃる会社のことも。ああ、会社と言えば、2千万の受注は目処がつきましたか? それがないと、リストラ候補とか……くくくくッ」「な、何がおかしいんだ?! お前のようなお金持ちには……俺の……」立ち上がり、言い返そうとした卓造の声が尻すぼみになって消えた。急速に萎え始めた肉棒を両手で隠したまま、棒立ちしている。(もう、何もかも終わりだ。この男は、俺のことを全部調べ上げたうえで泳がせてたんだ。この1カ月間、ずっと)絶望の二文字が急速に現実味を帯びてきた。リストラ……無職……ホームレス……卓造は自棄になったつもりで二人の元へ歩み寄っていた。ただし両の手のひらは、股間の前で交差させたままである。「で、出てきてやったぞ。わ、笑うな……!」「くくくくっ、申し訳ありません。どうやら僕は佐伯氏の自尊心を傷付けたようです。ですが勘違いしないでくださいね。僕はアナタの心根を知ったうえで、同士に迎え入れたいと思っているんですから」「ど、同士だって?」突飛もない和也の答えに、卓造は唾を飛ばして聞き返していた。「ええ、僕にとってたったひとりの同士にね」呆けた顔をする卓造を前にして、和也が大きく頷いてみせる。「俺が、たったひとりの同士……」希望を失った顔をしていた。希望を失った声をしていた。だが卓造は感じた。腹の中で蠢き始めた心地よい快楽を。そして足元では、湧き上がるバイブの刺激に限界を迎えた千佳が、4度目の絶頂を可愛い声で知らせた。それから10分後。和也から信じられない相談を持ち掛けられた卓造は、夢見心地のままOKサインを送る。社会の底辺へ転落し始めた営業マンにとって、和也から垂らされた糸は細い蜘蛛の糸ではない。両手でしっかりと握れる太いロープだったのである。「チカ、佐伯さんがお呼びだよ」話がまとまり落ち着いたのを見計らったように、和也が千佳に声を掛けた。一瞬首を上げて、はっとした顔をする少女だが、兄の命令は絶対なのだろう。紅潮した顔をすぐに伏せると、四つん這いのまま卓造の足元へ移動する。「か、和也君……お、俺はなにも、そんな……」全裸の少女が目の前で畏まるのを見て、卓造はうろたえた。「いいんですよ。佐伯さんは、そのままじっとしていて下さいね。チカ、佐伯さんのを、お前のお口で気持ちよくさせるんだ。できるよね?」「は、はい……お兄ちゃん……」(俺のを? お口で? 気持ちよく?)卓造の脳ミソが、和也が口にした単語を復唱する。その間にも膝立ちになった千佳によって、股間で揃えられた手のひらが解かれる。「お嬢ちゃん……いや、そこは……その……」半立ちのまま垂れ下がるペニスを露わにされて、千佳に負けないほど卓造も赤面していた。そんな中年男の性器を目の当たりにした少女も、目を潤ませたまま言い様のない憂いを湛えていた。「失礼します」けれども、千佳の憂いは数秒で消えた。氷の目で見下ろす和也に射すくめられたのか、目尻に涙を溜めたまま顔を寄せてきたのである。卓造の股間へと。(こんな可愛い少女を、1ヶ月間も自由に出来るなんて……)ペニスを包み込む柔らかな肉の抱擁に、卓造は10分前に和也と交わした約束事を思い返していた。目次へ 第6話へ