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スタッフだって脱ぎます!!























(10)
 


全裸になった律子さんは、大きめのバスタオルを肩に掛けた姿で休憩している。
あたしは、逸る気持ちを抑えながら彼女に話しかけていた。

「律子さん、あの……大丈夫ですか?」

「え、ええ……」

「もし、辛くなったらいつでも声を掛けてくださいね」

「ありがとう、雪音さん」

律子さんが力のない笑顔を作った。
同時に「準備できたよ~」って、お父さんも力のない声をあげる。

「それじゃあ、始めましょうか?」

あたしの言葉に小さく頷くと、律子さんはバスタオルを外した。
中からは、同性でもうっとりさせられちゃう、スタイル抜群のボディーが姿を現している。

雪音。あなたはいつから、そんなイヤな女の子になっちゃったの?
いつから、そんな心にもないことを話せるようになったの?
そんなにエッチな撮影が楽しいの?
誰かが話しかけてきた。

「雪音、どうした?」

「ううん、なんでもない。
では律子さん、まずは正面を向いて気を付けの姿勢で……♪」

あたしは、強張った表情の律子さんに笑い掛けるとポーズを促した。

カシャッ、カシャ、カシャ、カシャッ……

そうよ、ここからが勝負写真よっ!



「背中を向けたまま、お尻の肉をキュッと持ち上げるような感覚で、そのままこっちを振り返って……」

カシャッ、カシャ、カシャ、カシャッ……

あたしは、次々と律子さんに指示を出していった。
その隣では、完全にロボットになっちゃったお父さんが、ひたすらシャッターを押し続けている。

「いいですよ。律子さん、とってもきれい♪
それじゃあ、次は四つん這いになってください」

「よ、四つん這い?」

解れかかった律子さんの顔に困惑の色が浮かぶ。
それと同時に、羞恥心が蘇ったのか? ピンクに染めた頬を誰が見ても分かるくらいに真っ赤に染め直している。

う~ん。一気にハードルを上げすぎたかしら?
でも律子さんにはもっと淫らなポーズをしてもらわないと、あの子たちに勝てるわけなんなかない。
絶対に……!

「お父さん、お願いがあるの」

「なんだい、雪音?」

「あたしたちも脱ぎましょ。そうよ、服を脱いで裸になるのよ!」

「うぅ~うそだろ?! 雪音。いくらなんでも、そんなことまでしなくたって……」

「ダメ! そこまでしないといけないのよ。
あたしたちも恥ずかしい思いをしないと、律子さんだって前に進めないのよ。
さあ、早く……!」

あたしはそう言うと、無地のTシャツを頭から抜き取った。
続けてジーンズのホックを緩めると、お風呂に入るみたいに何も考えずに脱いだ。

隣ではお父さんが……ピンク色のスタジオで律子さんが……
それぞれ、唖然とした顔であたしを見つめている。

「なにしているのよ! お父さん。さっさと脱ぎなさいよ。
それとも、娘のあたしにだけ恥をかかせる気?」

「ああ……いや……その……」

お父さんは、ブラとパンツだけになったあたしに短く視線を送ると、「はぁ~」って呻きながら頭をうなだれた。
そのまま着ている物を脱いでいく。

「律子さん、ちょっと待っててくださいね。
このスタジオ、地下にあるから蒸し暑くって……
空調の調子でも悪いのかな……あっ! お父さん。その……パンツは脱がなくていいから……」

あたしは、男性になっちゃったお父さんをチラリと見てから目を逸らした。
そして3分後、下着姿の親子に見守られながら撮影が再開された。

「次は正面を向いてください。
そう、そのままで顔をレンズに向けて……モノ欲しそうな目をして……はい」

カシャッ、カシャ、カシャ、カシャッ……

四つん這いになった律子さんが、潤んだ瞳であたしたちを見上げた。
まるで愛嬌を振りまく子犬のように両手両足を床にひっつけたまま、あたしがOKを出すまで人間じゃないポーズを続けている。

でもそれがどんなに辛いことかって、同性のあたしにもわかっているつもり。

ほっそりとした肩を支える両腕が、痙攣するように震えているのを目にすれば……
両腕の間で、垂れ下がる真っ白な乳房まで哀しそうに震えているのを目にすれば……
生身ではない女の子たちから夫を取り戻すため、恥ずかしい試練に耐える律子さんの震える心を目にすれば……

あたしは……雪音は……

「OKです。それでは、今度はヒップをこちらに……律子さん、がんばって♪♪」

喉の底から可愛い声を絞り出していた。
心を鬼に変えながら、天使の声で励ました。

でもなにか違う。なんだろう?
この部屋が蒸し暑いなんてデタラメだったのに、身体中が火照っている。
ブラとパンツだけなのに、それでも暑いの。切ないの。

たまにやって来るムラムラとした気分。
ひとりベッドの中で、いけないのに自分を慰めちゃう、そんな気分。

「雪音、顔が真っ赤だけど、大丈夫?」

カメラを覗きながら、お父さんの片眼があたしを見ている。
あたしはなにかを吹っ切りたくて首を大袈裟に振った。

そして「大丈夫よ」って……
その後、胸の中でこっそりつぶやいていた。

『あたしがピンクの傀儡子を名乗ろうか?』って……



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