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人妻美穂と美大生 第5話



  
                                          


第5話  初ヌードモデル



        
        小さな布切れは腰から膝へとすべり落ちて、やがて足首に絡みついた。
        ショーツをそっと足首から取り除く。
        結婚後初めて夫以外の男性の前で全裸になった私は、顔がほてり膝がが
        くがくと震えた。

        「これでいいですか・・・?」

        消え入りそうな小さな声で尋ねてみた。
        小野原はこちらを向いた。
        私を見た瞬間、驚いたような表情を見せたが、直ぐに平静をつくろった
        ように感じられた。

        「それでいいですよ。じゃあ、そこに置いてある白い椅子に座ってくれ
        ますか?少し身体を斜めにして。」

        彼の中ではすでに構図ができあがっているのであろう。
        直ぐにポーズの指図が飛んできた。
        小野原の指示どおりポーズをとろうとしたが、モデル経験などない私は、
        緊張も手伝ってかなり身体が強張っていた。
        もじもじとさせながら、やっとのことで小野原の注文のポーズをとった。

        小野原はデッサンを描き始めた。

        「奥さん、そんなに硬くならなくていいですよ。もっとリラックスして」
        「はい・・・」

        そういわれても、簡単に緊張は解けるものではない。
        私は少し気を逸らそうと思い、姿勢はそのままにして目だけで部屋中を
        見回した。
        さすがに美大生らしく、部屋内はアトリエっぽくしつらえている。
        壁の色にしても普通ならアイボリーに仕上げるところを、純白のペンキ
        を使用しわざと凹凸を出している点などはその典型といえる。
        小物などの装飾品も高価なものではなさそうだが、ひとつひとつにこだ
        わりが感じられた。

        私の視線が他に逸れていることを知った小野原は、にっこりと笑って語
        りかけてきた。

        「俺の部屋、そんなに珍しいですか?」
        「は・・・はい・・・さすがに画家さんらしいなあと思って・・・」
        「まだ画家じゃないですよ。その卵かも知れないけど」
        「あ、そうですよね。まだ学生さんですものね」
        「奥さん、歳はいくつ?」
        「・・・27です・・・」
        「俺より6つ上か。でももっと若く見えるね」
        「そうですか。ありがとうございます・・・」
        「結婚して何年目なの?」
        「2年目です」
        「まだ2年目なんだ。新婚みたいなものだね」
        「いえ、もうそんなことは・・・」

        小野原はテンポよく次々に質問してきた。

        「旦那さんとは毎晩なの?」
        「えっ・・・!?」

        思いも寄らない唐突な質問に、私はどう返事をすればよいか戸惑ってし
        まった。
        実のところはその頃、主人は残業続きで帰宅が遅く、週末の夜に一度あ
        れば良いほうだった。
        しかし、そんな私的なことを素直に答える気にもなれなかったので、適
        当にはぐらかした。

        「そんなことないです・・・」

        曖昧な答えが余計に相手を刺激したのか、小野原はしつこく尋ねてきた。

        「うっそ~!結婚して2年目だったら、毎晩甘えてるんじゃないの?」
        「そんなこと決して・・・」
        「ほんと~?俺が奥さんの旦那だったら、絶対に放っておかないけどな
        あ」
        「・・・・・・」





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