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あなたにアナルバージンを捧げます






















【第11話】


        
        「綾音、お尻でするって……冗談だよね?」

        「ううん、わたしは本気よ。吉貴のオチ○チンをお尻の穴でも感じてみ
        たいの」

        「でも、俺だってアナルセックスは経験ないし……綾音だって初めてだ
        ろ。きっと痛いと思うけど……」

        案の定、綾音の提案に吉貴は尻込みしていた。
        男の割に、性欲には淡白な方だった。
        尻の穴で繋がるといったアブノーマルなプレイには、あまり興味がなか
        ったのである。

        「あらぁ、吉貴ったら、ケツの穴でセックスするのが怖いの?」

        「け、ケツの穴ってお前! なにもそんな下品な言い方をしなくたって」

        「そうなの。ケツの穴って言った方が吉貴も興奮すると思ったのに。で
        も安心して、アナルセックスのレクチャーは、完璧だから。きっと気持
        ちよくなれると思うわよ」

        今夜の綾音は、いつもと違う。吉貴は思った。
        いや、ここ最近ずっとそうだった。ベッドインしてからの彼女の態度は、
        積極的に女を見せつけて俺の男の部分を誘惑しているような……とも、
        考えていた。

        そんな彼の心を覗き見たかのように、綾音は瞳を潤ませて欲情する女を
        演出してみせる。
        美和が帰宅した後、急いで購入したローションの詰まった容器を逆さに
        すると、ドロリとした中身を手のひらに乗せる。
        両の手のひらを重ね合わせて擦り合わせて、納豆のように粘度を高めて、
        呆然とする吉貴の前にしゃがみ込んでいた。
        半分自立したペニスに指を伸ばすと、透明な潤滑油を優しく塗り込めて
        いく。

        「あっ、勃ってきた。オチ○チン君が元気になってきたね」

        「んはぁ、綾音、そんなに強く握り締めたりしたら……俺、やばいよ」

        「やばいって……なに? オチンチン君が暴発しそうってこと? ふふ
        っ、ダメよ、吉貴。そんなことくらいで射精したりしたら。今夜は、こ
        っちでしてもらうんだからね」

        綾音は頬を真っ赤に染め上げたまま、吉貴の前で身体を反転させる。
        リンゴのように赤いほっぺたから、桜色に発色したヒップを晒してみせ
        る。
        ローションを追加して更に濡れた右手を、上体の側面に添わせて背後に
        回し込ませると、二つ並んだ双丘を割り拡げていた。
        おぼろげな明りの下に浮かんだ赤い肌に、ヌルヌルとした指先の刷毛を
        丹念に撫でつけていた。

        「ひゃあっ、ローションがひんやりとして……でも、触ってると気持ち
        いいかも。ほらぁ、吉貴見える? 綾音のアナル、ひくひくしてるでし
        ょ?」

        「ああ、動いてるよ。まるで別の生き物みたいにね」

        意識して括約筋を働かせた綾音の耳に、次第に興奮の色を高めた吉貴の
        声が届く。
        その声の期待に応えようと、綾音は人差し指を挿入してみせる。
        ひくひくと蠢く菊座の中心に照準を合わせて、なんなく飲み込ませてい
        く。

        「あ、はあぁぁ……指が入っちゃう。綾音のお尻の穴に、ズボって沈ん
        じゃう」

        吉貴が帰宅するまでの間、トイレに籠って経験させた指の感触と同じモ
        ノを綾音は感じ取っていた。
        それだけではない。愛する夫の目線が、その刺激に彼女の羞恥心をプラ
        スさせる。

        『綾音、吉貴さんのオチ○チンを受け入れる前に、自分の指でよーく解
        しておくのよ』

        美和のアドバイスが、脳裡に響いていた。
        綾音はそれを実践しようと、吉貴にお尻の内側まで晒して念入りな指使
        いを披露していた。

        ずにゅ、ずにゅ……ズボッ、ズボッ、ズボッ……

        「あんっ! はあぁぁ……指がぁ、中で擦れて……ふうっ、気持ちいい
        ……」

        排泄するための器官が、指の愛撫に感じ始めていた。
        ペニスのように抽送される人差し指の感触に、デリケートな肌が熱を帯
        びて応えていく。

        「綾音……その、入れてもいいのか?」

        目の前で繰り広げられるアナルオナニーに、吉貴が音をあげた。
        男らしくない消え入りそうな声で懇願すると、既にローション塗れのペ
        ニスを握り締めている。
        そして、嬌声を上げ続けている綾音の返事も待たずに、彼女のウエスト
        を両手で固めた。
        血流が溜まり切って硬直したペニスの先端を使って、閉じかけた尻肉の
        割れ目をこじ開けていく。
        ペニスの先端と綾音の指のペニスが触れ合い、バトンタッチするように
        お互いの立場を入れ替えていた。

        「来てぇ、吉貴。綾音のアナルにオチ○チンを差し込んでぇっ!」

        「ああぁ、わかってる。綾音のアナルバージンを、俺の息子で奪ってあ
        げる。だから、もっと力を抜いて」

        「うん、優しくしてね」

        いつのまにか、吉貴がリードしていた。
        綾音は言われるままに深呼吸を繰り返すと、強張り掛けた下半身を脱力
        させる。
        ベッドの縁に両手を突いた四つん這いのまま、その身体のすべてを愛す
        る夫に預けていた。

        「いくよ、綾音」

        「ええ……アナタ……」

        綾音の唇から洩れた『アナタ』の呼び掛けに、吉貴の顔が綻んでいた。
        夫婦としての階段を一歩昇った実感に、胸が痛いくらいに絞め付けられ
        ていた。

        吉貴は改めて綾音のヒップを眺めた。
        毎夜のセックスで気にも留めなかった妻の張りのある双丘に、感慨を新
        たにする。

        ズズズ……ずりゅ、ずりゅ、……ズニュゥゥッッ!

        「あんっ……はあぁぁ! 感じるぅっ……お尻でぇ、アナタのオチ○チ
        ン……感じてるぅっ!」

        「んんっ、綾音ぇ……俺もぉ、はあ……綾音、愛してるよ」

        綾音は嬉しかった。
        処女を頑なに守って生きてきて、吉貴と初めて結ばれた夜にバージンを
        捧げて。
        その時の、額に玉の汗を浮かべながら腰を押し出した吉貴の顔を思い浮
        かべて。
        アナルバージン喪失という妻の試練に、そっと寄り添うように優しくペ
        ニスを抽送させる吉貴の心に触れた気がして。
        そのすべての想い出に、今この一瞬の吉貴を重ね合わせて……

        (美和先輩、サンキューね。わたし、何か勘違いしてたかも。肌を合わ
        せるのって、性欲を解消するためじゃないよね。お互いのパートナーの
        ハートを癒すためにするものだよね)