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屈辱のオナニー報告























(二十六)


八月 十五日 金曜日 午前三時  早野 有里
 


夢を見ていた。

男に襲われ、無抵抗のままレイプされる無垢な私……
男の腰が前後に振れ、少女の純潔な身体を刻んでいく。
逃れようと顔を上げた私を、もう一人のわたしが傍観している。
助けてと叫んでいるのに、かき消される声……
伸ばした腕も、どこかに消えていく。
私は、もう一人のわたしに、目で合図を送った。
逃げてと……
でも、わたしは立ちつくしている。
わたしは気付いた。
ふたりのわたしは、実はひとつなのだと……
……ならば、汚されてはならない。
せめて、もうひとりのわたしだけでも、守らねばならない……



時計の針が、午前3時を指している。

あのまま、眠ってしまったみたいね。
行為を終わらせて、1時間弱……
わたしは、生まれたままの姿で横たわっていた。

それにしても、変な夢……
手足が、だるくて重い……
これって、副島に処女を奪われたときと、よく似てる。

……起きよう。
わたしは、腰の横に手を付くと、ゆっくり身体を起こした。
エアコンの風が素肌に吹き付け、自分が、何も身につけていないことを教えてくれた。

役目を終えたビデオを停止させ、脱ぎ捨てたパジャマの上着を肩から羽織る。
ベッドの下で、丸まったパンツを手に取り、諦めた。

わたしは、汚れた股間を清めると、パジャマのズボンを直に履いて、再びベッドに入った。

「また、パンツ汚しちゃった……
わたしって、小さな子供みたい……
お母さん、洗ってくれるかな……?」

生まれてくる赤ちゃんのように、身体を丸めてみる。
柔らかい安らぎを感じて、心がぼんやりとしたものに包まれていく。
眠くなってきた……
理性さんも一緒に、さあ、もう一度、夢の世界へ……



           八月 十五日 金曜日 午前九時    副島 徹也


「……はい、予定通り順調に進んでいます。
……ええ、もちろん。
伯父さんに満足いただいて光栄です。
……はい……ええ……
今回の作品は、苦労しましたからね。
認めていただき、有り難う御座います。
次回作も、伯父さんに納得してもらえるよう、頑張らせていただきます。
…… ……
……はい、伯父さんの気持ちは、よく分かります。
ただ、急かすのはどうかと……
なにしろ、材料が初心すぎます。
ここは、焦らずじっくりと……
……はい……はい……
では、私の判断で、やらさせてもらいます。
……許可していただけますか?
…… ……
……はい、有り難うございます。
誠心誠意、伯父さんの希望に添えるように努力致します。
……ああ、言い忘れるところでした。
もうひとりの件ですが……
……はい。
準備が出来次第、実行に移します。
後しばらくお待ちください。
……では、失礼致します」


私は、携帯をサイドテーブルに投げ置くと、目頭を押えた。

「今、何時だと思っているんだか……」

時刻は、午前9時……
だが、私にとっては、真夜中に等しい。
私の一日の始まりは正午から……そう勝手に決めて久しい。

まあ、伯父さんにそれを言っても通用しないが……
欲しい物は、どんな手段を使ってでも手に入れる。
金、会社、人材、そして、女までも……
ついでに、私の時間も……

イラついても仕方がないが、中途半端な時間に起こされてしまった。
つい先日も、有里の付き添いで、徹夜? をしたというのに……ついてない。

「こうなったら、起きるしかありませんねぇ」

私は、携帯をひらくと、昨日、有里に送ったメールを読み返した。
指示には従っただろうか?
少々、ハードルが高かったかも知れない……

「ですが、あの小娘……
大切な者を守るためなら、自分の身体を省みない……
今時、絶滅危惧種みたいな方ですから、面白いかもしれません。
……さあ、朝食でも作りますかぁ」

サイドテーブルに、私は携帯が置いたままにしておいた。
そこのあなた。見たいんでしょ?
どうぞ、ご勝手に……



有里への指示 続き……
次の行為を説明します。

ビデオ鑑賞は終わりましたか?
……さすがに疲れたでしょう。

疲労を取るにはリフレッシュするのが、一番です。
そのまま、ベッドに上がりなさい。
そして、自分を慰めなさい。
始めは、服を着ていても構いません。
ただし、絶頂時は、下半身は裸で、出来れば上半身も……

あと、必ず絶頂まで導きなさい。
手抜きすれば、お仕置きが待っていますよ。
それでは、可愛い有里様の喘ぎ声を期待します。

尚、ノートと撮影記録は、後日回収します。
それでは、楽しいひと時を……   
                  副島



役目を終えたように、携帯の画面が暗くなる。
その横に、意味深に置かれたファイルが1冊……
詳しいレポートに添えられた、盗撮らしい女性のスナップ写真……

どれも、視線がカメラに合っていない。
被写体は、物憂げな表情を浮かべる、黒髪の少女……
名前は、吉竹舞衣。18歳。



           八月 十五日 金曜日 午後零時三十分    早野 有里


わたしが、ベッドから起き出したのは、正午を過ぎてからだった。

朝の7時過ぎに、友だちに講義を休むことを伝えて……
お母さんにも調子が悪いって嘘を付いて……
ただ眠りたかっただけなのに……

わたしって、ここ2、3日でわがままで嫌な女になった気がする。

そうだ……
もう一日、バイトも休ませてもらおう。
どうせ、悪い子になったんだから、これも、ついで……

わたしは、ひとり食卓で遅めの昼食をとっていた。
食べているのは、母が準備してくれた朝ご飯……

わたしだけ、時間の流れが変になっている気がする。
頭がぼーっとして、まだ身体がだるい。

これは、海外旅行で起こると言う、時差ぼけかもしれない。
わたしって、日本にいながら時差ぼけを起こしたんだ。

決して、あの行為のせいではない……
そんなの認めたくないから……

わたしは、昼食を終えると食器を洗い、2階へ上がった。

あらっ? 部屋が散らかっている。
自慢じゃないけど、わたし、きれい好きなの。
まあ、その方が、男の人も喜ぶでしょ。
……それにしても、ひどいわね。

脱ぎ捨てたパジャマに、木綿のパンツ……
ビデオカメラや、テレビは電源が入ったまま……
さあ、生理整頓!

ここは、わざと心を空っぽにして、自分をだましながら、片付けていく。
カメラは、コンセントを引き抜いて、部屋の隅に追いやり……
パジャマもパンツも、汚れたシーツも……全部まとめて、洗濯機に放り込んだ。

「これで、すっきりした……」

あとは……机に置き忘れた1冊のノート……
B5判の何の変哲も無い大学ノートの表紙には、油性マジックで大きな文字……
そして、突風の悪戯に、ノートがパラパラとめくられて……

…… ……?!

目にしたくない文字が並んでいる。
無視していたのに……忘れたかったのに……
記憶が……再生されていく……

わたしは、悲鳴をあげた。

「……?!……イッ……イヤァァァァァーッ!……」

だまされていた心が、気が付いたみたい。



「……♪……♪……」

着メロが鳴っている。

ギラギラとした日差しが大きく傾き、時刻が夕方であることを教えてくれた。

わたしは、うつ伏せのまま、枕に顔を押し付けて泣いていた。

どのくらい、この態勢でいたのかな……
圧迫された胸から肩にかけて、弱い痛みがある。

わたしは、泣き濡らした顔を上げると、袖で涙を拭った。
そして、携帯を取ろうと腕を伸ばし、その手が強張った。
携帯に浮き出た文字に、喉を焼けるようなものが込み上げて、吐きそうになる。

それでも、出ないわけにはいかない。
わたしは、文字通り必死の思いで、携帯をひらいた。
そして、必死の想いは、やはりと言うべきか、報われなかった。

「……はい」

「ごきげんいかが? ……おやぁ? 声が変ですよぉ。
ククククッ……有里様、泣いていたとかぁ……?」

「いいえッ!……泣いてなんか……いません」

「そうですかぁ……残念ですねぇ」

なにが、残念なのよッ!
言い返そうとして、声が詰まった。
涙が……鼻に入って来たじゃない。

「もしもーし……聞いていますかぁ?」

「……はい。で、何の用ですか?」

「いえねぇ。昨日の宿題は、してもらえたかなーと……思いましてぇ……」

宿題という言葉に、胸はズキズキ痛み、止まり始めていた涙が溢れ返ってきた。
でも、こんな男に泣いていたなんて、絶対に気付かれたくない。

「……うぅぅッ……はい……しました」

「えらいですねぇ。さすがは、有里様……
当然、イクまでしたんでしょ……オナニー……ククククッ……」

「……はい」

「もっと、具体的に話してくれませんかぁ。
男の人が、興奮するように……
隠語も、たーっぷり入れて、お願いしますよぉ」

手が震えて、携帯をベッドに落とした。

……そんなの……ムリだよ。
オナニーして、それをカメラで撮って……
それも、全部自分でしたんだよ!
これだけで、死ぬほど恥ずかしかったのに……それを話せって……

「…… ……」

「おや、返事がありませんねぇ。
もう一度だけ、言いますよ!
昨日したオナニーを具体的に話してくれませんかぁ?
男の人が、興奮する隠語付きで……」

脂汗が、おでこからにじみ出して、気分が悪い。
なにか、なにか言わないと……
でも、焦ってしまい、言葉が出てこない。

今回は……今回だけは、勘弁してもらおう。
……でないと、心が壊れそう。

「あの……お願いします。
許して下さい……わたしには……出来ません」

本当に許してよ。
でも……この人は、きっと……

「うーん。困りましたねぇ。
これも、行為の一貫のつもりだったのですが……
それでも、出来ないと……?」

「…… ……ッ?!」

「もう一度だけ言いますッ!
行為をするつもりは、ありませんかぁ?」

「……少しだけ、時間をください」

わたしは、携帯を耳から離した。

どうしよう……どうしたらいいのよ……
もう、選択肢なんて残っていない。
でも……でも……
自分を自分で慰めていたことを、話すんだよ。
それも、いやらしい言葉で……
それって、あそこのことも……?
いやっ!……死にそう。
ううん、死んだ方がマシかも……

「でも……お父さん……」

わたしは、自分の痴態が収められたビデオカメラを、チラッと見た。
続けて、閉まったままの部屋のドアを見つめる。

今、恥ずかしい言葉を口にしたって、ドアが閉まっているから、下にいるお母さんに聞かれることは無いと思う。
それに、わたしの恥ずかしい姿は、既にカメラに収まっている。

今さら口で説明するくらい……何ともない……?!

……わたし。今、何を考えていたの……?
それとも……これが本心……?

「まだですかぁー。飽きてきましたよぉ。
お父さん……死にますよーっ」

「……ううぅぅぅぅッ……!」

副島の心無い、恐ろしい催促に、食い縛った歯の隙間から、呻き声がもれる。
傷ついたわたしの心は、力を振り絞り、それを親子の愛が支えた。

話してあげるわよッ!
いやらしい隠語付きでね……!

きみ。廊下で見張りをしてくれる。
……できれば、耳を塞いでね。

わたしは、携帯を壊れるくらい握り締めて、声を……押し出した。

「……お待たせしました。
ゆ、有里の……お、オナニーの説明をしますね」

大丈夫だから、しっかりと思いだして……
自分を励ましながら……言葉を探した。

「あの……有里は、パジャマの下だけ脱いで、ベッドに仰向けに寝転びました。
そして、胸をはだけて……お、オッパイをもんで、乳首をいじりました。
その後、パンツ、いえ、パンティーの上から……あそこを……」

「駄目、駄目ッ! 何、格好付けているんです。具体名で……」

「は、はい。あのぉ、パンティーの上から……お……お、おま○この筋を撫でました……
…… ……
…… ……
…… ……」

「どうしましたぁ? 泣いているんですかぁ?
さっさと、続きを話してくださいよぉ」

泣くもんですかッ!
ちょっと、言葉を考えていただけ……

わたしは、天井を見上げて、瞬きを繰り返した。
声だけ……声さえしっかり出せれは……
堪えてよ。有里……

「……はい。パンティーの上から撫でていると、ものすごく、お、おま○こから、エッチな汁が溢れてきて、パンティーを脱ぎました。
それで、脚をひらいて、指でヒダの間をこすりました。
そうしたら、ものすごく気持ち良くて、甘い声を漏らしてしまいました」

「オナニーが好きな、あなたのことです。
もっと感じる処をいじったんでしょ」

「……クゥッ! はい。有里の大好きな、ク、クリトリスもいじりました」

「クリトリスは、どうなっていましたかぁ?」

「……堅く尖って、充血していました」

「感じましたかぁ?」

「……はい。ジンジンとする感じで気持良かったです。
それで、もっと刺激が欲しくなって、膣にも指を入れました」

「処女を失ってすぐだと言うのに、指を突っ込んだんですかぁ?
それは、また大胆な事で……」

「ええ。有里は、オナニーが好きですから、指も入れちゃいました。
……気持ちいいんですよ」

「それで、何本……?」

「はい、2本です。
でも、痛くなかったですよ。
だって、ビショビショで洪水みたいですから……
それで、穴の中をスリスリと、こすっていると、身体がどんどん軽くなって……」

「イク時は、どこをいじって……?」

「最後は、膣とクリトリスと乳首を、同時にエイッて感じで……
つねったり、こすったりして……
そうしたら、簡単にイッちゃいました。
…… ……
…… ……
こ、これで、どうでしょうか……?」

「うーん。表現力がイマイチですねぇ。
まあ、今回は合格としますが、もっとエッチなゲームみたいに話してくれないと、男の人は勃起しませんよぉ。
今後は、研究でもしてみたらいかがですかぁ?
……なんなら、お貸ししてもいいですよぉ」

副島が、なんかしゃべってる。
どうせ、わたしを辱めようとして、くだらないことを話してるんだろうな。
どうしようかな……?

「そうですか。すいません。
あのぉ、携帯の電池が無くなりそうなので、失礼します」

「もしもーし、まだ、話しはおわ……プチッ!」

わたしは、携帯を閉じると、ベッドの上でうつ伏せになった。
そして、頭から布団をかぶせる。
熱い蒸れた空気が一瞬で顔を覆い、不快な静けさがやってくる。

終わったの……?
気が付けば、顔を枕に押し付けていた。
これなら、声が漏れることもないよね。
良く頑張ったね。有里……
さあ、思いっきり泣こう。
泣いて、死ぬほど泣いて……全部きれいさっぱり忘れよう。
……きっと、気持ちいいよ。
そうして、明日から新しい心で生きていこう。
さあ、今から号泣だからね。

きみ。ちゃんと見張りしていてよ。
勝手に夕ご飯食べたら、承知しないよ。



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