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放課後の憂鬱   第7章 無邪気な悪魔・前編(5)


  
                                          


【第7章 (5)】



        
        「・・はい。私のわがままでした。すみません。」
        藍は泣きそうな顔で謝ると、岸田が軽く藍の頭を叩いた。

        吉田がコーヒーを持って戻ってきた。吉田は藍のしょげた様子をみる
        とすかさず言った。

        「お、どうしたの、藍ちゃん? 岸田さんに怒られたかな?」
        「・・・あ、なんでもありません。だいじょうぶです。」

        藍はムリに笑顔を作って答えた。が、藍の笑顔はすこし歪んでいた。

        「岸田さん、女の子苛めるのは良くないなぁ。まぁそんな怖い顔じゃ、
        なに言っても怒ってるように見えますけどね。」

        吉田は場を和ませようとしたのか、冗談を言うと、
        「なに言ってんだ。あんたのせいなんだぞ!」
        と岸田が吉田に言った。

        「えっ? 俺のせい? 俺、藍ちゃんになにかしたかな?」
        「まったくよぉ、この前のラフ写真、あんたどうしたよ?」

        岸田はすごんだ声で吉田に問い詰めると、
        「え、ラフ写真?・・ああ、ありゃ処分したけど、なにか?」
        「あんた、あれ息子に見せなかったか?」
        「ああ、あん時は藍ちゃんの写真撮ったって言ったら、うちのが藍ちゃ
        んのファンだっていうから少し見せたけど、まずかったかな?」

        「バカやろぉっ!! あんたのそういうところが、軽率だって言うんだ
        よ! あんたの息子、藍と同級生なんだよ。」
        「え、そうなの?」

        「まったくよぉ。あの写真、まずいの写ってなかったか? そんなの同
        級生に見られてみろ、藍、学校行けなくなんだろ!?」
        「ああ、そういやちょっとセクシーだったかな・・ぜんぜん気にしてな
        かったよ。あちゃー、まずかったな、そりゃ。」

        藍はそんなやり取りの間、ずっとうつむいていた。そんな藍に吉田が
        謝った。

        「藍ちゃん、ぜんぜん知らなかったよ、ごめんね。うちのバカにからか
        われたんだろ? まずかったなぁ。なんて謝ったらいいか・・」

        藍はまだ納得したわけではなかったが
        「・・もう、いいです。気にしてませんから。ただ・・」
        「ただ?」
        「吉田君、ちょっと恥ずかしいこと・・・言うものですから、少し落ち
        込んでしまって・・」

        藍は「恥ずかしいことをされた」とは言えず、言葉を濁してしまった。
        しかしすぐに吉田が言った。

        「そうかぁ、あのバカ、困ったやつだな・・よく言っておくからさ。機
        嫌直してくれよ。ね、藍ちゃん!」
        「・・はい。あたしの方こそ、子供でした。ごめんなさい。」
        と藍も謝った。

        吉田は藍の顔に少し笑顔が戻ったのを見て、
        「そうそう、藍ちゃんは笑った顔がいいね。かわいいぞ! こりゃこっ
        ちもいい写真、撮らないとな!」
        と藍を持ち上げた。

        岸田がそんなやり取りを終わらせるかのように、
        「よし、じゃあ早速仕事の話と行くか!」
        と言うと、吉田が答えた。

        「そうですね。さっさと片付けてしまいますか。」

        藍の新しい「写真集」の打ち合わせが始まった。





※ この作品は、ひとみの内緒話管理人、イネの十四郎様から投稿していただきました。
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