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有里はへこたれない……だから今は……
























(10)


9月 8日 月曜日 午後3時30分 早野 有里



「青い海に青い空、それに夏の強い日差し……
こんな環境で、男と女の愛の営みを堪能できるとは、感激ですねぇ。
ね、有里様もそう思うでしょ……?」

「……そうね」

わたしは素っ気ない返事をすると、乱れた水着のまま平たい岩の上に腰かけた。

結局、副島の話はデタラメだった。
行為が終わったわたしの耳に飛び込んできたのは、副島の軽蔑したような高笑いだった。

わたし……騙されたんだ。
わたしの羞恥心を、この人は利用したんだ。

それなのにわたし……
最後は自分から腰を振って、ふしだらにあそこを絞め付けて、恥ずかしい声まで……
お日様の下でセックスさせられて、絶頂しちゃうなんて。

そんな情けない思いをごまかそうと、視線をなんとなく浜辺と向けた。
さっきまで砂浜にいた数人の人影も、いつのまにかいなくなっている。
太陽の角度も、ここに来たときよりずっと西に傾いている。

あらっ、あなたは……?!
わたしが腰かけている岩の上を、カニさんが横歩きしている。
それも、2匹が手をつなぐようにして……
あなた……恋人がいたのね。

わたしは立ち上がると、もう一度カニさんのカップルに視線を落とした。

ごめんね。大切な行為のジャマをしちゃって。
今から、夫婦の営みを始めるんでしょ。
ふふっ、安心して。
わたし、覗いたりしないよ。
もちろん、悪戯もジャマもしない。

だって、副島が話してたカップルって、あなたたちみたいだからね。
……ただ、一言だけ忠告してあげる。
そのベッド、あなたたちには大き過ぎると思うよ。
そういう行為は、目立たないようにひっそりと……ね。
……お幸せに、カニのカップルさん♪♪



「なんだか、熱くなってきちゃった」

わたしは独り言のようにつぶやくと、腰にまとわりつく水着を脱ぎ捨てた。

「う~んっ、気持ちいい♪」

そして、裸のまま両手を思いっきり青空に突き上げて、背伸びをする。

目の前で、副島が目を丸くしている。
横沢さんは、黙々と後片付けをしている。
きみは……ニターッていやらしい目で、わたしを見ている。

「せっかく海へ来たんだから、泳ごうかな?」

わたしは振り返らずに、岩場から足を降ろしていった。

じゃぼんッ……!

「ひゃんっ、冷たくて……気持ちいい♪♪」

真っ赤に焼けて火照った素肌を、海水が心地よい温度で包み込んでくれる。
水に身体を慣らしたわたしは、沖に向かって泳ぎ出した。
島影も何も見えない、コバルトブルーのかなたを目指して、イルカさんにでもなったつもりで泳ぎ続けた。

波が出てきたのか、時々それを頭からかぶった。
塩水に目が沁みて、鼻の奥が痛い。

岩場の方から誰かが声を上げている。
わたしの泳ぎに声援を送っているのかな?

それじゃあ、もう少しサービスして泳ぎを見せてあげる。
一層のこと、このまま体力の限界まで泳いでみようかな?
後のことなんて、今は考えたくないしね。

さらに沖へ向かった。
目線の下半分を真っ青な海が……
上半分に、白い雲を浮かべたまだまだ夏の真っ青なお空が……

生まれたままの姿で泳ぐのって、気持ちいい。
全身を優しい海水に包まれて、これって、お母さんのお腹の中と一緒だったりして……

どこまで泳いだんだろう?
さっきまで聞こえていた、誰かの声ももう聞こえない。

さすがに疲れてきたから、泳ぎをクロールから平泳ぎに切り替えてみる。
両足を大きく開いて、推進力をつける。
ここまで来たら、もう人の目も気にならない。
……そうよね、有里?

「……人の目……ね」

有里は、まだそんなもの気にしてるの?
さあ、もっともっと泳ぎましょ。
あなたの体力なら、10キロでも20キロでも遠泳なんて簡単でしょ?
泳いで泳ぎまくって、あんな男たちからオサラバするのよ。
しがらみも何もない世界へ飛び出そうよ。

心の中の解放的なわたしが呼び掛けてくる。
もっともっと沖へと誘っている。

でも……でも……?

むき出しの下半身を拡げるたびに、胸の奥がチクリと痛んだ。
人の目のない海の真ん中なのに、どうしてかな?

それとも……?
わたしには、まだ羞恥心が残っていたのかな?
有里には、まだまだやり残した何かが残っている?

舞衣。千里お姉さん。お父さん。お母さん……そして、嫌な男たち以外のみんな……

わたしは、泳ぎを止め岸を振り返った。
岩場も、白くて大きな砂浜も、今では長く続く海岸線の一部分でしかなくなっている。

ちょっと泳ぎすぎちゃったかな。
……そうよね。
もしわたしがここで遭難でもしたら、大変なことになるかもしれない。
救助された美少女は、生まれたままの姿でしたって、報道されたりして。
そうなったら、有里の顔写真を見た人たちが一杯押し寄せて来て、この日本にこんな美少女がいたのかと全国中で話題になって、今流行の美しすぎる遭難者とか……?
……ちょっと疲れたかな。
……やっぱり、帰ろう。

わたしは、岩場に向かって泳ぎ始めた。
ちっぽけなケシ粒みたいな人が、手を振っている。
多分副島かな。

あそこに戻れば、また地獄が始まると思う。
そんなことは、百も承知。
でも、逃げてはいけなかったんだ。
だってわたしは……
どんなことにもへこたれない、早野有里だから……



……あれぇ、きみ。迎えに来てくれたの?
でも、大丈夫?
きみ、かなり疲れているよぉ。
…… ……
よかったら、わたしに掴まりなよ。
きみひとりくらいなら、なんとかなるしね。
…… ……
……ごめんね。
きみにまで、迷惑かけて……
わたし、もっともっと、強くならないといけないよね。

あっ! 横沢さんも泳いできた。
わたしのこと心配してくれたんだ。

「ごめんなさい、横沢さん」

それじゃあ、きみは横沢さんの肩に掴まって……?
……傷……?!
……あれっ、その傷跡……?

横沢さんのたくましい背中に残る大きな傷跡。
横沢さんの右肩から背中の中心にかけての傷跡を目にしたとき、心の深いところで何かが蠢いた気がした。
なんだろう?
わたし……なにか……大切なこと……忘れている……



元の岩場に帰って来た。
岩の上から、副島が面白くなさそうに、見下ろしている。

「ご迷惑をおかけして……申し訳ございません」

わたしは、海の中から小さな声で謝った。
それでも副島の表情は変化なし。

結局、この人だけ知らん顔だった。
ちょっとくらい、心配してくれても罰はあたらないと思うけどね。
だって、わたしの身体で一番愉しい思いをしたのはこの人なんだから。

「ああ、そうでした。有里様に忠告しておくことがありました。
そこから、早く上がった方がいいですよぉ」

面白くなさそうだった副島の目が、急に悪戯っ子みたいに輝いた。

「……えっ?! な、なに……?」

意味も分からず、周囲を見回してみる。
岩場に打ち寄せる波が白い泡をともなって漂っている……だけ?
そうしたら、突然下半身にピリッと痛みが……?!

「いたあぁぁぁぁぁーぃっっ……!」

お尻をくらげに刺されたぁっっ……!



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有里 ごめんね
























(11)


9月 8日 月曜日 午後1時30分 吉竹 舞衣



「……有里、ごめん」

私は帰りの電車内で、そう呟くと顔をうなだれた。
隣に座っている初老の男性が、怪訝そうな表情をしている。

当然よね。
この電車に乗ってから、この仕草を何度も繰り返しているんだから。

その後、思いもよらない形で有里と別れることになった私は、理佐に連れられるようにして駅近くのカフェへと向かった。
たぶんだけど、別れ際に有里が話した言葉を理佐は信じたんだと思う。

ほどよく空調の効いた店内で、理佐と私はドリンクと焼き立てが自慢のパンを注文して、1時間ほど他愛もない話をした。
……と言っても、会話の大部分は理佐が引き受けていて、私はそれに合わせて相槌を打つ程度だった。
さっきまでお腹のムシが鳴いていたのに、有里の姿が消えた途端、食欲さえどこかへ飛んでいっちゃった。
そして今思えば、理佐との会話の内容さえ覚えていない。
彼女には気を使わせちゃって悪いことしたな。

私は、うなだれながら溜息を吐いた。
また、隣の男性が怪訝そうな顔をしていると思う。



パタンッ……!

それは突然だった。
荒々しく車両連結部の扉が開かれ、4人の男性が肩をいからせながら、私のいる車両へ入ってきた。
私を含めて何人かの乗客が、それを不審そうに見守っている。
どう見ても、普通じゃない人たち……
茶髪、金髪、刺青、ピアス……

それが目に入ったのか、不審そうに見ていた何人かの乗客は慌てて目を逸らした。
当然、私も……

彼らは空いている座席を見付けると、両足を大きく拡げて座った。
普通に譲り合えば、8人くらい座れそうなところを4人で占有している。
その上、ここが公共の場だという自覚さえないのか、大声で話し始めた。

「昨日のあの女……俺様が……挿れてやったらよ……」

耳障りでふしだらな会話に、私は眉をひそめた。
周囲の何人かの人たちが同じ表情をしている。
……でも、私を含めて、誰も注意しようとはしない。
そんな勇気、誰も持ち合わせていないから。

もしこの場面に有里がいたとしたら、どうしているだろう?
有里の姿を思い浮かべてみる。
彼女ならきっと、たったひとりでもあの男たちに立ち向かっただろうな。
有里は舞衣と違って、ちょっと勝気だけど正義感が人一倍強い女の子だから……

男たちは引き続き、卑猥な単語を交えながら会話を続けた。
そして時々周囲に目を走らせる。

私は目立たないように顔を伏せながら、ある出来ごとを思い返していた。
そう、半月ほど前の電車内での一件。

あの時、私の乗っていた車両に、有里と千里お姉さんが飛び込むように移動してきて、その後を追いかけて来た3人の男たち……
はっきりと思い出した。
今、我が物顔で座っている4人のうちの3人が、その男たちだ!

だとしたら、あとの1人は……?

うーん……? 誰? たしか?

そうよ、有里が助けようとしたサラリーマン風の人?
あの時は黒髪で、今は茶髪で鼻にピアスを付けているけど……うん、間違いない。
でも、どうしてなの?
あの人は、最初から男たちの仲間だったの?
わからないよ。

ただひとつだけ言えることは、有里と千里さんは何かの罠に嵌められようとしていた。
それも、用意周到に……
だって、彼女たちの性格を知っていなければ、こんなこと出来ないから……
一体、どうなっているのよ。



結局、答えを見付けることが出来ないまま電車を降りていた。

舞衣は、これでいいのかな?

駅前の繁華街を過ぎても歩き続けた。
そして、自宅への近道になる公園の中ほどまで来て立ち止まった。
胸の中が重たい鉛のような物で押しつぶされそうになる。
吐き気がして、呼吸も荒くて、どうしようもない虚しい怒りが高まってきて……

私は携帯を開いていた。
電話帳画面から副島の名前を選択して、決定ボタンを押そうとした。
……でも、指が止まった。

すぐに、もう1人の自分が話しかけてくる。

ちょっと待ちなさいよ舞衣。
その電話、うまくいけば有里を助けることが出来るかもしれないけど、舞衣と副島の関係も知られてもいいの?
そんなことになったら、傷つくのは有里の方だよ。
それに、今からでは間に合わないと思うよ。

私は腕時計を覗いた。
時刻は午後3時ちょうど。

「有里……ごめんなさい……舞衣は……」

私は声を殺して泣いていた。
人目もはばからずに、涙をぽろぽろと零して。
そして、泣きながら何度も謝った。
だって今の舞衣には、これ以外なにも出来そうにないから。



9月 8日 月曜日 午後7時30分  吉竹 舞衣



その夜、私は家族3人で食事をしていた。
私と向かい合うように、お母さんとあの人が座っている。
テーブルの真ん中には、出前で頼んだのか豪華なお寿司が……
他にも、高級レストランのメニューにありそうな肉料理、果物を盛り付けたデザート……

そういえば、家族3人で食事するのって、何か月ぶりだろう?
それに、今日の豪華な料理はどうして?

私は、チラチラとふたりの顔を窺いながら食事を続けていた。
でも食欲は全然なかった。
箸も進まない。

本当は、なにも食べずに「ごちそうさま」と言って、席を立とうと思っていた。
だけど、久しぶりのお母さんの笑顔を見ると、どうしても出来なかった。

それに対して、この人は……
ひとりで黙々と料理を口に運び、ビールを飲んでいる。
その表情は醜かった。
まるで周囲の存在を無視するかのように、時々薄気味悪い笑みを浮かべては、ひたすら口を動かしている。

そして沈黙の世界が当たり前になってきた頃、お母さんが口を開いた。

「舞衣。お父さんね……社長さんになるんだって。
これはまだ正式決定ではないけど、近々開かれる取締役会議で、代表取締役に推薦されることが決まったの。
だからその……言葉は悪いかもしれないけど、今日は前祝いっていうのかな。
突然のごちそうに、舞衣も驚いたでしょう」

「……うん」

返事をしたものの、私には何がなんだか分からなくなっていた。
ううん、分からない振りをしたかった。

私は、嬉しそうに話すお母さんの顔を見つめた。
お母さんが笑顔を取り戻したのって、あの人が社長になるから?
それとも、家族揃っての久々のお食事だから?

……出来れば、後者であって欲しいな。

今度は、食事を続けるあの人の顔を見た。
あなたが社長になれるのは、有里のお父さんを踏み台にしたから。
自分の欲望のために、真面目に仕事をしている有里のお父さんを利用したから。
こんな人生を送って、あなたは恥ずかしくないの?

でも、そんな私も、この人のことを一方的に悪くは言えない。
ここで生活する限り、自分も同罪だから。
今の私の生活……大学に通えるのも、普通に何不自由なく暮らせるのも、目の前にあるごちそうだって……
全部、この人が稼いだお金で成り立っている。
そう、舞衣だってこの人と一緒。

だったら、ひとつだけいい解決方法がある。
私が大学に通っている間は、この人のお世話になりながら、有里への贖罪を続ける。
そして卒業して自立した後は、社会人として生活しながら、有里と家族の方への贖罪を続ける。
贖罪の仕方は色々あるけど、今は金銭的な贖罪は無理だよね。
出来る方法は……舞衣の……身体……

多分だけど、今の段階でこれが一番現実的だと思う。



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乳首を虐めて……気持ちいいの
























(12)


9月 8日 月曜日 午後11時 吉竹 舞衣



時計の針が午後11時を指そうとしていた。
私は、明後日提出予定のレポートを半分ほど書き終えたところで、シャープペンを放り出した。

「……バカみたい」

頭の中に浮かぶのは、家族と呼ばれる人たちの夕食シーン。
ごちそうが並んでいるのに、無味無臭な食事を続ける私。
途切れがちな会話に戸惑いながらも、ほころばせた顔を維持しようとするお母さん。
そして、人としての尊厳さえ持ち合わせていない人、亘の脂ぎった笑顔が映し出される。

私は背筋を走る悪寒に、頭を左右に振った。
振れば振るほど男の顔が醜く歪み、記憶の片隅にへと追いやっていく。

「……有里」

続けて脳裏に現れたのは、舞衣の大切な親友。有里の姿だった。
その表情は醜い男の笑顔とは違う。
とっても清らかな笑顔をしていた。
……でも、私は知っている。
その笑顔が輝いていないことに……

そう、頭の中に写し出されている有里は、駅前で別れ際に見せた笑顔だった。

「ごめん、有里……」

レポート用紙に水滴が落ちる。
ひと粒……ふた粒……文字が滲んだ。

「そうだ……オナニーしないと……」

私は、ぼそっとつぶやくと椅子から立ち上がった。
そのままベッドの脇へ移動する。

まるで寝る前の日課、歯磨きをするように。
お手洗いに行くように。

そう、身に着けているものを全て脱ぎ去っていく。
ブラもショーツも全部。
裸になって、携帯を手に取って、感覚の消えた指でボタンを操作する。
乱暴にしか見えない指使いで動画モードに設定する。

それを、ベッドの枕もとに置いてある、熊さんのぬいぐるみに立て掛けた。
裸のままベッドに這い上がり、有里の哀しい笑顔をもう一度思い浮かべた。

「はぁーぁ……」

小さく溜息を吐く。2回、3回、4回……

私は壁に寄り掛かるように腰を落とすと、両膝を折り曲げて立て膝をする。
剥き出しにされた大切な処を、熊さんのぬいぐるみが見つめた。

私の目の前で、膝頭が震えている。
意識していないと、勝手に閉じ合わせようとする。

ここまでの動作をするのに、3日前は30分。
昨日は10分くらい……でも今日は5分くらい……

どんなに辛いことでも、馴れてしまえば……心を殺すことさえ可能なら……このくらい……

私は両目を閉じた。
両方の手のひらで、両方の乳房にそっと触れた。
そして下から持ち上げるように、おっぱいのお肉を回転させるように揉み始めた。

「ふーぅん、ふーぅんん……んんっ……」

鼻息でごまかしているつもりなのに、唇からは甘い声が漏れてしまう。
手のひらが乳房の形を歪めるたびに、切ない気持ちが増していく。

もっと、オッパイを虐めよう。
心にそう言い聞かせると、指先に力を込めた。

「ふぅぅぅぅッんッ……き、キツイッ……!」

さっきまでの甘くて切ない刺激が、痛い刺激に変化する
目を閉じていたってわかっている。
舞衣の乳房。力任せに握られたテニスボールみたいに醜く歪んでいる。
でも、もっともっと虐めないと!

「ヒィィィィッ、痛ッ……んんんんぐぅッ……!」

私は、親指と人差し指で乳首をひねった。
捻じるように摘んで、先端に爪を立てた。

鋭い痛みに涙が溢れてくる。
同時に強い電気が流れたみたいに、肩をガクガクと震わせた。

あまりにもの激痛に、指が手心を加えようとしている。
私は指を叱りつけると、もっと痛みを得ようと更に力を加えた。

「んんんんグゥゥッ……ぁぁぁああああっっっ……有里……ッ!」

噛み締めた歯の隙間から呻き声が漏れ出した。
この程度で哀しい声を上げるなんて、舞衣ってだらしないな。
ねぇ、有里もそう思うでしょう?

「そろそろ、下も弄らないと……」

私は、まぶたを開くと熊さんのぬいぐるみを見つめた。
両手を下に降ろしていき、両肘を両膝の内側にあてがった。
そのまま、押し出して左右に拡げた。

「……いやらしい」

まだ何もしていないのに、物欲しそうに割れ目が開いている。
中から、赤くて恥ずかしいヒダが顔を覗かせている。

そのまま、両手の指で大陰唇を左右に拡げた。
出来る限り力を込めて、限界まで開くつもりで……

それを熊さんがじっと見ている。
舞衣の中まで拡げられた、いやらしい性器をじっと見ている。

「ああぁッ、んんんッ……おねがい……みないで……」

指が震えている。
その振動を、デリケートで敏感な肉が受け止めている。

「早く……いじめて……気持ちよく……しないと……」

私は、自分でも理解できない言葉をつぶやくと、左手の指に割れ目を開かせたまま、右手の指で恥ずかしいヒダの間を擦った。
薄い粘膜を剥ぎ取るように、ゴシゴシと指を走らせた。

「んんんぅぅぅッ、刺激が……ああっ、つよい……」

アソコがゾクゾクして、腰が勝手に震える。
でも、もっともっと刺激を与えて、濡れさせて準備しないと……

指を揃えて小陰唇の扉を強引に開いた。
中の感じる壁を縦方向に何度もひっかくように擦り上げた。

「はあぁぁッ……痛くてッ、ムズ痒くってッ……んくぅっ、耐えられないっ……」

アソコの中で、気持ちいい電気が渦を巻いた。
開かれた太ももがガクガク震えて、ベッドの上でお尻も揺れた。

身体の芯がどんどん熱くなってくる。
グチュグチュとエッチな水音が聞こえる。
溢れだすエッチな液体が、割れ目と指をしっとりと濡らしている。

「……準備……出来たかな……?」

私は気持ちいい行為を中断すると、ベッドに設置してある小さな引き出しを開けた。
中に右手だけを突っ込んでゴソゴソかき回す。
そして円柱の物体を手に取ると、右手を急かせるようにしてアソコにあてがわせた。

「バイブを使わないと……だめ……だから……」

囁くように自分に言い聞かせる。
目を逸らしたいのに、それを見てしまう。
副島から強引に手渡された、おぞましい淫具……
舞衣の処女は、この道具に奪われたんだ。

その上、副島から毎晩自分を慰めることを強要され、そのお伴としてこのバイブの使用を義務づけられた。

「さぁ、早く挿れよう……」

私は左手に命じて、割れ目を中までしっかりと開かせた。
バイブを持つ右手に力を込める。

にゅぷって音が心の中に響いて、バイブの胴体がどんどん飲み込まれていく。

「んんんっ、ぅぅぅうううッ……はいってぇッ……舞衣の中に……はいってぇ……くるぅっ……んんぐぅぅッ……!」

初めてのときみたいに、痛くなんてない。
初めてのときほど心に亀裂も入らない。
それどころか膣の壁をバイブが擦って、痒い処を優しくひっかいているみたいで、ものすごく気持ちいい。
足の指先までジーンとしちゃう。

……それなのに、なんだろう?
相変わらず舞衣の心は拒絶したまま、おぞましさと恐怖に震えている。
そして訴えている。
こんなこと……女の子がするものではないって。
もう少し、自分を大事にしろって。

でもね……舞衣は知っているの。
毎晩、わたしの心は最後に屈辱を噛み締めながら、快楽の道を選ぶということを……



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アソコを虐めて……もっと気持ちいいの
























(13)


9月 8日 月曜日 午後11時20分 吉竹 舞衣



「はぁっ、はぁっ、全部……はいっちゃった……」

舞衣のアソコが、バイブを完全に飲み込んでいる。
すごいよね。
こんな大きくて卑猥なものを挿れちゃうんだから。

でもね……これだけではオナニーって呼べないよね。
ちゃんと、感じて絶頂しないと……

私は、熊さんに向かってにっこり微笑んで、右手でバイブの柄をしっかりと掴んだ。
膣の壁に擦りつけるようにしながら出し入れする。

ぐちゅ、じゅちゅ、ぐちゅ、じゅちゅ、ぐちゅ、じゅちゅ……

「……あぁっ、あぁぁぁっ、な、中が……こすられてぇっ……バイブぅっ……きもちいいぃぃっっ!」

エッチな水の音がして、恥ずかしい。
両足を拡げてあんな卑猥な道具で自分を慰めるなんて、もっと恥ずかしい。

でも、淫らにオナニーしないと……
今日だけは、自分を軽蔑するくらいにエッチなオナニーをしないと……

私は、身震いするような刺激に、大げさにアゴを仰け反らせた。
空いている左手で荒々しく乳房を揉んだ。
バイブの根元から枝分かれしている小さな突起を、クリトリスに押し付けた。

「ひぃぃぃっっ! はあぁぁぁっんっ……クリトリス……感じちゃうぅぅっっ……!」

ビリビリとした痛いくらいの刺激。
膝の力が一気に抜けて、両足が前に投げ出された。
背骨をしならせて、また大げさにアゴを仰け反らせる。

瞬間、更に決心を促そうとする自分がいた。
右手の指が、バイブのスイッチに触れては離しを繰り返している。

副島にオナニーを命じられてから、一度もスイッチを入れたことがない。
それだけは死ぬほど怖かった。
今ならと思ったけど、やっぱり指が言うことを聞いてくれないみたい。

今日もだめかな。
……ごめんなさい。

私は、脳裏に浮かんだ大切な人に謝罪した。
それにもまして、自分の不甲斐無さに落胆した。

でも、このままでは終われない。
今夜は、自分を軽蔑するくらいにエッチなオナニーをすると、心の中で決めていたから。

そのためには、とっておきの単語がある。
あの言葉を発すれば、嫌悪するくらい自分を軽蔑できる。

私はちょっとした覚悟を決めると、右手の動きに合わせてバイブの突起をクリトリスにぶつけた。

ズキンッズキンッて強い電気が走って、短い悲鳴で何度も応えた。
それを追い掛けるように、エッチな液体もどんどん溢れてくる。

これなら大丈夫。
舞衣の心も折れたりしない……たぶん……

さあ、勇気を出して……舞衣……
熊さんのぬいぐるみも期待しているよ。

「……お……ま……○……こ……はぁっんっ……いやぁぁぁぁッ」

聞き取れないくらい小さな声だったのに、アソコがキュッとなる。
でも、こんなの大人しすぎるよ。
ぜんぜん、エッチじゃない。

今度は大きな声で、熊さんにも聞こえるように……

「……ぉ、お、おま○こぉっ!……きもちいいぃぃぃッ……はぁぁぁぁっん……ッ!」

膣がバイブを締め付ける。
思わず右手の動きが止まる。

言葉だけで気持ちよくて、これだけでイキそうになる。

……それなのに涙がこぼれた。
……どうして?

私は、ラストスパートに向けて右手の動きを早めた。
バイブを激しく出し入れさせる。

「はぁぁぁっっ、はぁぁっっ、バイブぅぅっ……が……あそこを……膣を……こすってるぅぅっっ……」

もう何回出し入れしたかなんて、そんなの知らない。
100回……? 200回……? 300回……?
ううん、それ以上……!

だって、気持ちいいから。
もっとエッチに乱れないといけないから。

有里、見ていてね。
エッチ大好きな舞衣がイッちゃうところを、ちゃんと見ていてね。

心の中でつぶやくと、ベッドに左手を突いてお尻を浮かせた。
その姿勢のまま、右手を動かした。
バイブを抜き差しする。
クリトリスを刺激する。

ぐちゅ、ぐちゃ、ぐちゅ、ぐちゃ、ぐちゅ、ぐちゃ……

「あふうぅぅっっ! ひぐうぅっっ! なかでぇっ、中の壁でぇっバイブがぁっっ……おま○こぉっ……いいっ!」

身体がぐらぐら揺れた。
はしたない姿に心まで揺らされた。

膣の中がドロドロに溶けそうなくらい熱くなってる。
敏感すぎる肉の突起が気持ちいいって鳴いて、体中の力を奪っていく。
不安定な身体を支える両足が、限界みたいに痙攣した。
両ヒザが震えた。

左手の肘が力を失って、お尻がベッドにつきそう。
だけどもう少し。もう少しだけ待って、舞衣の身体……

私は自分の身体にお願いすると、バイブでアソコを乱暴に突いた。
膣の奥の扉をこじ開けるように激しく突いた。
そして、バイブの突起をグリグリと痛いくらいにクリトリスに押し付けた。

「ああぁぁっっ、はああぁぁっっ、もう……だめぇぇっっ、イクぅぅぅっっ、イクッぅぅぅぅぅッッッ……ッ!」

アソコがキューッて締まって、毛穴中から汗が噴き出して、やっぱり気持ちいい。
肉の突起が痛すぎる快感を、身体中の神経を通して運んでいく。

さっきまで限界って感じの両足が、瞬間にピンって突っ張った。
足の腱を引き伸ばして、バイブを飲み込んだままのアソコを突き出させた。

身体中で感じている。
……自分で慰めるのって、気持ち良すぎるよね。

「はあ、はぁ、はあ、はぁ、はあ、はぁ……」

裸のまま、ベッドの上で仰向けになっていた。
オナニーでこんなに激しく絶頂したのは、初めての経験かも。
まだ肌は火照ったままなのに、身体は気だるくて重いな。

私は、机の上に飾ってある写真立てに語りかけた。

ねぇ有里。舞衣はオナニーでイッちゃった。
ちゃんと見てくれた……?
はしたなくて淫乱で、軽蔑したくなったでしょ。
……うん、それでいいんだよ。
舞衣は、オナニーが大好きだから。
……それでね、もっとエッチを上手になりたいんだ。
なぜって……?
それは……秘密……
またいつか、話さないといけない時が来れば、その時にでも……ね。

私は、写真立てから目を逸らすと、股間に突き刺さったままのバイブを引き抜いた。
ぐちゅぐちゅってエッチな音がして、情けないけどまたエッチに鳴いた。
そして、熊さんのぬいぐるみに立て掛けた携帯を閉じた。

シーツがベットリと濡れていた。
アソコから流れ出したエッチな液体。

「あーぁ、汚れちゃった……」

私は、床に落ちていたショーツを拾おうとして、手を伸ばしてやめた。

「やっぱり、シャワー浴びようかな?
ついでに、シーツも洗った方がいいかも……」

独り言をつぶやいて、素肌の上からワンピースを身に着けた。
もちろん下着は着けない。
どうせまた裸になるんだから……

そして、部屋を出る前に姿見を覗いみる。
鏡の中に、花柄のワンピースをまとった少女がいた。

それを見ていたら、無性に哀しくなって思いっきり泣きたくなってくる。

「私も、寝る前に思いっきり泣こうかな? ううん、シャワーを浴びながらの方がいいかも……
そうすれば、これ以上顔も汚れないしね……」



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千里はエロ映画に出演します
























(14)


9月 9日 火曜日 午後9時  水上 千里



「失礼します。松山先生、いますかぁ……?」

私は、控えめな声で診察室の扉を開けた。
同時に研ぎ澄まされた五感が、全然愉快じゃない不協和音を運ぶ。
そう、あの男の卑劣な罠にかかった2週間前と同じ空気。同じ空間……

そして、肝心の先生は留守だった……て、ことはなさそう。
部屋の奥から漏れだすデスクライトの明かりが、それを証明している。

私は怖気ずく両足を、その明りの源へと向かわせた。

「やあ、待っていましたよ。千里さん」

どうやら、千里のエロ映画デビューは決定的みたい。
不敵な笑みを浮かべて椅子に座る松山。
その隣には、大柄な男の人がビデオカメラを携えて待機しているから。

私は松山の前に進み出て、自分の方から声を掛けた。

「こんばんわ、松山先生。本日はよろしくお願いします」って、謙虚に挨拶してその後に言ってあげた。
「でも、最初からSMは勘弁してよね」って。

ちょっとしたジョークのつもりだったのに、松山の表情は変わらない。
本人は格好をつけているだけかもしれないけど、はっきり言って薄気味悪いな、その顔。
そして松山は、その表情のまま、折りたたんだレポート用紙を私に手渡した。

それを合図に、隣に控える男の人がカメラの操作を開始した。
どうやら、エロ映画の撮影が始まったみたい。

とりあえず、レポート用紙の文章を流し読みしてみる。

「……くぅっ!」

これを宣言書のように読み上げろっていうの?! 声にして……?

そのレポート用紙には、エロエロ主演女優に相応しい名文が並んでいた。
それなのに、おかしいな? 
おでこに脂汗が滲んで、呼吸まで荒くなっている。

「この前は頷いてばかりで、余興としてはもうひとつでしたからね。今夜は声に出して宣言してもらいましょうか?」

そう言うと松山は、背もたれ付きの椅子に逆さまに腰かけて身を乗り出した。
本人はわかっていないだろうけど、知性も品性もない表情で。

本当にこの人って、内科部長なの?
私はこんな男の前で、取り返しの付かない言葉を口にしようとしている。
読みやすいようにレポート用紙を胸の前で拡げたまま、後は読むだけ……でも、カメラが……
カメラマンさんの感情のない目線が……

「どうしました? さっさとその文章を読んでくれませんか?
エッチ大好きなナース。変態千里さんのために、わざわざ書きあげたものですからね」

松山は黒目だけを横にスライドさせて、カメラ係の男に目をやった。
私も哀しい顔で、カメラの人を見つめた。

お兄ちゃん……千里は……

そして、心臓の鼓動が耳元で鳴るなか、私は女のプライドを封印した。
強張った唇をほぐすように、声を絞り出していった。

「わ、私は、水上千里は、エッチなことが大好きな女の子です。
ここの病院に来てからも、松山先生のお顔を見るたびに、下半身が疼いて仕方がありませんでした。
我慢出来ずに、トイレで……オ、オナニーもしました。
今も……その……お、おま……オマ○コがウズウズして、困っているんです。
出来ることなら、先生の……お、お、オチ○チンの注射で、千里のお、オマ○コを治療してくださいませ。
お願いします……」

やっぱり、取り返しが付かない言葉だったと思う。
普通の女性なら、絶対に口に出すべきではない、はしたない言葉。
でも、決めたんだ。
後悔なんてしていない。
だって今夜から千里は、この言葉通りのことをさせられると思うから。

パチッ、パチッ、パチッ、パチッ……

「はははっ。上出来です、千里さん。いや、これからは、千里と呼び捨てで構わないでしょう。
神聖な職場でオナニーにふけるような、不謹慎なナースに敬称なんて必要ありませんからね。
そうでしょう? 淫乱ナースなち・さ・と……」

緩慢な拍手と共に、松山の言葉遣いが変わった。表情まで変化した。

それにしても、ひどい言われ様。
卑猥な文章を作ったのは、松山、アナタなのに……
断っておくけど、私は職場でおな……ううん、そんなこと、しないから……

「アナタって、卑怯な人……」

だから、独り言なのにわざと聞こえるように呟いた。
呟いて睨みつけて、それなのに松山の次の言葉に怯えた。
今から始まる恥辱のプレイにエロ女優千里の心が萎えかけている。

「ふふっ、それではさっそく始めるとしましょうか? 
……そうですね。まずは、オマ○コでも見せてくれませんか?
千里は私の顔を見るたびに疼くんでしょ?
さあパンティーを脱いで、裾を捲り上げて、千里のオマ○コをよぉーく見せてください」

そんな私の心を見透かしたように、松山が命じた。
ほとんど場末の品の悪い酒場のような雰囲気。
大切な患者さんの命を預かる場所が、こんなことになるなんて……

私は、ナース服の裾を握り締めたまま躊躇した。
この病院の制服は、ちょうどヒザが隠れるくらいの薄いピンクのワンピースタイプ。
初めてこの制服に袖を通したときは、自分でも結構可愛いなって思ってた。

でも、この男には別の意味でそう思っているみたい。

「さあ、早くぅ……千里ぉ」

背筋に悪寒が走るような声を出して、松山が急かせてくる。

私はカメラマンの視線を遮るようにギュッと目を閉じると、両手を裾の中に差し入れた。
そして、ウエストに貼り付くストッキングのゴムを探り当てると、指を引っかけショーツごと一気に引き下ろす。

早く足首から抜き取らないと……!
そうよ、逆らえない。今はなにも考えてはいけないのよ、千里。

焦りながらナースシューズを脱いだ。
足首まで降りてきたストッキングしショーツを左、右の順で小さく持ち上げて素早く抜き去り、それを制服のポケットに突っ込んだ。

「さあ、先生に見せてみなさい。疼いて仕方ないんでしょう。千里のオマ○コ」

「くっ……!」

太ももに直接触れる制服の感覚が、生々しい事実を教えてくれる。
これで、裾をまくれば……?
千里の大切な処が……?

「なにをしているんですっ! 千里!」

「あぁぁぁっ……」

私は低い呻き声を上げると、制服の裾をゆっくりと持ち上げた。
指の背中が肌をこすりながら上へ上へと這いずり登り、ウエストのくびれでピタリと止まった。



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