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放課後の憂鬱   第7章 無邪気な悪魔・前編(3)


  
                                          


【第7章 (3)】



        
        「・・・・・」

        まだ黙ったままの藍に、
        「・・まぁ、気をつけろってことだ。さぁ、そろそろ着くぞ。」
        と岸田はこの話題を打ち切るように言った。

        「ああ、ここでいい。その辺で止めてくれ。」

        岸田が運転手にそう言うと、タクシーは細い路地を入ったところで止ま
        った。
        二人はタクシーを降り、少し歩いてある灰色の小さなビルに入っていっ
        た。

        狭く薄暗い階段を上ってゆくと、「Y・PhotoSpace」と薄汚れ
        た看板の掛かっている部屋があった。
        岸田はノックもせずに無造作にドアを開け、中に入った。

        藍もその後ろについて中に入った。が、その直後、背筋を冷たいものが
        走った。
        狭い事務所に机があり、そこにはカメラマンの吉田が座っていた。

        「おう! まだ生きてるようだな?」

        岸田が無作法な挨拶を吉田にすると、「おかげさまでね。」と吉田が答え
        た。
        そしてすぐに吉田は藍に話しかけてきた。

        「藍ちゃん、この前はどうも。いや~こないだの写真、先方には結構評
        判良くってね。」
        「・・・そうですか。」

        藍は少し不機嫌な様子で返事をした。

        この前の写真・・同級生の吉田が持っていたあの写真・・
        ちゃんと処分してくれるはずだったのに・・
        あの写真のせいで、酷い目に・・・

        藍の脳裏に、吉田たちから受けたあの辱めの記憶が浮かび上がった。身
        体が震えていた。

        「さて、早速だが、今度の写真集のカメラマン、あんたに頼もうと思っ
        てね。」

        岸田は吉田にそう言うと、吉田がすぐにへつらうような感じで答えた。

        「そうこなくっちゃ! お願いしますよぉ~」

        藍はそのやり取りを聞き、ぞっとした。また吉田に写真を撮られる・・
        それが水着姿なんて・・

        「おっと、これは気がつきませんで。お茶でも入れますよ。へへへ」

        そう言うと吉田はにやにやしながら奥へ消えていった。

        「・・・岸田さん。」

        藍は吉田が部屋からいなくなったのを見計らって、岸田にこの前の写真
        の件を伝えようと思った。
        吉田ではない、別のカメラマンを頼みたかった。

        「ん? どうした?」

        岸田は藍のほうを向き、答えた。

        「・・カメラマン、吉田さんなんですか?」
        「ああ、そうだ。」
        「別の人に・・なりませんか?」
        「ん、どうして? 吉田はなかなかセンスがいい。少なくとも腕は有名
        な狩野なんかより上だぞ。なにか不満か?」

        藍は少しためらっていたが、思い切ったように話し始めた。

        「・・この前のCMの写真・・吉田さんだったじゃないですか。」
        「ああ。そうだったな。」
        「あの時の写真、誰にも見せないで処分するって言ってたのに・・」

        そこで恥ずかしさがこみ上げてきて、口篭もってしまった。岸田がきょ
        とんとして藍に聞いた。

        「言ってたのに、どうした?」

        藍はうつむきながら小声で、
        「・・同級生が・・持ってたんです。あの写真。」




※ この作品は、ひとみの内緒話管理人、イネの十四郎様から投稿していただきました。
  尚、著作権は、「ひとみの内緒話」及び著者である「ジャック様」に属しております。
  無断で、この作品の転載・引用は一切お断りいたします。


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アブナイ体験とSMチックな官能小説




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放課後の憂鬱   第7章 無邪気な悪魔・前編(4)


  
                                          


【第7章 (4)】



        
        岸田はますますわからなそうに、
        「ん、よくわからんぞ。どういうことだ?」と藍に問い詰めた。

        「・・吉田さんの息子さんとわたし、同級生なんです。で、吉田さん、
        あの写真を捨てるって言ってたのに、吉田君に渡したみたいで、それで・・」

        藍は「辱しい目にあった」ことまで話しそうになったが、ハッと気付い
        て黙ってしまった。
        岸田は怪訝そうな顔で、藍に聞いた。

        「おまえの言ってることは良くわからんぞ。第一なんでそんなCMの試
        し撮りの写真を息子に渡したぐらいで、カメラマン変えにゃならんの
        だ? なんかまずい写真だったのか?」

        藍はしかたなく話した。

        「・・水着の・・写真だったんです。」

        岸田は呆れ顔で言った。

        「おまえなぁ、そりゃ友達に自分の水着姿の写真見られて、恥ずかしい
        のはわかるけどなぁ、おまえ「芸能人」なんだぞ! その辺の女子高生
        みたいに恥ずかしがってちゃ、これから仕事来ないぞ! も少し大人に
        なれよ。・・別に裸見られたわけじゃあるまいし・・」

        「でも、す・・・透けてたんです。」
        「ん、透けてた? なにが?」
        「む・・・・胸が、です!」

        藍は少し大きな声を出してしまったことが恥ずかしかった。が、そんな
        藍を見て岸田は他愛もないことのように続けた。

        「おまえなぁ、そんなこと言ってるようじゃ、まだプロじゃないぞ。そ
        んなことはこの世界じゃあたりまえなんだよ。あの篠原奇人も狩野典正
        も、そんな写真腐るほど撮ってるんだ。それが出版されないだけでな。」

        「・・・・・」

        「息子がそれを偶然見ちまっただけだろ? 親子じゃそんなこと別に不
        思議じゃないぞ! カメラマン変えりゃいいってもんでもないだろ? 
        それにな、自分の息子がおまえのファンだったりしてみろ! オヤジと
        したら自慢したいだろ? そんなもんだぞ!」

        「・・・・・」

        「こっちだって根回しとかいろいろ大変なんだから、その辺わかってく
        れよな!?」

        岸田が一気にまくしたてた。そう言われると、藍は黙ってしまった。岸
        田の言うことももっともだった。

        それに「プロじゃない」と言われたのには堪えた。確かに自分のわがま
        まと言えばそうなのかもしれない。

        「・・・・・」

        藍はしゅんとなってしまった。
        岸田もおとなしくなってしまった藍を見て、困った様子で言った。

        「・・・まぁ、おまえもこれからなんだからな。第一、だ。そんな写真、
        誰にも見てもらえなかったら逆に淋しいもんだぞ。人気があるってこと
        だ。このまま人気を維持できなきゃ、おしまいなんだから、がんばろう
        な。・・まぁ吉田には気をつけるように言っとくよ。心配すんな!」

        藍は岸田の言葉を聞き、少し微笑み、こくっと小さくうなずいた。
        自分のことを考えてくれてるんだ、そう考えたら涙が出そうになった。





※ この作品は、ひとみの内緒話管理人、イネの十四郎様から投稿していただきました。
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放課後の憂鬱   第7章 無邪気な悪魔・前編(5)


  
                                          


【第7章 (5)】



        
        「・・はい。私のわがままでした。すみません。」
        藍は泣きそうな顔で謝ると、岸田が軽く藍の頭を叩いた。

        吉田がコーヒーを持って戻ってきた。吉田は藍のしょげた様子をみる
        とすかさず言った。

        「お、どうしたの、藍ちゃん? 岸田さんに怒られたかな?」
        「・・・あ、なんでもありません。だいじょうぶです。」

        藍はムリに笑顔を作って答えた。が、藍の笑顔はすこし歪んでいた。

        「岸田さん、女の子苛めるのは良くないなぁ。まぁそんな怖い顔じゃ、
        なに言っても怒ってるように見えますけどね。」

        吉田は場を和ませようとしたのか、冗談を言うと、
        「なに言ってんだ。あんたのせいなんだぞ!」
        と岸田が吉田に言った。

        「えっ? 俺のせい? 俺、藍ちゃんになにかしたかな?」
        「まったくよぉ、この前のラフ写真、あんたどうしたよ?」

        岸田はすごんだ声で吉田に問い詰めると、
        「え、ラフ写真?・・ああ、ありゃ処分したけど、なにか?」
        「あんた、あれ息子に見せなかったか?」
        「ああ、あん時は藍ちゃんの写真撮ったって言ったら、うちのが藍ちゃ
        んのファンだっていうから少し見せたけど、まずかったかな?」

        「バカやろぉっ!! あんたのそういうところが、軽率だって言うんだ
        よ! あんたの息子、藍と同級生なんだよ。」
        「え、そうなの?」

        「まったくよぉ。あの写真、まずいの写ってなかったか? そんなの同
        級生に見られてみろ、藍、学校行けなくなんだろ!?」
        「ああ、そういやちょっとセクシーだったかな・・ぜんぜん気にしてな
        かったよ。あちゃー、まずかったな、そりゃ。」

        藍はそんなやり取りの間、ずっとうつむいていた。そんな藍に吉田が
        謝った。

        「藍ちゃん、ぜんぜん知らなかったよ、ごめんね。うちのバカにからか
        われたんだろ? まずかったなぁ。なんて謝ったらいいか・・」

        藍はまだ納得したわけではなかったが
        「・・もう、いいです。気にしてませんから。ただ・・」
        「ただ?」
        「吉田君、ちょっと恥ずかしいこと・・・言うものですから、少し落ち
        込んでしまって・・」

        藍は「恥ずかしいことをされた」とは言えず、言葉を濁してしまった。
        しかしすぐに吉田が言った。

        「そうかぁ、あのバカ、困ったやつだな・・よく言っておくからさ。機
        嫌直してくれよ。ね、藍ちゃん!」
        「・・はい。あたしの方こそ、子供でした。ごめんなさい。」
        と藍も謝った。

        吉田は藍の顔に少し笑顔が戻ったのを見て、
        「そうそう、藍ちゃんは笑った顔がいいね。かわいいぞ! こりゃこっ
        ちもいい写真、撮らないとな!」
        と藍を持ち上げた。

        岸田がそんなやり取りを終わらせるかのように、
        「よし、じゃあ早速仕事の話と行くか!」
        と言うと、吉田が答えた。

        「そうですね。さっさと片付けてしまいますか。」

        藍の新しい「写真集」の打ち合わせが始まった。





※ この作品は、ひとみの内緒話管理人、イネの十四郎様から投稿していただきました。
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放課後の憂鬱   第8章 無邪気な悪魔・後篇(1)


  
                                          


【第8章 (1)】



        
        岸田と吉田は途端に真剣な表情に変わった。

        藍はそれを見て、
        (あ、これが「プロ」なのかな? あたしも・・がんばらなくちゃ!)
        と思い、少し身を乗り出した。

        岸田が藍に質問した。

        「藍、藍は今まで清純路線で来たよな。それについてはどう思う?」
        藍は突然の質問に、戸惑って曖昧な返事をした。

        「えっ? あ、あの・・どう思うって・・」
        岸田はそんな態度に、すぐに返した。

        「このままで、この世界で生きていけると思うか? それを聞いてるん
        だ。」

        藍は岸田のストレートな質問に、返事に困ってしまった。

        「・・・・・・」

        藍が黙っていると岸田が追い討ちをかけた。

        「さっき由香の話、したよな? あっちは真剣だぞ! ここで生き残る
        ために賭けに出るつもりだ。おまえにもそのくらいの覚悟はあるのかど
        うか、だ。」

        藍はさっき岸田に「プロじゃない」と言われたことがとても悔しかった。
        その悔しさが手伝ってか、藍はきっぱりと返事をしていた。

        「覚悟なら、あります! 私・・・負けないように頑張ってみます」

        岸田はそんな藍の言葉を聞いて、一際大きな声で言った。

        「おお! 藍、その言葉を待ってたんだ! よしっ、やっぱり俺が見込
        んだだけのことはある。それだけの覚悟があるのなら、俺もやりがいが
        ある。日本一の女優、いや、世界の藍にしてやるからな!」
        「そうだね。藍ちゃんならやれるよ!」

        藍は二人の盛り上がりに巻き込まれたように、気分が高揚していった。
        そして思わず
        「私、今までと違う自分を見つけてみます!」
        と言ってしまった。

        岸田が続けた。
        「よぉし、それなら今度の写真集は新しい藍の第一歩にしたい。いまま
        でにない藍を見せるんだ。そこで・・」

        藍は岸田の言葉を割って入った。
        「水着・・ですか。」

        岸田は呆れ顔で答えた。その声に、はっきりと失望の色が滲んでいた。

        「おいおい、藍の覚悟はそんなものか?」
        「ち、違うんですか?」

        藍は困惑した顔で答えた。すぐに岸田が言った。

        「まだわかってないようだな。藍の、大人の女の部分を、だな・・・」

        すると吉田が岸田に言った。

        「岸田さん、そりゃまだムリじゃないんですか? 藍ちゃんの・・何と
        いうか、今の愛らしさも捨てがたいですよ。」
        「でもなぁ、話題性や今までのイメージ考えたら、今が一番・・」

        「岸田さん、藍ちゃんの気持ちも、少しは聞かなきゃ。我々が脱ぐんじ
        ゃないんだし。ねぇ、藍ちゃん。」
        吉田が藍の方を向くとそう尋ねた。

        藍は驚いて、
        「ぬ、脱ぐ? 脱ぐんですか? もしかして・・・ヌード・・」
        「そう。岸田さんはそう言ってるんだよ。それはムリだよなぁ?」
        藍は言葉を詰まらせ、言った。

        「そんな、それは・・ダ、ダメ・・です。脱ぐなんて・・・」




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放課後の憂鬱   第8章 無邪気な悪魔・後篇(2)


  
                                          


【第8章 (2)】



        
        三人は黙ってしまった。しばらくして、その重苦しい沈黙を破るように
        岸田が話し始めた。

        「そう・・だな。まぁ、そうだ。しょうがないな。今回は水着で行くか・・」

        藍はそれを聞き、少し安心した。そして吉田の顔を見た。
        吉田はまるでうまく行ったね、と言うかのようにいたずらっぽく藍にウ
        インクして見せた。
        藍も同じようにウインクを返した。それまでの吉田への蟠りが消えて、
        親しみすら感じ始めていた。

        吉田がその場を取りまとめるかのように言った。

        「よし、それじゃ決まりですね。では藍ちゃんの水着姿をメインにした
        コンセプトで・・」

        岸田はまだ納得していないようだったが、二人の表情にあきらめた様子
        で、
        「じゃ、そうしよう。どんな構成にするか・・」
        と話を続けた。

        「藍ちゃんの今までの写真集、見せてもらったけど、おとなしすぎるね、
        あれじゃ。まぁ、水着姿とはいってもこの路線を続けてたんじゃあ、ち
        ょっと・・」

        吉田がそう言うと、岸田が急に勢いづいて声を大きくした。

        「なっ? そう思うだろ? やはり少しは成長した藍を出していかない
        とな。いつまでも子供じゃないんだ。」

        藍は「子供」という言葉に反応していた。負けず嫌いの藍はいつまでも
        「子供」扱いされるのは我慢できなかった。

        そんな藍の感情を見透かすように、岸田が言った。

        「藍はどう思う?」

        藍はきっぱりと言った。
        「はい。少し大人っぽさを出してみたいと思います。わたし、もう子供
        じゃありませんから。」

        岸田は目を輝かせ、
        「よし! じゃあ少しセクシーな路線で行こう。吉田、絵を考えといて
        くれ。」
        「まかせてください。すぐにかかりますよ。」
        と吉田も大乗り気だった。

        藍の心は揺れ動いていた。ムキになった反動がきていた。
        やっぱり恥ずかしかった、水着になどなりたくなかった・・でも、いつ
        までも子供じゃない、子供じゃいられないんだ。
        自分を納得させようと必死だった。

        (・・・そう、エッチなことだって・・・少しは知ってるんだから。)

        藍の頭をそんな考えがよぎった。そして、少しぼーっとしてきた。

        「・・・ちゃん! 藍ちゃん!」

        遠くから吉田の声が聞こえていた。
        藍は変な気分になり、呼びかけられていることにすぐに気付かなかった。
        はっとして吉田の方を振り向いた。

        「えっ? あっ! ご、ごめんなさい。」
        「どうかしたのかな? 気分でも悪いの?」

        吉田が藍を気遣い、聞いた。

        「あ、だいじょぶです。なんでもありません。ちょっと考え事を・・」

        藍は慌てて答えると、吉田が返した。

        「あ、こんな話してるから、エッチなことでも考えてたのかなぁ?」

        吉田の言うことが図星だっただけに、藍は顔を真っ赤にして、大声で否
        定した。

        「そっ、そんなこと考えてませんっ!」




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